ネパール評論

ネパール研究会

チティパティに魅せられて(1)

ネパールに初めていった頃,何もかもが珍しかったが,それらの中でも最も深く魅せられたのが,チティパティ・タンカ(Cicipati Thangka)である。

仏教の知識は皆無に近く,チティパティについても詳しくは何も知らない。ネット情報によれば,チベットのツャム(仮面舞踏)の祭りに登場する男女の骸骨が「墓場の主(lords of the cemetery)」たるチティパティ(屍陀林王)。

伝承によれば,この2人は深く瞑想修行していたため,賊に首を切られても気づかなかったという。チティパティは,このような深い瞑想,人生を果てなき死の舞踏と悟ること,あるいは完全な解脱,を意味するらしい。恐ろしい骸骨姿のため,盗人や悪霊からの守護といった現世利益も期待されているようだが,これはいわば方便であろう。

いずれにせよ,そうした宗教的な深遠なことは,私には分からない。しかし,何の予備知識もなかったが,曼荼羅屋さんでチティパテイ・タンカを見たとたん,深く魅せられ,どうしても欲しくなってしまった。言い値は,高僧が修行で描いたとかで,かなり高かったが,仏罰も顧みず散々値切り,それでも大枚をはたいて購入し,持ち帰った。

気が滅入ったとき,落ち込んだとき,このチティパティをみると,大いに癒やされ,心穏やかとなる。信心を超えた,深甚な真実の力に大きく包まれるからであろう。

130412

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/04/12 @ 19:36

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