ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

風力発電も原発もイヤだな

原子力発電の代わりに風力発電を,という声が日増しに大きくなっているが,風力もイヤだな。私個人にとっては,原発以上に,風力は現実的な脅威だ。

長崎にいた頃,村や島に行くと,巨大風車が設置され,風を受け,大空を切り裂き,回転していた。絵のように美しい風景を無機質な巨大機械が破壊し,野鳥を殺し,そして,おそらく村人の生活を圧迫し精神的・肉体的に苦しめているにちがいない。

秀吉朝鮮出兵陣地,名護屋城の近くには,九電の玄海原発がある。対岸からの遠望でも威圧され,近くに住む村人たちの苦痛は想像にあまりある。事故や地震あるいはテロ攻撃などで原発が破壊されれば,交通の便の悪い周辺住民は,とても逃げ切れないのではないか。

この玄海原発の近くにも風力発電所がいくつかある。唐津側の絵のように美しい小さな村の裏山に巨大風車が数台設置れていた。涙なくして見られない光景。おそらく村人たちは,四六時中,頭上で回転する巨大風車に威圧され,低周波音圧波動に苦しめられながら,日々生活せざるをえないのだろう。
 玄海原発(九電HP)

丹後のわが村は,福井原発群から30キロ圏。原発事故が発生すれば避難せざるをえない。風向きが悪ければ,高濃度汚染され,住めなくなってしまうだろう。福井原発群は,たしかに現実の脅威だ。

一方,わが村は過疎であり,周囲を小高い山に囲まれている。丹後半島は風に恵まれ,山地の地価は限りなくゼロに近い。送電網も既設火力発電所のおかげで,申し分なく完備している。これだけ条件がそろっているので,そのうちわが村周辺にも風力発電所が設置されるのではないかと恐れている。

周辺の稜線沿いや山腹に巨大風車が林立し,四六時中,回転しているわが小村――グロテスクな世紀末風景だ。精神的圧迫,低周波振動による健康障害など,とてもじゃないが,こんな村には住めない。
 福井原発群(福井県原子力センターHP)

 高浜・大飯原発からの距離(朝日新聞2011.5.21)

福井原発群は,わが村にとって,確かに脅威だが,日常的には目にするわけではなく,直接的な被害を受けているわけでもない。いま生きている村人個人にとっての直接的リスクは,車やガス器具などよりもはるかに低い。

ところが,もし風力発電所が近くにできると,被害は四六時中,原発の比ではない。無人島ならいざ知らず,こんな非人間的なグロテスクなものは,つくってはならない。

それでも,どうしてもつくるというのなら,電力を必要としている大都市やその周辺に設置すべきだ。たとえば皇居周辺や大阪城公園など。あるいは,高速道沿いや,東京湾岸,大阪湾岸などもよい。近くにつくれば,風力発電は原発以上に耐えがたいものであることが,理解されるであろう。

保守主義の観点に立てば,原発は廃止すべきである。そして,近代人権主義の観点に立てば,風力発電は,無人島などを除き,設置すべきではない。(自然保護の観点からは,風力発電もすべて禁止すべきだが,この点については別に論ずる。)

【参考資料】
有象無象、「発電成金」を目指せ! 再生可能エネルギーバブルの経済効果 (日経ビジネス2012年7月4日)
 再生可能エネルギーで発電した電力を、一定期間、一定金額で電力会社が買い取る新制度の開始を受けて、エネルギービジネスに新規参入する企業は後を絶たない。7月1日の制度開始から当面は、かなりの好条件が設定されていることから、産業界は色めき立っている。
 実際、これまでエネルギービジネスなど眼中になかった人たちが、商機を見て参入を検討している。ある自治体担当者は、「毎日のように『空いている土地はないか』と問い合わせがあるんです」と明かす。その中には、「この会社は…」と首を傾げるようなところも少なくないという。
 再生可能エネルギーによる発電事業をプロジェクトファイナンスで実施する場合、エクイティ利回り(自己資金に対する利回り)は10%前後まで高まる可能性がある。この低金利のご時世に、これだけの利回りが期待できる金融商品はあまりない。新規参入が相次ぐのは当然のことだろう。
 この状況を、「再エネバブル」や「再エネ狂想曲」と表現するメディアは多い(ここには、もちろん弊誌も含まれている)。・・・・・・・・・・・・・・

【参照】節電・停電

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/07/09 @ 11:43

カテゴリー: 経済, 人権

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