ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

空港問題も最高裁へ: 司法積極主義への甘え

トリブバン国際空港(TIA)の管理運営をインドの開発投資会社IL&FSに委託する件に関し,3人の弁護士が最高裁に差し止め請求を提出した。競争入札がなく,また長期的には国益に反するという理由。

このところ,ネパールでは,何でも最高裁だ。正統な権力は最高裁だけだから仕方ないとはいえ,先の制憲議会任期延長禁止命令など,本来なら議会が決定すべき政治的な事柄ですら,なんでもかんでも最高裁に持ち込まれる。

もともとネパールは司法積極主義(judicial activism)であり,国民は,たとえ具体的な事件がなくても,気にくわない法律や命令・決定の違憲性を最高裁に訴えることができる。

いわゆる「公益訴訟(public interest litigation)も広く認められている。作為,不作為による権利侵害で訴えることができるのだから,その気になれば,何でも,いつでも最高裁に提訴できる。訴訟天国。弁護士も儲かる。

日本のように司法消極主義(judicial passivism)をとり,訴えの利益がないといって門前払いしたり,高度な政治行為だといって議会・政府に丸投げする(統治行為論)のはもってのほかだが,ネパールのように何でもかんでも最高裁というのも,いかがなものか。

最高裁は,非民主的・保守的な機関であり,既存の正統な法体系の保守が本来の任務だ。その最高裁が,立法・行政の行うべき統治行為を一人あるいは数人の判事で判断する。うまくいくはずがない。議会消滅の異常事態とはいえ,困ったことだ。

1995年,私は最高裁に出かけ,アディカリ首相(共産党)の議会解散の違憲訴訟判決を見学した。首相は定められた手続きに従い議会解散を宣言したのであり,私は当然,合憲と思い,周囲の友人たちにもそう述べた。ところが,判決は違憲。最も政治的な首相の議会解散を,最高裁が違憲と裁決し,すでに解散していた議会を再開させたのだ。びっくり仰天。

いまの最高裁は,制憲議会延長を違憲と裁決したが,巷では,無議会政治から脱却するための議会復活論が急浮上している。で,もし議会復活となったら,最高裁はどうするのだろうか? 認めるにせよ認めないにせよ,ご都合主義の感は否めない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/07/06 @ 19:05