ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

軍事化の兆し、日ネ関係

1.秋爛漫に水を差す陸自幹部派遣
キルティプール付近は、いま桜が満開、他に菜の花、ブーゲンビリア、ラルパテ、マリーゴールド、カンナ、朝顔(といっても一日中開花)等々、百花繚乱、まるで東北の5月のようだ。

■ラルパテ■八重ブーゲンビリア(?)


 ■稲の刈り入れと満開の桜(右端)

そんな平和で、のどかな「秋爛漫」に水を差すような、物騒なニュースを各紙が伝えている。日本政府は、カワセ・マサトシ陸将補を団長とする3人のネパール軍事訪問団を派遣した。11月8日着、10日発の3日間の訪ネだ。

2.史上最高レベルの日本軍事訪問団
報道によれば、訪ネ軍人としては、カワセ陸将補は史上最高レベルであり、新聞やネットニュースの見出しも、勇ましい。

「日本国軍事団の異例の訪ネ」(ranabhola.blogspot,9 Nov)
「日本国安全保障チームの訪ネ」(Zeenews, 10 Nov)
「軍事協力を協議」(Himalayan Times, 7 Nov)
「日本国自衛隊幹部、首都へ」(nepalnews.com)

カワセ陸将補ら日本国陸自(陸軍)幹部は、プサン・チャンド国軍CGSと会見し、相互軍事協力や自然災害時の人的協力について協議した。また、国軍幹部学校や国軍司令部を訪問し、各部隊の幹部とも会見した。

 ■日ネ軍人協議(Himalayan Times)

3.米軍訪問団の訪ネ
さらに驚くべきことに、上記ヒマラヤンタイムズによれば、日本国軍事訪ネ団の翌日、やはり3日の日程で、アメリカ「近東南アジア」担当チームが訪ネ、チャンド国軍CGSと会見し米ネ軍事協力を協議、また軍幹部学校を訪問しているのだ。

4.日米の対ネ軍事協力作戦か?
軍事関係だから、報道はごく限られており推測せざるをえないのだが、日米軍事同盟の現状からして、日本の対ネ軍事協力・準軍事協力が日本単独で計画されるわけがない。

中国の軍事大国化、チベット問題、尖閣諸島問題などをにらみながら、日米が協力して、ネパールへの何らかの軍事的働きかけを始めたのではないか、と疑わざるをえない。

5.海外派兵への呼び水
日本では、2006年、自衛隊法が改悪され、自衛隊の海外活動が「本来任務」に格上げされた。そのための軍民協力精鋭部隊として「中央即応部隊」も設立された。「平和協力」の名目さえつけば、いまや自衛隊は世界のどこへでも、もちろんネパールへも、部隊を派遣できるのである。むろん日本独自ではなく、アメリカの下働き、あるいは尻ぬぐいとして、

ネパールへの自衛隊派遣は、2007年3月のUNMIN(国連ネパール政治ミッション)への陸自隊員6名の派遣から始まる。停戦監視のための非武装隊員派遣だったので、ネパール関係者の間では、支持こそあれ、反対はなかった。

しかし私は、これは日本の自衛隊海外派遣の本格化の呼び水になると考え、当初から反対してきた。今回の「対ネ日米軍事協力作戦」ともとれる動きは、その傍証の一つといえよう。

6.危険な軍民協力
今回の史上最高レベルでの日ネ軍事協議において、自然災害時の人的協力が話し合われたことも、看過しえない事態だ。

ネパールではマオイスト紛争は終結し、紛争がらみでの自衛隊派遣の理由は今のところはない。ところが、自然災害は頻発し、規模もますます大きくなっている。地震でもあれば、大惨事だ。自然災害時の自衛隊派遣は、そうした事態を想定している。

ネパールの災害時に救援隊を最大限派遣するのは当然だが、自衛隊派遣には反対である。

先のUNMIN派遣で自衛隊はネパール国軍との関係を一気に強化した。もし災害派遣が想定されるなら、平時から自衛隊とネパール国軍は関係を緊密化させ、そこには当然、民間・文民部門も深く関与する。日ネ軍民協力である。

自衛隊が、日ネ軍民協力を手がかりとしてネパールに関与していけば、自衛隊がらみの複雑な既得権益が生じ、もはやそこからは抜け出せなくなる。ネパールには、自然災害の危険は山ほどある。紛争の種もある。チベット問題も深刻だ。暗に中国の脅威をも想定しつつ自衛隊をネパールに出せば、引っ込みがつかなくなる。

ネパール関係者は、日本ODAが大幅削減され、あせり、防衛予算に目を向け始めたのだろうが、これは禁じ手、絶対に手を出してはならない。

某大学、某々大学などは、平和貢献を名目に、自衛隊関係者やその筋の某財団などとの共同研究に前のめりだが、こんな軍民協力、軍学協力こそが、国を誤らせることになるのである。

「太って満足した豚よりも、痩せたソクラテスになりたい」 J.S. ミル

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/12 @ 02:04