ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

「美しい国」と「国益」,あるいは「ロマン」と「実益」

一昨日,愛国心に自己陶酔し,超国家主義に先祖返りすると,アメリカにも見放され,戦前のように世界で孤立し,再び破滅に向かって転落しかねないと警告したが,それが単なる杞憂ではないと感じさせるような本が出版されている。まだ手元になく読んではいないが,書評がいくつか出ているので,以下に紹介する。

●Thomas U. Berger, War, Guilt, and World Politics After World War II, Cambridge University Press, 2012.
130427

1.Foreign Affairs書評(May/June 2013 ,Twitter Apr26)
「ドイツは,最も残虐非道な国家行為を行ったが,自己のその負の過去を公的に徹底的に語ることにより,深い悔悟を幾度も公的に表明してきた。これに対し,日本は,自分を加害者でもあり被害者でもあると見ようとしてきた。」
(http://www.foreignaffairs.com/articles/139227/thomas-u-berger/war-guilt-and-world-politics-after-world-war-ii)

2.Time「著者Q&A:日本が今なお十分謝罪しないのはなぜか」(Dec11,2012)
「注意深い観察者であれば,よく知っていることだが,近隣諸国との日本の醜い領土争いは,実際には,漁場や石油,あるいはガス田や古来の歴史的要求をめぐるものではない。日本が固執するのは,第二次世界大戦や長期にわたるアジア植民地支配において,日本人は何も悪いことはしなかったということを,まだ――そう,まだ――認めるつもりはない,ということだ。

これは,近隣諸国がそう見ているということ。そして,これこそが,ちっぽけな小島をめぐる中国や韓国との争いを,いまにも衝突を招きかねない危険なものとしてしまった理由である。・・・・

本書において,著者は,日本が過去の過ちを認めていないと見られているのはなぜか,その理由を解明している。1945年まで続いた日本の半世紀に及ぶ戦争と植民地支配により,2千万人もの人々が死に,おびただしい人々が支配・抑圧されたのである。」
(http://nation.time.com/2012/12/11/why-japan-is-still-not-sorry-enough/)

著者のトマス・U・バーガー氏はボストン大学准教授であり,本書もきわもの時局本ではない。知日派と思われる著者が,このような本を書かねばならないような事態に,日本は立ち至っているのである。

3.先祖返り「ロマン」と実利的「国益」
現代がグローバル化時代であることは,誰もが認める常識。そのグローバル化時代に,近隣関係をぶち壊し,アメリカにも軽蔑され,世界社会での孤立を招くような愚行に,なぜ突き進むのか? 復古ナショナリストのお題目たる「国益」を害しているのは,いわゆる「平和ぼけ」の平和主義者ではなく,まさに彼ら,ロマンチックな懐古趣味ナショナリストらだ。

そもそも尖閣でドンパチやっても,日本に勝ち目はない。イザとなったら,アメリカは日本を切る。先祖返りはアメリカへの裏切りだし,ちっぽけな日本よりも巨大中国をとるのは当然だからだ。中国は,現実主義という点でアメリカと同類。日本のロマンは理解不能だが,同類の中国とは,現実主義的「実利」で「実務的」に理解し妥協しうる。

日本は,夢見るロマンチストであり,理解不能の神秘の国。それでも,霞を食って生きる覚悟があれば細々と生きられるかもしれないが,それはイヤ,俗臭ぷんぷん,贅沢三昧浪費生活を続けようとする。破綻必定。

ロマンチックな「美しい国」たらんと欲するなら,鎖国せよ。いやなら,世界社会の中で常識をわきまえて行動する「実務的」な国家となれ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/04/27 @ 13:19