ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for 10月 2013

法治「信号機」よりも人治「ロータリー」

午前,1時間ほど王宮博物館前・カンチパト付近を歩いてみた。まず気になるのが,例の信号機。

タメル入口(王宮博物館・アメリカンクラブ・旧文部省)交差点の信号機。旧来の格調高い英国風ロータリーを撤去し,日本援助で高性能信号機を設置した。

電気は来ている。午前11時頃で交通量も多い。が,見よ! 赤黄点滅で,車も歩行者も信号機など全く見ていない。法治(rule of law)の権化「信号機」は完全無視,交通警官の指示に従い,通行している。昨夜,交通警官がいないときは,ロータリー式完全「自治」通行が実践されていた。何の問題も無し。(再設置「ロータリー」は右外回りではないが,原理は,ロータリー式と同じ。)

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■タメル入口交差点 SAARC本部前より(赤点滅)/パスポート・センター前より(黄点滅)

もう一つ,王宮博物館前(交通警察署前)交差点では,電気は来ているはずなのに,完全消灯,警官が交通整理。交通警察自身が,署の前で自ら法治「信号機」無視のお手本を示している。お見事!

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 ■王宮博物館前交差点 完全消灯信号/背後は交通警察署 

私の「ロータリー文化論」には批判も多いが,この十数年の観察で,その妥当性がかなり実証されたように思う。

ネパール社会は,人治(人の支配)原理で動いている。そこに法治の制度や機械を外から持ち込んでも,うまくはいかない。今後どうなるか分からないが,少なくともいままでは,そうであったといってよいのではあるまいか。

[追加]点灯信号機発見(2013ー11-01)
ラトナ公園・バスパーク前の歩行者用信号機が点灯されていた! といっても,車も歩行者も警官の指示に従っていたが。
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夕方,バスパークからキルティプルまでバスで1時間半。道路は車の洪水。途中のスタジアム前,野菜市場前などの高性能信号機は,もちろん全滅。すべて,警官が手信号で整理していた。

エンジンを切って待っているバスの中から見ていると,警笛の鳴らしあいで強力そうな方が,先に通されていた。これぞ人治,加徳満都の道路は法学教育の場としても有益だ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/10/30 at 23:13

快適な広州空港と加徳満都

中国南方航空で加徳満都に来た。乗り継ぎは広州空港。

昨年秋は,尖閣をめぐる反日スローガンが掲げられ,空港職員は無愛想,共産国官僚主義の不便と不合理に満ちていた。

それが一変。空港ビルは近代的となり,便利で快適。係員もニコニコ,日本の空港以上に親切だ。(といっても,トイレは早々に壊れていたが,これはご愛敬。)

そして,なんと言っても秀逸なのが,カトマンズの中国語表記「加徳満都」。以前,「加徳満都」にいたく感動し,使用・拡散を試みたが,普及には至らず,あきらめた。

しかし,これはいかにも惜しい。ここはひとつ,中国と協力し加徳満都の普及をはかってみてはいかがか。尖閣で角突き合わせ,いがみ合っているより,はるかに生産的ではないか。

▼広州空港
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谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2013/10/30 at 04:14

カテゴリー: 文化, 旅行, 中国

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京都の米軍基地(23):特定秘密としてのXバンドレーダー

米軍Xバンドレーダーは,原発と同等,いや見方によれば原発以上に危険である。すでに「京都の米軍基地(13):「Xバンドレーダー体制」の危険性」において指摘したように,Xバンドレーダーは軍事機密の塊であり,特定秘密保護法が制定されれば,その出力など,つまりはXバンドレーダーに関することが「特定秘密」に指定されることは,まず間違いない。

