ネパール評論

ネパール研究会

信号機、ほぼ全滅(4):カランキ交差点(付:タタの威厳)

11月25日、キルティプールの西の対岸の新興住宅を見たあと、バルクー川沿いを歩いてカランキ交差点の見学に行った。

カランキ交差点は、幹線道路の大きな交差点。一方のリングロードは、ネパール基準で片道3~4車線、他方のカトマンズ市内カリマティ方面とタンコット・ポカラ方面とを結ぶ道路が片側2~3車線。日本援助のシンズリ道路が完成し、通行量が減ったとはいえ、主要道路の大交差点であることに変わりはない。

この交差点にも、どこかの援助(日本?)で信号機が設置されていた。当然だろう。ところが、行ってみると、信号機は跡形もなく消えている。そして、その代わり、歩行者用陸橋と陸橋の橋脚を利用したロータリーが設置されていた。いたく感動し、2時間あまり、観察していた。

ロータリーには、交通警官が一人いて、交通整理をしている。しかし、ここを通過するトラック、バス、乗用車、タクシー、耕耘機、バイク、犬(牛は道端で寝ころんでいた)はすべて、基本的には、相互の動きを見ながら自主的に判断し通行しているのだ。見事というほかない。

この交差点の設計・施工は、絶対、日本ではない。日本はこんな交差点は絶対に造らない。杓子定規というか、どうしても日本基準に合わせてしまう。かつて長崎の離島に行って感動したことがある。狭い島で、港の反対側の海岸沿いは車はあまり通らず、歩行者もほとんどいないのに、なんと、両側にガードレール付きの立派な歩道が造られていた。タヌキ用歩道? これが日本式だ。

カランキ交差点は、明らかにネパール交通文化にあわせて設計され、建設されている。だから、ちゃんと機能しているのだ。

そのかわり、造りは、きわめてチャチだ。いつ壊れても、いつ壊してもよいようにつくられている。歩道橋の上は薄い鉄板敷きでガタガタだし、コンクリート部分もせんべいのように薄い。手抜きは見え見えだ。そのくせ、歩道橋の下の空き空間は、寸分の余地なく商売用に利用されている。お見事! これがネパール式なのだ。

再び繰り返すが、いつかはわからないが、ネパールでもロータリーでは対応できないときがくる。信号機が設置され、警官がいなくても、信号(規則=法)に従い交通整理が行われるようになったとき、ネパール社会は大きく変わっているだろう。

 
 ■カランキ交差点北西側/交差点北東側

 
 ■タタをも恐れぬ歩行者/歩道橋と商店

 
 ■交差点横の子牛/消灯信号機と歩行者(バスターミナル前)

【付録】タタの威厳
ネパールでもっとも威厳のあるものの一つが、タタ・トラックだ。どんな悪路も平気。絶対に壊れず、壊れてもすぐ直せる(ように見える)。インドの威厳の象徴だ。たまに道路横の田んぼに仰向けになっているが、これは実に愛らしい。

タタや、その前を平気で横切る人や牛や犬を見るだけでも、ネパールに来る価値がある。タタ、万歳!

 
 ■タタの勇姿(1)/(2)

 
 ■タタの勇姿(3)/タタと張り合うスズキ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/28 @ 20:49