ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

中印覇権競争とプラチャンダ外交(1)

統一共産党毛沢東派(マオイスト,UCPN-M)のプラチャンダ(プスパカマル・ダハール)議長が,立て続けに訪中(4月14~20日),訪印(4月27~30日)を断行した。二大国を両天秤にかける堂々たる練達外交。

もっとも,他方では,開発利権と選挙目当ての懇願行脚との酷評もあり,いちがいにその側面があることも否定はできないが,たとえそうだとしても,この時期に,国家元首待遇で招待されるのは,やはり大物だからであろう。

1.プラチャンダと中印の実利外交
プラチャンダは,中国では習近平主席,インドではマンモハン・シン首相と会談した。国家元首に準ずる扱いだ。

ところが,現在,プラチャンダは,UCPN-Mの議長ではあるが,公職としては「高レベル政治委員会(HLPC)」の委員(議長は回り持ち)の肩書きしかない。しかも,HLPCでは,「ダハール訪中の件は何も議論されなかった」し,ネパール外務省も何も知らされていなかった(People’s Review, Apr19)。

当然,批判は出る。たとえばUMLのMK.ネパールは,プラチャンダ訪中,訪印は国家を代表したものではなく,単なる私的な訪問,いやそれどころか身内同伴の個人的な旅行にすぎない,と非難した(Republica, May1)。

こうした非難に対し,プラチャンダは平然と,こう反論する。「私は,HLPC議長としてだけでなく,ネパール代表として招待された」(Republica, May1)。「私は,政党議長というよりは,国家代表として招待されたと思っている」(ekantipur)。

中国主席・インド首相と会談するのに,どのような資格なのかはっきりしない。これはスゴイことだ。一方では,議会も正式の内閣もないネパールの現状がいかにメチャクチャかが,これでよくわかる。ネパールは国家の体をなしていないのだ。

ところが他方では,これはプラチャンダの凄さの発現でもある。ネパールを代表するのはヤダブ大統領でもレグミ首相でもなく,プラチャンダであると自ら宣言し,中印両大国にそれを認めさせた。ネパールの事実上の(de facto)元首はプラチャンダであり,これを中印は追認したのだ。

逆に言えば,アジアで,いや世界で覇権を競い始めた中印にとって,ネパールはますます重要となり,国益の観点から,プラチャンダ招待が自国の利益になると計算されたのだ。プラチャンダの訪中・訪印は,プラチャンダ自身にとっても中印にとっても実利的利害計算に基づくものであった。

130507 ■中印覇権とネパール

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/05/07 @ 21:08

カテゴリー: インド, マオイスト, 外交, 中国

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