ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

人間の安全保障と国際平和貢献

小論「人間の安全保障と国際平和貢献」を発表しました。憲法研究所・上田勝美編『平和憲法と人権・民主主義』(法律文化社,2012年)290-304頁。以下,結論部分のみ紹介します。

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日本国憲法は、先述のように、前文で人間安全保障への積極的貢献を義務づけているが、その手段については、いうまでもなく第九条により武力によることを一切禁じている。日本国民は、非軍事的手段による平和貢献に徹することを自ら選択したのである。

この憲法理念からすると、日本政府の人間安全保障政策は、「国益」優先と自衛隊動員の二点において、誤りである。

そもそも非軍事的平和貢献の中心を占めるべき政府開発援助が、日本の場合きわめて貧弱である。日本のODA(2011年度)は、援助総額では英独仏とほぼ同じだが、国民一人当たり負担額はノルウェーの10分の1以下であり、一般会計予算に占める割合もわずか1.1%でしかない。さらに驚くべきことに、ODA予算は、1997年度を100とすると、2011年度は49であり、半減されている。ほぼ総額維持の防衛関係費と比較して、その落差は極端だ。

これは、人間安全保障への非軍事的貢献を義務づけている憲法に反する政策である。たしかに、従来のODAには事業目的の不明確さや不効率があったことは事実である。しかし、だからといってODAを大幅削減したり、自衛隊海外派遣のための草刈り場とするのは誤りである。また、ODA関係者が、根拠なき批判や予算削減におびえ、右傾化世論に迎合し、一見明快な「国益」貢献に飛びつき、自衛隊との軍民協力に走るのは、ODAの自殺行為に他ならない。

日本国民は、非戦非武装の憲法理念に立ち返り、「国家」ではなく「人間」の安全を保障するための平和的手段による平和貢献を改めて選択し直すべきであろう。(302-303頁)
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Written by Tanigawa

2012/10/18 @ 21:16