ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

コカナとブンガマティ

1.コカナ
11月22日、カトマンズ南方のコカナ、ブンガマティ方面に散策に出かけた。キルティプールからタクシー(マルチスズキ)でバグマティ川沿いに下り、サイブバンジャング付近で橋を渡り、マガルガオンを経て、コカナ着。約30分。

コカナは古い村で、寺院や民家など趣はあるが、想像以上に新しいものが増え、村全体としては、今ひとつ調和がとれない感じがした。犬も文明化されており、裏道に入っても威嚇されない。

ここは、村中よりも周辺の田園風景がよい。丘の上からバグマティ川を挟んで向かいの山まで、広く一望できる。谷底の水田に点在する家々が、何ともいえない風情を醸し出している。

また、ヒマラヤはランタン、グルカルポリ(?)、ガネッシュの他に、マナスルやアンナプルナも見える。北方の小さなお椀のような丘の上にポツンと木が1本。これがなかなか風情があり、絵になる。ヒマラヤをバックに入れて写真を撮ると、少々、絵になりすぎる嫌いさえある。むろん桜も満開。(以下、写真キャプションの「-K」はコカナ、「-B」はブンガマティ)

 
 ■コカナと桜-K/籾干しと水田遠望-K

 
 ■籾干し(1)-K/籾干し(2)-K

 
 ■糸繰り-K/丘の木とヒマラヤ(1)-K


 ■丘の木とヒマラヤ(2)-K

2.ブンガマティ
コカナを堪能したあと、歩いてブンガマティに向かった。細い里道で、車やバイクはほとんど通らず、快適。時々、欧米人の集団と出会う。最近は、団体旅行は欧米人、個人旅行は日本人という傾向になってきた。日本はエライ! ついに欧米を追い抜いた。

ブンガマティは、古い建物がほとんど残っており、コカナ以上に趣がある。町中いたるる所で籾干し。まるで籾干し大会のようだ。

また、神仏の彫金や木彫、絨毯の手織りなどは、コカナでもやっていたが、ここでもあちこちでやっている。かなりの需要がありそうだが、宿の主人に聞くと、特に絨毯や布の手織り労働はきつく、賃金はわずかだそうだ。

  ■民家と洗濯物-B

 
 ■籾干し(3)-B/籾干し(4)-B

3.裸体女性の自然
驚いたのが、ブンガマティでは、女性が上半身裸で昼寝や籾干しをしていること。コカナでも見たが、ブンガマティの方が多い。さすがに若い女性ではなく、30代以降の女性たちのように見えた。

しかし、これは驚く方が変だ。西欧は寒いから服を着るのであり、南国は暑いから着ない――ただそれだけ。日本でも、農漁村では、1960年代頃までは、女性も平気で上半身裸で夏を過ごしていた。寒くて服を着ざるをえない西欧人が、その僻目から、衣類で身体を隠すことを文明的、道徳的という説をでっち上げ、暖かい国の人々に押しつけたにすぎない。

幕末、日本を旅した西欧人が、日本人は庭先で平気で行水したり、裸で歩き回っているといって、その「未開」「不道徳」を笑いものにしたが、まったくもって余計なお世話! 拘束着を文明的、道徳的と思い込み、不自由な生活をしている西欧人の方が変なのだ。

18,19世紀のコルセットで腰を異様なまでに締め付けた西洋女性と、上半身裸でくつろいでいる東洋女性を比較してみよ。自由で道徳的で高貴なのは、明らかに東洋女性だ。ゴーギャンに聞くまでもない。

 
 ■寺院広場で沐浴-B/寺院で野菜干し-B

 
 ■籾干し(5)-B/マナスル-B

4.ネクタイで拘束されるネパール人
そこで嘆かわしいのが、東洋人の自尊心自己放棄。クソ暑いタイなどでも、クーラーをかけ、背広にネクタイ。不道徳の極みだ。

そして、わがネパール。まったくもって理解しがたいのは、私学が流行し始めると、各学校が競って生徒にネクタイを強制したこと。私の交流校の一つも、20年ほど前の創立時から、1年生から最上級生までの男女生徒にネクタイをさせている。

こちらは半袖、ノーネクタイだというのに、まったくもって西洋の猿まね、自尊心放棄であり、不道徳きわまりない。半裸女性の自立自尊に学ぶべきだ。

 
 ■脱穀機と籾-K/籾干し(5)-B

5.資本主義と英語帝国主義の走狗、私学
私学は、コカナ、ブンガマティ付近にも、驚くほどたくさんある。いずれも豪華な建物で、学費も高そうだ。そして、競って校舎に、SLC優秀者の顔写真付一覧表を掲げている。

大部分の私学が、もちろん洋式正装。おまけに母語使用は厳禁され、一日中、英語で生活させられる。保育園から始める私学もあるから、オーストラリアで厳しく批判された、アボリジニの子供を親から引き離し、白人英語文化で育て、「文明人」にする手法と同じだ。愚劣きわまりない。

こうした金儲け主義私学の生徒は、資本主義と英語帝国主義の奴隷にされた、かわいそうな子供たちだ。彼らには、自由も自律もない。根本的なところで、母語や自文化を軽蔑、放棄させられているからだ。

民族アイデンティティ主義者は、民族別連邦制などとくだらないことをいう前に、率先して自分の子供をこの種の私学に通わせることをやめるべきだ。自分の子供を母語と自文化の中で育てる努力を始めるなら、多少は言行一致、西洋迎合の表向きの主張にもある程度の説得力が得られるであろう。

子供を私学に通わせ、英語文化漬けにし、洋行をねらう「文明人」に比べ、ブンガマティの上半身裸で屈託無く昼寝や籾干しをしている女性たちは、はるかに自然で自由だ。彼女らを見て、ゆめゆめ「未開」だの「野蛮」だの「不道徳」などと、誤解してはならない。不自由で不道徳なのは、拘束着を着ている西洋人や、それ以上に、西洋人の目を持たされてしまった卑屈な日本人自身なのだから。

 
 ■ザルとトウモロコシ-B/籾干し(6)-B

6.文明化しない犬
ブンガマティは、よい村だが、その分、犬も文明化していない。表通りを外れ、少し裏道に入ろうとすると、犬がうなり声を上げ、よそ者「文明人」を威嚇してくる。犬は、感情に素直であり、自然が命じるままに、自分たちの文化にとって危険な堕落した「文明人」を排除しようとするのだ。

これは恐ろしい。犬は本気だ。こういう場合、かつて西洋人は軍隊を派遣し撃ち殺したが、私は平和主義者、犬の守る彼らの聖域には立ち入らないことにした。

というわけで、犬たちに追い返され、やむなくブンガマティ周辺の立ち入った散策はあきらめ、コカナに引き返した。

 
 ■窓と花-K/寺院の鐘と籾干し

7.バイセパティ
コカナからは、バス道をパタンに向けて歩いた。車やバイクが多く、面白い道ではない。パタンまで半分くらいきたところのバイセパティであきらめ、タクシーでキルティプールに戻った。

 ■民家(?)とヒマラヤ(バニヤガオン付近)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/24 @ 13:36