特定秘密保護法(案)は,こう定めている。

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特定秘密保護法(案)
第二十二条 特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。
(2~5略)
第二十三条 人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為(・・・・)その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
(2~3略)
第二十四条 第二十二条第一項又は前条第一項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、五年以下の懲役に処する。
2 第二十二条第二項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、三年以下の懲役に処する。
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この特定秘密保護法の危険性については,すでに多くの批判がなされている。要するに,秘密は秘密であって,何が秘密かを示せば,秘密ではなくなってしまうということ。だから,国民は何が秘密か明確に知らされることなく,その秘密を理由として処罰される恐れがある。罪刑法定主義の原理的否定である。朝日新聞(10月26日夕刊)素粒子のいうとおりだ。
 「お前は秘密を漏らした。逮捕する」
 「何の秘密を」
 「それは秘密だ。私は知らぬ」。

特定秘密保護法が成立すれば,丹後は間違いなく「Xバンドレダー体制」になる。米軍関係者は,軍人・軍属160人,関係者全部を含めるとその何倍にもなる。当然,飲み屋で一緒になったり,友人になったり,あるいは結婚し家庭を持つかもしれない。そんなとき,ついうっかり,あるいは酔っぱらって,Xバンドレーダーの出力や使い方などを聞こうものなら,しょっ引かれ,取り調べられ,下手をすると懲役刑になるかもしれない。たとえ日本人妻であれ,義理の父母や隣人であれ,同じこと。恐ろしい。たとえ処罰までは行かなくても,警察に事情聴取されるかもしれないということだけでも,威嚇効果は十分だ。

それも,Xバンドレーダーの出力といった,いかにも秘密らしい「秘密」だけではない。たとえば,このレーダーは,大量の冷却用水を必要とする。となれば,地域の谷間の取水口付近も「特定秘密」とされるかもしれない。そんなこんなで,Xバンドレーダーと直接・間接に関係するあらゆる事が「特定秘密」とされる可能性がある。いや,たとえそうでなくても,何が秘密か分からないところでは,そう考えて行動したほうが安全だ。疑心暗鬼,住民にとっては「見ざる,聞かざる,言わざる」以外に,自分を守る手だてはなくなる。

Xバンドレーダー基地は,電磁波の健康被害,温排水の影響,軍人・軍属の交通事故や犯罪などよりも,実際には,それが軍事機密ないし「特定秘密」となるということの方が,住民全体の日常生活には,はるかに深甚な影響を及ぼす。Xバンドレーダーは,数千キロ先を常時監視するため,自分を隠す必要がある。見られないで見る。丹後は,見えない「秘密」に脅え,住民の自主規制,相互監視に向かう。「Xバンドレーダー体制」による住民監視社会の到来だ。

このような事態は,市議会審議においては,ほとんど考慮されてこなかった。いま,当初想定していなかった特定秘密保護法をめぐる新しい状況も生まれつつあるわけだから,市議会は改めてXバンドレーダー配備受け入れの是非を再審議すべきではないか? 「Xバンドレーダー体制」が成立すれば,もはや抵抗は出来なくなってしまうだろう。

【追加】(2014-1-16)
安倍政権は,2013年12月6日「特定秘密保護法」を成立させ,12月13日公布した。さらに2014年1月14日には,秘密指定基準を検討する「情報保全諮問会議(秘密法諮問会議)」の座長に,読売新聞社の渡辺恒雄会長・主筆を選任した。この人事をみても,この法律がどのように運用されるかは,明白といってよいであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/10/27 at 22:37

ダサイン休暇はハッカー天国?

ダサイン長期休暇は,ネットサイトのメンテナンスもおろそかになり,ハッカーにとってはサイト乗っ取り(ハッキング)の絶好のチャンスらしい。

ネパールでは,大手メディアですら,昨日紹介したネパールニューズコムのように,アドレス変更などでも事前通知しないことが少なくない。だから,多少変な画面が出てきても,あまり気にしなくなる。長期休暇に加え,こうした慣習も,ハッカーの狙い目なのだろう。

下の画面は,今朝のヒマラヤンタイムズ( http://www.thehimalayantimes.com/ 安全未確認!)。あれ!と思い,すぐ切断したので,画面全体や音声がどうなっているかは分からない。

