ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

信号機、ほぼ全滅(2):タパタリ交差点ほか

1.タパタリ
11月18日、信号機「定点観測地」の一つ、タパタリ交差点に行ってみた。無惨、悲惨! 唖然とした。

華々しく点灯したときから、こんな複雑な信号システムは機能しないのではないかと危惧したが、現状は想像以上だ。歩行者用信号はへし曲げられ、車両用信号は看板でランプを隠され、信号ケーブルは至る所で垂れ下がり、すべてが醜悪な残骸と化している。

信号機を維持し使用する意思は寸毫も認められない。早く切り倒して鉄屑にした方がよい。論より証拠、現状は写真で見ていただきたい。

 
 ■消灯信号と寺院修理/曲がった信号と修理済み寺院

 
 ■警官の交通整理/広告優先

2.トリプレスワル
世界貿易センター前の信号機は、文字通り切り倒されたのか、一つを除いて信号ランプそのものが全く見あたらない。この交差点は、幸い昔からのロータリーがそのまま残されているので、このロータリーと交通警官の手信号とで交通整理がされている。

 
 ■一つだけ残った信号/警官の交通整理

3.マイティガルほか
中央統計局、農業開発銀行、最高裁などの近くのマイティガル交差点も、一つだけ黄点滅だったが、他は消灯。黄の点滅など、ほとんど無意味なので、ここも全滅といってよい。また、シンハダーバー前、ディリーバザール出口など、他の大きな交差点もみな全滅だった。

 ■曲がった消灯信号(マイティガル)

4.ATMとの対比
悲惨、無惨の信号機援助の現状を見ると、援助の文化適合性と必要性を改めて考えざるをえない。

ネパールの人々は好奇心が強く、必要でさえあれば、新しいものを日本人以上に大胆、積極的に取り入れ、使いこなす。その好例がATM。

ATMは、導入当初は、銃を持った警備員が警戒し、機械もよく故障した。ところが、いまやATMはいたるところにある。警備員はほとんどいないし、故障もない。残骸信号機のタパタリ付近にもたくさんある。日本以上に便利だ。

つまりATMは、ネパールの人々が必要としており、かつネパール文化に適合していたから、援助などしなくても自然に広がり、見事に保守管理されているのだ。

携帯電話もそうだ。ネパールの人々が必要とし、文化に適合しているので、こちらも自然に普及し、使用されている。カトマンズを見る限り、日本より安価で便利といってもよいであろう。

5.援助の必要性と文化適合性
ATMや携帯電話と対照的なのが、信号機。おそらく日本をはじめ先進諸国が信号機は近代化に不可欠と考え、大金を援助し設置させたのだろう。

しかし、ネパールは、少なくとも現在まではロータリー文化であり、信号機文化ではない。信号機は文化適合性が無く、人々も必要性を感じてはいない。だから、いくら大金を援助し高機能信号機を設置しても、しばらくすると使用されなくなり、数年もするとガラクタとなり、結局は切り倒され、鉄屑とされてしまうだけなのだ。

むろん、繰り返し留保するように、ネパールでもいずれ信号機が必要とされる時期が来るであろう。しかし、見る限り、まだその状況ではない。信号機ほど、援助における「文化適合性と必要性」の問題を目に見える形で具体的に示してくれるものはない。

ネパール観光やネパール・スタディツアーには、援助信号機見学コースをぜひ追加していただきたい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/21 @ 00:41