ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for 10月 2012

中国南方航空でネパールへ

1.共産主義の残り香
はじめて中国南方航空に乗った。関西空港からだと往復とも接続がよく便利。関空→広州、広州→カトマンズとも、満席だった。

関空→広州便は、古い機体で座席間隔が狭く、少し苦しい。前席は壊れていて、常にリクライニング状態。食事もゆっくりとれないし、なにより離発着時は危険だ。

機内サービスは共産主義の残り香がほのかにただよい、懐かしい。懐古趣味の老年向き。

2.広州空港の資本主義的案内嬢
広州空港はいかにも中国という感じだが、感心したのは、ちょっと場違いの、たすきがけ案内嬢がいて、資本主義国なみに愛想が良かったこと。乗り換えでマゴマゴしていたら、「どうしたの?」と優しく声をかけ、親切に案内してくれた。謝々。

3.日産広告と釣魚島
乗り換え待合所には巨大ディスプレー(製造国不明)があり、健気にも日産自動車が広告を出していた。

その数コマ後には、釣魚島を大書した中国地図付き広告。さすが中国、抜け目がない。


■広州空港乗り継ぎ待合室 映像広告

4.なめられる日本乗客
中国南方航空だけでなく、一般に、日本発着便は、機体が古い。今回も、関空→広州よりも広州→カトマンズの方が、機体は新しく座席間隔も広かった(客室メンテナンスはいい加減で、あちこちの物入れポケットが破れてはいたが)。

日本便は儲からないからか? それとも、おとなしい日本乗客がなめられているのか? 邪推に過ぎないが、どうも後者のような気がする。異文化競争の世界社会では、要求を出さなければ無視され、馬鹿にされるだけ。不打不識!

日本乗客は、日本乗り入れ航空各社に対し、せめてカトマンズ便程度の機体を使え、と要求すべきだろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/10/31 at 18:59

生存の技法:D.R. Dahal, Art of Survival

印―ネ―中。このネパールの地政学的位置は、単純にして複雑、複雑にして単純だ。それは、ネパールの「存在の技法」の基礎である。たとえば――

Dev Raj Dahal, “The Art of Survival: Policy Choices for Nepal,” Dhaulagiri Journal of Sociology and Anthropology, vol.5, 2011, pp.31-48.

■ Dev Raj Dahal

「中国は、社会的・政治的・経済的な多様な関係を通して、インドがネパールの安全保障や経済活動の大枠を変えてしまうことを恐れている。同様にインドも、ネパールの有力者たちの動きを警戒している。たとえば、中国からの石油類の輸入、中国鉄道の北京―カサ―カトマンズ延伸、中国によるUCPN-M支持の示唆など。」(p.36)

印・ネ・中の三角関係は、長年、この地域の地政学的基本構造となってきたが、中国の台頭とともに、その従来のあり方に揺らぎが見え始めた。

中国は、対ネ外交においては、極めて慎重であるが、その経済進出は目を見張るものがあり、あちこちで軋轢が生じ、それがネパール政治の混乱をいっそう深め、複雑なものとしている。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/10/31 at 13:41

カテゴリー: インド, 中国

Tagged with ,

パキスタンの対印工作地としてのネパール

ネパールがパキスタンの対印工作基地となっているという非難は,ことあるごとにインド側から繰り返されてきた。地政学的に見れば,誰でもすぐ思いつくことであり,おそらくそうした事実は多かれ少なかれあるのであろう。ダサイン休暇のニュース切れのせいか,そんな記事が目についた。
“Pak Infiltration through Nepal Border Increases,” LINK, 27 Oct.,2012

信憑性は定かではないが,記事によれば,パキスタンは印ネ西部国境を利用し,パキスタン人をインドに移入(潜入)させている。なかには,テロリストも含まれる。

■ネパール経由インド移入パキスタン人
  ・2007-2010年: 男127人,家族5
  ・2011年:    男61人,女15人 
  ・2012年(1-10月):男107人,女43人

パキスタン人のインド移入を支援しているのは,パキスタン秘密機関。インド移入者を増やし,内部からインド工作を強化するのが狙いとのこと。

記事によれば,ネパールにはパキスタン軍統合情報局(ISI:Inter-Services Intelligence)やラシュカレトイバ(LeT:Lashkar-e Toiba)のアジト(隠れ家)があり,テロリストや移入者をしばらく匿い,生活に慣れたところで,旅行者としてインドに送り出しているという。

先述のように,こうした情報は秘密機関が関わるものであり,確証はないが,常識的に見て,ありそうな話だ。その限りでは,情報ものの床屋政談の域を出ないが,しかし,ネパールの場合,面白がっているだけでは済まされない。

2001年6月の王族殺害事件には何らかの情報機関が絡んでいたと思われるし,2005年11月の「12項目合意」や2006年春の「人民運動」にも某国情報機関が深く関与していたといわれている。