ITど素人の私には,どのような危険があるのか,ウィルスが仕組まれているのか,皆目見当もつかない。恐ろしい。

ダサイン休暇明けのネパール・ネットメディアは要注意だ。

▼ヒマラヤンタイムズ10月25日朝の画面
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26日朝,こわごわアクセス。正常画面に回復していました(10月26日追加)。
27日朝,また乗っ取られている。しばらく要注意!(10月27日追加)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/10/25 at 11:31

ネパールニューズコムと日本の公告

マーカンタイルのネパールニューズコムHPが刷新された。いつものようにアドレス変更通知はなく,アクセスできなくなったのでダサイン休暇かなと思っていたら,別の少し変えたアドレスで新画面が見られるようになっていた。不親切だが,これがネパール流。

新画面は,今風になったが,最も目立つのは,アクセス元連動広告が効率的に表示されるようになったこと。日本でネットを使用したら,その履歴に対応した日本向け公告がネパールニューズコムの画面に表示される。これは他のネパール・メディアもやっているが,ここで勘ぐりたくなるのが,広告料。広告表示するのだから,当然,マーカンタイルにも広告料が入るはずだ。いったい,どのくらいの額なのだろう。

ほんの数年前までであれば想像もつかないようなビジネスが,グローバル化の進展によりネパールでも可能となった。ネット世界では,もはやネパールにもほとんどハンディはない。激変といってよい。

▼刷新されたネパールニューズコムの画面
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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/10/24 at 17:33

カテゴリー: 経済, 情報 IT, 文化

ネパールフェスティバル:会場風景

ネパールフェスティバル(10月20日)に行ってきた。関西テレビの豪華会場で午前11時~午後7時開催の大行事。

音楽,舞踏,屋台など様々な催しがあったが,なかでも最後のプログラム「森本さやかアナウンサー(フジTV)によるネパール取材報告」は,プロによる取材だけに映像,説明とも,たいへん分かりやすかった。

ネパールは多様であり,理解がなかなか難しい。「ネパールは・・・・」とか「ネパール人は・・・・」などといってみても,どのネパールの,どのネパール人なのか分からず,ほとんど意味をなさない。そうした多様なネパールへの理解を深める上で,こうした催しは有意義といってよいであろう。

[参照]ネパールフェスティバルとチャリティ: 関西テレビ

▼会場風景(10月20日)
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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/10/21 at 16:18

カテゴリー: 文化

ギャネンドラ元国王もティカで祝福

10月14日,ギャネンドラ元国王は,例年通り,ナラヤンヒティ元王宮内のマヘンドラ・マンジールを訪れ,ラトナ・ラジャ・ラクシミ・デビ・シャハ元皇太后から祝福のティカ(टीका)を受けた。そのあと,「王室僧侶(राजगुरु)」からもティカを受けた。

元国王は,午後3時からは,マハラジガンジのニルマル・ニワス(元国王邸)において,一般人民数千人にティカを与えた。形式的には,王制時代とほとんど変わらない。

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■ニルマル・ニワス(USNepalOnline, Apr.20, 2008)

一方,ヤダブ大統領も,大統領公邸(राष्ट्रपति भवन)において,ハヌマンドカ・ダサイン・ガールなどのパンデット(पण्डित)からティカの祝福を受けた後,ジャー副大統領,レグミ暫定首相,政府高官,メディア関係者,そして一般人民にティカを与えた。こちらも,形の上では王制時代の国王とよく似ている。

ここで興味深いのは,世俗国家の大統領が,大統領公邸で,おそらく「公式行事」として,ヒンドゥー教儀式を行っていること。

131017c ■シタル・ニワス(大統領公邸,大統領府HP)

しかし,大統領には,元国王のような「威厳」はない。動画を見るとよく分かるが,元国王からティカを受ける人びとは敬虔そのもの,まるで現人神を前にしているようだ。これに対し,大統領の前では現世利益が隠しきれず,そのような敬虔さはほとんど見られない。

宗教が絡むとどこの国でもややこしいが,ネパールは国制の転換期ということもあって,何がどうなっているのやら,さっぱり分からない。

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 ■ティカで祝福する元国王と大統領(www.videosbisauni.com/ Oct.14)

谷川昌幸©

Written by Tanigawa

2013/10/17 at 21:40