ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

東西丘陵横断道路も中国へ

マオイスト政府の中国傾斜――中国のネパール浸出――に拍車がかかっている。訪中したナラヤンカジ・シュレスタ副首相兼外相が,今度は,東西丘陵横断道路建設への援助を要請し,中国側もこれに好意的な回答をしたのだ。430億ルピー也。

ネパールと中国は,この外相会談において,貿易,インフラ建設,観光,投資,社会・経済開発の5分野における協力強化に合意した。たとえば,中国援助中の西セティ水力発電事業,ポカラ空港事業,経済特区建設事業などの推進。こうした中国側の好意に対し,シュレスタ副首相兼外相が,「一つの中国政策堅持」の確認をもって応えたことはいうまでもない(ekantipur, 2012-09-19)。

いまのネパールには,正式憲法もなければ議会もない。正式の政府すらない。暫定首相が暫定的政令(ordinance)と暫定予算でとりあえず統治しているに過ぎない。近代的な意味での権力の正統性はまったくない。

しかし,すごいのは,このような状態であってもネパール社会は平気であり,統治破綻に陥ることがないということ。暫定政府の暫定大臣が大国中国と堂々と交渉し,破格の援助を引き出している。立派な憲法と議会と政府がそろっている日本が,対中外交でオタオタしているのと雲泥の差だ。

ネパールには,もはや憲法も議会も必要ないのではないか? またぞろ,制憲議会選挙をやることになったそうだが,選挙民主主義原理主義国を除けば,諸外国も日本も,今度はたいした選挙援助はしないだろう。

こんな舶来の異物さえなければ,有力者間のあうんの呼吸(エリート統治)で,ネパールは,うまくやっていけるのではないだろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/09/20 @ 09:59