ネパールには,その地政学的重要さの故に,スパイものであってもフィクションともノンフィクションとも言い切れない,特有の複雑さ,難しさがあるのである。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/10/29 at 11:03

カテゴリー: インド, 外交

Tagged with , , , , , ,

人民解放軍元兵士,ダサイン祭礼再開

マオイスト人民解放軍でダサイン祭をボイコットしてきた(させられてきた)元兵士が,除隊者も国軍編入者も,10年ぶりにダサイン祭を祝っているという。報道では彼らの比率など,詳しいことは分からないが,興味深い現象だ。

マオイストは原理主義集団のように思われてきたが,実際には必ずしもそうではない。人民戦争期間中には,あちこちで青少年をかり集め,集団洗脳しようとしたが,それは形だけで,精神改造にまでは至らなかった。良くも悪くも,それがネパール流だ。

中央では,マオイスト主導政権であるにもかかわらず,ヤダブ大統領(コングレス党)は,パルマナンド・ジャー副大統領(MJF),警察・武装警察・国軍の幹部,そして高級官僚らにティカを授け,そのあと一般人民にもティカを授けた。

ダサインは、日本の正月よりはるかに宗教色が濃く,国家行事として挙行されるなら,政教分離という意味での世俗主義には反する。しかし,そこはネパール,マオイストもあまり堅いことは言わずダサインを祝うことにしたらしい。


  ■ティカを授けるギャネンドラ元国王(Nepal24Hours,23 Oct)


  ■ティカを授けるヤダブ大統領(Republica, 25 Oct)   

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/10/25 at 20:40

OHCHR, 「ネパール紛争レポート2012」発表

国連人権高等弁務官事務所(Office of United Nations High Commissioner for Human Rights)が2012年10月,「ネパール紛争レポート2012(Nepal Conflict Report 2012)」を発表した。233頁もの膨大なレポートで,1996年2月~2006年11月21日の紛争期間中の国際人権法・国際人道法違反につき,詳しく分析している。

「レポート」は,紛争による死者を約13000人,行方不明者は約1300人としており,最終的には死者は17000人に上るとみている。

OHCHRの目的は,マオイスト紛争期間中の国際人権法・国際人道法違反の事実を解明し,責任を明らかにさせることにある。

ところが,これは国軍,武装警察隊,警察,マオイストなど,紛争当事者にとっては不都合な場合が少なくない。そこで彼らは,責任を問われそうな有力者,たとえば国軍のRaju Basnet大佐や警察のKuber Singh Rana総監の昇進をはかり,また「真実和解委員会(TRC)」を利用して,「真実」を棚上げにしたまま免罪だけを進めようと画策している。

国軍,警察,マオイストそして高級官僚などにとって,OHCHRは邪魔なのだ。OHCHRは2005年からネパールに現地事務所を設置していたが,ネパール政府が2011年11月,活動期間更新を認めなかったため,同年12月8日より実質的な活動は停止している。

今回,OHCHR「レポート」において報告されたのは,次の5分野の国際人権法・国際人道法違反。
 (1)違法な殺害
 (2)強制失踪
 (3)拷問
 (4)恣意的な逮捕・拘束
 (5)性的暴行

これらの人権侵害や違法行為は,いずれの当事者の側にもあり,「真実」の解明や責任追及は難しい。国際機関を追い出し,ネパール側だけで実行することは可能だろうか? 日本の場合,日本人自身による戦争犯罪の責任追及はできなかった。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/10/24 at 21:16

ゴシップで売る朝日と佐野眞一氏の名前

1.「ハシシタ 奴の本性」の販促効果
今日,近所の小さな書店に行ったら,『週刊朝日』11月2日号が山積みされていて,けっこう売れていた。先週号に続き,「ハシシタ,奴の本性」の販促効果だ。

スキャンダルを暴露し,あるいは自らゴシップの種となり,売上増を狙うのは,週刊誌の常套手段だが,まさか朝日までもがその手を疑われる事態になろうとは想像もしなかった。

たしかに朝日は,本体の朝日新聞にしても,特に地方では販売が厳しいらしく,以前なら考えられないような怪しげな広告を掲載するようになっている。デジタル版も,有料購読者はおそらく期待以下であり,経営の足しにはなるまい。貧すれば鈍するだ。

「ハシシタ 奴の本性」が,意図的なゴッシプ販促狙いと疑わざるをえないのは,多くの識者が指摘しているように,このような低俗な見出しや品性下劣な文章が厳格をもって知られる朝日の記事チェックをやすやすと通ってしまったのが,あまりにも不自然だからだ。

