ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

捨て石PLA:国軍統合1000人余

1.人民解放軍解体
マオイスト人民解放軍(PLA)の解体が最終段階に入った。PLA3万余(国連認定約2万人)のうち,国軍移籍希望(兵卒レベル)は,結局,1000人余となりそうだ。

PLA3万余を国軍と統合し国軍統制権を奪取するというマオイストの所期の目標は,水泡と帰した。というよりもむしろ,3万余の人民解放軍兵士は,幹部たちの権力と金のために,使い捨てにされたのだ。これは,ネパール「人民運動」の常態であって,マオイストが例外であるわけではない。歴史は繰り返す。21世紀にはマンガとして。

2.鉄壁の国軍と烏合のPLA
人民戦争終結直後は,人民解放軍兵士の多くが国軍移籍を希望していた。しかし,国軍は,インドの強力支援を得て,これを断固拒否,PLA統合手続をズルズル引き延ばし,PLA兵士を地獄に毛の生えた程度の劣悪駐屯地に軟禁し,生殺しにした。二十歳前後の青年男女が,先の見通しもないまま,5年間も軟禁される。

他方,駐屯地の外では,幹部たちが,議員先生になったり,官民協力事業やNGOの親玉となり,贅沢三昧。PLA暴動が起きなかったのが不思議なくらいだ。PLA兵士の多くは,ピューリタン革命の鉄騎兵とは異なり,自覚なき烏合の兵卒だったといわざるをえない。

3.国軍移籍一次試験合格1647人
PLAの国軍統合は,ズルズル引き延ばされたため,無条件統合から希望者のみとなり,その希望者も3123人にまで激減していた。

この3千人余についても,国軍の意をくむ統合特別委員会は,移籍資格試験を課した。年齢は24歳以上(1988年5月24日以前生まれ)。さらに筆記試験・運動能力試験・健康診断が課される。これは新兵採用に準ずるもので,下層階層出身で十分な学校教育を受けていないPLA兵士の多くにとっては,酷な手続だ。しかも,国軍移籍は,おそらく個人単位となり,国軍内では冷遇が予想される。

マオイスト幹部たち自身は,教育を受け,それなりの財産もある。その彼らが,人民戦争を開始し,PLA兵士たちに小中学校を包囲させ,「ブルジョア教育」の反動性をアジり,生徒たちに学校をやめさせPLA参加を強制した。強制連行による洗脳も日常茶飯事だった。PLA兵士の無教育のかなりの部分が,少年兵や学徒兵を動員したマオイスト幹部の責任だ。それなのに,国軍移籍に学歴を必須とする。幹部たちの裏切り,ここに極まれりだ。

その結果,9月14日現在,国軍移籍第一次試験合格者は,1647人となった。兵卒レベル1561人,スベダール(Subedar,下士官レベル?)86人(Republica, 2012-09-14)。最終的には,結局,1000人くらいになるだろう。[注: 9月27日付ヒマラヤンタイムズによれば,最終的には,国軍統合有資格者総数は3,123人。流動的で,まだ確定しにくい]

国軍移籍に比べ,任意除隊の方がまだまし。除隊一時金約50~80万ルピーと帰郷費などが支給され,金銭的には国軍移籍後除隊より有利とされている。

4.使い捨て人民
マオイスト幹部は,人民解放軍兵卒や他の多くの参加集団の平構成員を踏み台にして地位と名声とカネを獲得し,用済みとなると捨て去った。しかし,これは多かれ少なかれ,どの運動や組織についてもいえることだ。

日本企業を見ると,ごく少数の経営者やエリート幹部が,パート・非正規社員や平社員を低賃金でこき使い,ぼろ儲けしている。自由競争,自己責任のイデオロギーにより,日本人民の大半は使い捨てにされているのだ。

マオイスト・イデオロギーによる使い捨てと,資本主義イデオロギーによる使い捨てと,どちらがより酷いか? どちらがより巧妙か? 今一度よ~く考えてみるべきだろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/09/19 @ 11:01

カテゴリー: マオイスト, 政治

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