ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

京都の米軍基地(15):受け入れ10条件

1.条件付き受け入れ表明
京丹後市長は8月1日,米軍Xバンドレーダーの空自経ヶ岬分屯基地への配備計画につき京都府知事と協議し,「(受け入れ10)条件に政府がしっかり対応するなら,受け入れに必要な協力ができる」と約束した(京都新聞8月1日)。

市長は8月6日の市議会全員協議会においても,「受け入れを前提に条件を確認している」と述べ,「確認できなければ協力表明はできない」と明言した。さらに,「住民の命を守るのが行政であり,市民の安全,安心に影響があれば体を張って反対する」と勇ましい(毎日8月7日)。

府知事と市議会への説明後,8月7日に開催された地元住民説明会(宇川小学校)では,本音もチラリ。「安全安心が確保されるなら,必要な協力をするのが道理」(京都8月8日)。「日本の国民の一員として国防を考えねばならない」(毎日8月8日)。「日米安保条約が大切だと考えている」(同上)。

130814 ■豪華な京丹後市庁舎

2.受け入れ10条件
京丹後市長が京都府知事に示したXバンドレーダー受け入れのための10条件は,以下の通り。
 【1】(事件・事故,被害等対策)事件・事故防止努力と,被害への適切な措置
 【2】(上記に関する検証)電波強度の実測と無害の検証
 【3】(同上)騒音レベルの調査と,騒音対策
 【4】(同上)排水の環境影響調査と,必要な措置
 【5】(生活・産業影響への対策)民生安定,生活環境,産業振興,環境整備,住民福祉等への支援
 【6】(同上)水供給への万全の措置
 【7】(同上)米軍関係者の居住地選定の適切な手続
 【8】(同上)道路の拡幅と新設
 【9】(日米地位協定の見直し検討の要請)米軍関係者による事件・事故等が発生した際の刑事裁判手続きに関し,日米地位協定における米軍人・軍属に対する裁判権の行使に関する運用について住民不安の解消のため絶えざる改善に努めること。
 【10】(その他全般)これまでの国側回答の誠実な履行

3.「お願い」が条件
この受け入れ10条件の詳細は下記資料をご覧いただくこととして,その本質を一言でいえば,これらは「お願い(要請)」にすぎず,住民の安全・安心を保証するものではないということ。

道路・水道など一時的な補助事業の部分を除けば,肝心の安全・安心については,結局,「日米地位協定の見直し検討の要請」ということに尽きる。すなわち,「絶えざる改善に努めること」という,単なるお願いにすぎない。

この点に関し,一部メディアが,米軍基地受け入れは「日米地位協定の見直しが条件」と報道していた。初めこれを見てビックリ,さすが京の都には骨がある,と感動した。そして,京丹後市長も,この条件が確認されなければ,「協力は表明できない」,「体を張って反対する」と断言されていた。市長は,某方面からのテロなど恐れることなく,文字通り「体を張って反対する」決心をされたにちがいない。そう考え,市長の,源頼光に勝るとも劣らない勇気に心から惜しみなく拍手をしたものだ。

ところが,これまでの経過を考えると,これはどうも不自然だ。そこで,もう一度,各紙報道をよく見ると,日米地位協定の「見直し」ではなく,正確には「見直し検討の要請」であった。つまり,「見直し」でないことはおろか,「検討」ですらなく,単なる「検討の要請」にしかすぎない。

唖然とし,深く落胆。こんなものは,屁の突っ張りにもならない。

4.責任無能力の政府と米軍基地を守る警察
悲しいことに,日本政府の安全・安心の約束は,沖縄米軍基地や福島原発により,まったく信用ならないことが明らかとなった。とくに米軍基地については,米軍が軍事的必要により自由に使用するのであって,日本政府は,お願いはできても,事実上,規制はできない。オスプレイは、日本全国,たとえ高浜原発の上だろうが,京丹後市議会上空であろうが,自由に飛ぶ。いくら日本政府がお願い(要請)しても,聞きおくにすぎない。

さらに,京丹後市長は,安全・安心のための警官配備を要請し,府知事も丹後への警官増員を検討すると約束した。しかし,警察の警戒対象は主として住民であり,米兵ではないことを忘れてはならない。

基地内は治外法権,基地外でも「公務」免責。日本政府は手出しできない。警察は主として米軍基地とその要員を守るために増員される,という「不都合な真実」を見落としてはならない。

5.平和の放棄
米軍基地は,京丹後市長・京都府知事はおろか,日本政府にもコントロールはできない。ウソだと疑うなら,沖縄米軍基地の歴史を見よ。

はした金の補助事業に目がくらみ,そんな危険な米軍基地を受け入れたら,もはや丹後に平和はない。

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[参考資料1

米軍TPY-2レーダーの配備計画の受入に際する確認(条件)について(メモ)

                            

京丹後市

以下、政府として責任ある対応の確認を求める。

(事件・事故、被害等対策)
○ 米軍TPY-2レーダーの配備に伴い、あらゆる事件・事故の防止に総力をあげて取り組むとともに、仮にも事件・事故が発生した場合には、責任をもって適切な措置を講ずること。
 特に、万-にも決してあってはならない健康への影響又は環境被害(農畜産物及び漁業又は鳥類の飛来等を含む)等が発生した場合又はそのおそれが合理的に出てきた場合には、安全性が回復・確認されるまでの間の停波を含め責任をもって適切かつ確実な措置を講ずること。
(上記に関連する検証)
○ 海上における漁業従事者の不安に適切に対処するため、レーダー設置の前後に、レーダー配備地の前面周辺海域における電波強度を実測比較し、有意な電波影響のないことを検証すること。
○ 周辺地域への防音に適切に対処するため、レーダーの設置の前後に、周辺地域の騒音レベルの比較調査を行い、有意な影響のないよう万全な騒音対策を講ずること。
○ 海への排水(一日あたり50トン程度と見込)の環境への影響に対する不安に適切に対処するため、レーダー設置の前後で環境への影響調査を行い、必要な措置と検証を行うこと。
(生活・産業影響への対策)
○ 同レーダーの配備に伴い、農業、漁業、観光等地域の生業・産業はじめ日常の地域生活の維持に負の影響を直接・間接問わず来たすことのないよう、民生安定、生活環境(公用ヘリコプター運用、民生電波等への影響含む)、産業振興環境の整備、住民福祉等に対して万全な予防及び支援措置を講ずること。
○ 同レーダー配備に伴い大きく増加する水の使用に適切に対処するため、地域住民の生活維持に絶対に欠かせない水の供給環境について、地元区、地元自治体の意向を踏まえ万全な措置を講ずること。
○ 米軍関係者の施設・区域外における居住場所の選定にあたっては、地元区、地元自治体の意向を踏まえ、適切・丁寧な手続きを確保すること。
○ 予想される交通量の増加や、決してあってはならないが万一の事態への懸念に備えた迅速な住民避難・施設保全等のため、各種道路の拡幅・新設等必要不可欠な交通環境・アクセスの整備に対し真摯かつ万全に対応すること。
(日米地位協定の見直し検討の要請)
○ 米軍関係者による事件・事故等が発生した際の刑事裁判手続きに関し、日米地位協定における米軍人・軍属に対する裁判権の行使に関する運用について住民不安の解消のため絶えざる改善に努めること。
(その他全般)
○ 上記のほか、本年2月の候補地申し入れ以降、累次にわたる質問書をはじめ議員全員協議会、住民説明会においていただいた国側回答の内容について、誠意と責任をもって履行されること。

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参考資料2京丹後市議会議員全員協議会(8月6日)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/08/14 @ 21:07