ネパール評論

ネパール研究会

ネット選挙運動規制の大いなる錯誤と危険性

インターネットやメールはド素人。スマホもラインも未経験。それでも,ネット選挙運動規制には苦笑を禁じえない。いや,それどころか,正直,恐怖さえ感じる。

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 ■総務省インターネット選挙運動HP

そもそもインターネットは,蜘蛛の巣の無法地帯。国境も大人・子供もあったものではない。NSAは覗き放題,企業は個人情報ただ取り大儲け。メールアドレス偽造など,小学生でもやっているという。そのインターネット世界を,総務省・選管は国内法で細々と規制するという。バカバカしい。

こんな時代錯誤の法規制で処罰されるのは,ネット選挙運動参加を試みる善意の市民だけ。もともと日本の選挙は,がんじがらめの「べからず選挙」。「改正公職選挙法」も同じこと。善意の市民の健全な常識では,なにが選挙違反になるのか,見当もつかない。恐ろしくて,選挙運動には関われない。

特にネット選挙運動は危険である。NSAが覗き見しているであろうし,企業は個々人の政治的意見を様々な個人データと関連づけ,記録保存し,いつでも顧客に提供できる態勢を整えているであろう。○○党支持者には白系スーツ,△△党シンパには赤かピンクのスーツ等々。

また,米英の足元にも及ばないであろうが,日本の各種「情報機関」も,国民個々人の政治的態度を知りうるのだから,こんなおいしい情報源をほおってはおくまい。自前で,あるいは企業に依頼し,市民のネット・メール選挙運動を監視し,記録保存しているにちがいない。

市民にとってネット選挙運動が危険なのは,第一に,何が違法なのかよく分からないこと,第二に,ネット世界に発信した情報は,そのまま,あるいは何者かに加工され,何者かに記録保存され,イザッというとき,動かぬ証拠として利用される恐れがあること。

たとえば,これが違法かどうかよく分からないが,選挙期間中の7月14日,The Times of India(ネット版)をみると,こんな選挙広告が出ていた。

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 ■辻泰弘候補の選挙広告(The Times of India, Jul.14)

おそらく記事連動あるいは検索連動広告であろう。検索語は「Arundhati Roy」。インドのマオイスト・シンパで,超過激派。記事は2002年3月7日付の「刑務所は思ったより悪くなかった」。ロイが,最高裁の法廷侮辱罪判決によりティハール刑務所に投獄された時のことを書いたものだ。

つまり,グーグルかどこかが,おそらく民主党の辻泰弘候補をインド過激派のアルンダティ・ロイと関連づけ,ここに表示したのだろう。(そうでなくても,ここにこう表示されれば,多かれ少なかれ,読者はロイとの関連づけと感じる。)これは何を意味するか? 辻候補にとって,それは選挙にどのような影響を及ぼしたのか?

あるいは,うっかりコピーし損ねたが,このページの下方には,あられもない半裸女性が出ていたが,ひょっとすると辻候補はこの半裸女性と関連づけられていたのかもしれない。もしそうだとすると,このインターネット選挙広告は,辻候補の選挙運動にとって,ロイとの関連づけ以上に大きな影響を及ぼした可能性がある。

おそらく民主党・辻泰弘候補は,自分のネット選挙広告がこのような使われ方をしていることは知らなかったであろう。

ことさように,インターネットもメールも,いいかげんであり,コントロール不能であり,危険なのだ。それを総務省・選管は,日本国内法で細々と規制するという。しかし,そんなことは不可能だ。

もちろん,立法者も総務省・選管も,それは十分承知の上だ。わかった上でこのような規制をするのは,おそらく,イザッというとき,権力にとって都合の悪い人物を,瞬時に見つけ出し,しょっ引くためであろう。ネットやメールをつかえば,データは半永久的に残る。権力にとって,こんな好都合な道具はあるまい。

ネットやメールは,いったん使用すれば,あとでそのデータが誰に,どう利用されるか,まったく分からない。ほとんどの人のほとんどのデータは見過ごされるが,イザッというとき,利用記録が命取りとなる危険性は誰にでもある。善良な市民は,ネット・メール選挙運動などには手を出さない方が,賢明であろう。

谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2013/07/23 @ 15:52

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