ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

OHCHR, 「ネパール紛争レポート2012」発表

国連人権高等弁務官事務所(Office of United Nations High Commissioner for Human Rights)が2012年10月,「ネパール紛争レポート2012(Nepal Conflict Report 2012)」を発表した。233頁もの膨大なレポートで,1996年2月~2006年11月21日の紛争期間中の国際人権法・国際人道法違反につき,詳しく分析している。

「レポート」は,紛争による死者を約13000人,行方不明者は約1300人としており,最終的には死者は17000人に上るとみている。

OHCHRの目的は,マオイスト紛争期間中の国際人権法・国際人道法違反の事実を解明し,責任を明らかにさせることにある。

ところが,これは国軍,武装警察隊,警察,マオイストなど,紛争当事者にとっては不都合な場合が少なくない。そこで彼らは,責任を問われそうな有力者,たとえば国軍のRaju Basnet大佐や警察のKuber Singh Rana総監の昇進をはかり,また「真実和解委員会(TRC)」を利用して,「真実」を棚上げにしたまま免罪だけを進めようと画策している。

国軍,警察,マオイストそして高級官僚などにとって,OHCHRは邪魔なのだ。OHCHRは2005年からネパールに現地事務所を設置していたが,ネパール政府が2011年11月,活動期間更新を認めなかったため,同年12月8日より実質的な活動は停止している。

今回,OHCHR「レポート」において報告されたのは,次の5分野の国際人権法・国際人道法違反。
 (1)違法な殺害
 (2)強制失踪
 (3)拷問
 (4)恣意的な逮捕・拘束
 (5)性的暴行

これらの人権侵害や違法行為は,いずれの当事者の側にもあり,「真実」の解明や責任追及は難しい。国際機関を追い出し,ネパール側だけで実行することは可能だろうか? 日本の場合,日本人自身による戦争犯罪の責任追及はできなかった。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/10/24 @ 21:16