私のようなジャーナリズム素人が見ても,これはマズイ,こんな人権侵害の反社会的記事は大幅修正か掲載中止とすべきだ,と反射的に感じたほどだ。

そんなひどい記事を朝日が掲載したのは,どう考えても,意図的としか思われない。朝日は,おそらくゴシップで売るきわもの経営に方向転換したのだろう。


 ■ゴシップとハウツーに向かう『週刊朝日』(11月2日号)。他に「自分の女性器,見たことある?」(62頁)など。

2.編集長の編集・掲載責任
『週刊朝日』11月2日号には,川畠大四編集長「おわびします」(18-19頁)が掲載されている。要点は,次の4つ。

(1)編集部がノンフィクション作家・佐野眞一氏に執筆を依頼したこと。
(2)不適切な表現があり,人権に著しく配慮を欠くものであったこと。
(3)編集・掲載責任は編集部にあること。
(4)この記事の企画立案・記事作成について,徹底的に検証すること。

3.執筆者としての佐野眞一氏
朝日が編集・掲載責任を明確にし,検証を進めるということなので,記事執筆者である「はず」の佐野眞一氏の作家としての責任も自ずと明らかとなるであろう。

しかし,それはそれ。私たちが知りたいのは,なぜ佐野氏ともあろう方が,このような文章を書かれ掲載を承認されたのか,ということだ。まさか,ゴシップで売ろうとする朝日に名前を利用されただけ,ということはあるまい。

そもそも,名前は単なる記号ではない。人の本質は,DNAや血脈にあるのではなく,名前にある。名前こそが自分の人格であり自分自身である。佐野氏の名前を冠した文章,「ハシシタ 奴の本性」は,佐野氏の人格の外化であり文章化である。川畠編集長も,「佐野眞一氏に執筆を依頼しました」(18頁)と明言している。

もしそうであるなら,執筆の目的や連載中止の理由を説明する責任は,編集部以上に佐野氏自身の方にある。にもかかわらず,「すべての対応は『週刊朝日』側に任せています」(朝日新聞11月20日)で済ますことは,作家としての沽券に関わることではあるまいか。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/10/23 at 19:07

カテゴリー: 文化, 人権

Tagged with , , , ,

佐野氏の執筆責任放棄と朝日の表紙かくし

1.佐野氏の執筆責任放棄
佐野眞一氏は,自著記事「ハシシタ 奴の本性」(週刊朝日10月26日号)について,次のようなコメントを出されたという。

「記事を執筆したノンフィクション作家の佐野眞一氏は、朝日新聞出版を通じコメントを発表。「記事は『週刊朝日』との共同作品であり、すべての対応は『週刊朝日』側に任せています」と説明し、「記事中で同和地区を特定したことなど、配慮を欠く部分があったことについては遺憾の意を表します」とした。」(毎日新聞ネット版10月19日)

しかし,すべての対応を週刊朝日側に任せるというのは,文筆家にとって命よりも大切なはずの執筆責任(文責)の放棄ではないのか?

『週刊朝日』表紙を見ても,朝日新聞広告を見ても,記事キャプションを見ても,執筆者として佐野氏の名前が大書され,取材班2名の名は全然記載されないか,ごく小さく記載されているかのいずれかだ。

この連載記事は,佐野氏の執筆である「はず」であり,第一の執筆責任が佐野氏にあることは明白である。佐野氏は,著者(author)として「ハシシタ 奴の本性」を書き,自著として権威づけた(authorised)のであり,その創作行為には当然,創作者(author)としての責任がある。

もし自分の名を冠した作品に対する責任を回避するなら,佐野氏は作家としての権威(authority)を失ってしまうだろう。

2.朝日の表紙隠し
一方,朝日新聞は,『週刊朝日』10月26日号の表紙画像を,ネットサイトから削除してしまった。

ハシシタ 橋下徹のDNAをさかのぼり本性をあぶり出す」とデカデカと書いてしまったのが,いまとなっては恥ずかしく,あわてふためいて表紙画像ファイルを削除したらしい。

こんな表紙画像を残しておくと,血統主義・人種主義の応援団としての,人権無視の旗手としての,朝日新聞の「本人も知らない本性」が,あぶり出すまでもなく一目瞭然だからであろう。

橋下市長のDNAは暴いてもよいが,朝日新聞のDNAは見せてはならない!

が,これは猿知恵。大慌てで表紙画像ファイルだけを削除してしまったため,あちこちで醜いリンク切れが発生,「×」「×」表示となってしまった。大手サイトにはあるまじき醜態。リンク元画面の修正すらできないほど,朝日新聞は動転しているのだ。



  ■ 表紙画像が削除された朝日ネットサイト

しかし,これは頭隠して尻隠さず。朝日新聞DNAを明記した『週刊朝日』表紙は,削除以前にコピーされ,ネット上にまき散らされた。ネット時代には,頭は隠せても,尻は隠せない。

ネットが続く限り,朝日新聞は血統主義・人種主義・優生思想のDNA――本人も知らない本性――を原罪として背負い続けなければならない。

どう贖罪するのか? 本性としての原罪と真摯に向き合うことなくして,これから先,朝日新聞が何を言おうと,その原罪の故に,結局は誰にも信じてはもらえないだろう。

朝日と佐野氏の優生思想:「ハシシタ 奴の本性」の危険性

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/10/22 at 16:32