ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for 3月 2013

囲い込まれた自然と文化:宝塚

宝塚に転居して一年,近隣の目もくらむ自然格差・文化格差に愕然たる思いだ。

宝塚は神戸・六甲山系の東山麓。かつては美しい里山・田園地帯であったのだろうが,容赦ない宅地開発で,いまや醜怪な現代都市に変貌している。

以前の比較的余裕のあった邸宅が相続で売却されると,跡地は分割され,3~4軒のマッチ箱住宅が建つ。あるいは,わがアパートのような,貧相な墓石型集合住宅となる。

このような新興住宅住民には,豊かな自然や文化は無縁だ。働き,食い,寝るだけ。貴族主義者のハンナ・アーレントは,「労働」を必然と消費に隷従する最下級の人間行為と喝破したが,私のような庶民アパート住民には,反論のしようもない。

かつて高度成長以前の日本社会では,そうではなかった。人々の多くは貧しかったが,下町でも農村でも時間はあふれ,様々な趣味や遊び,つまり多様な文化が栄えていた。美しい自然と多様な文化は,日本を訪れた外国人を痛く感動させた,日本古来の伝統であった。

いまの宝塚には,もはやそのような自然や文化はない。雑然とした必要と消費のための街に成り下がってしまった。

例外があるとすれば,それは金網と鉄格子で囲い込まれた広大なゴルフ場だけ。そこは別天地。花々が咲き乱れ,小鳥がさえずる美しい自然の中で,時間はゆったり流れ,優雅なゴルフ文化が享受されている。

現代資本主義は,富だけでなく,自然と文化をも囲い込む。現代型エンクロージャー! 貧しくとも,自然と時間と文化を享受できた頃の方が,庶民は幸福であったのではないだろうか。

130331a
■切れ切れながらも,わずかに残る里道の桜並木。先人の風流が忍ばれる。金網の向こうはゴルフ場。

130331d ■現代の囲い込み:ゴルフ場

130331b ■貧乏人立ち入り禁止

130331c ■貧乏人のひがみ根性

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/03/31 at 23:12

ネパールでのPKO訓練に日本も参加

駐ネ米大使館によれば,「ビレンドラ平和活動訓練センター(BPOTC)」で3月25日~4月7日開催の「Shanti Prayas-2(平和活動-2)」訓練に,日本も参加している。日本側情報を探したが見当たらず,参加自衛隊員のランクや人数は不明。

130330a ■Shanti Prayasシンボルマーク(BPOTC)

訓練は,米太平洋軍が主導,ネパール国軍が協力し,行われているようだ。参加総数871人(内ネパール416人)。インド軍も参加している。訓練には幹部スタッフ訓練と野外演習があり,日本は双方に参加。

BPOTCは,カトマンズの東方,パンチカルの高原(標高942m)にある。1986年設立。PKO派遣要員を年8000人以上訓練している。この付近は何回か通ったことがあるが,広大な美しい訓練基地であった。

130330b ■BPOTC(Google)

しかし,パンチカルはチベット(中国)国境のすぐ近く。敏感地帯にある。そこに米軍主導で,インド軍や日本軍(自衛隊)が,国連平和活動を名目に軍事訓練をする。中国メディアも「客観報道」をしているが,さて本心はどうだろうか?

130330c  ■野外訓練(BPOTC)

今回もそうだが,いまでは自衛隊員の海外派遣は日常茶飯事。ニュースにもならない。日本の軍事化は,着々と進んでいる。このまま行けば,憲法の「改正」,自衛隊の「国防軍」格上げも遠くはあるまい。

野口健氏も,かつて(2007/03/23)こう主張された。「今月末に自衛隊が停戦監視団としてネパール入りするが、武器を持たず大丈夫なのかと心配になる。せめて自身の安全を守る武器保有は認められるべきだと思うが。日本国内でも PKO や停戦監視団で現地に行く自衛官に対して「武装するべきではない」といった意見もあるが、「それならばあなた方が丸腰で行ってみろ」と言いたい。どれだけの恐怖か。」(http://www.noguchi-ken.com/M/2007/03/post-303.html)

【追加2013/04/01】
この訓練のスポンサーは,米国務省。大使館HPで盛んに宣伝している。イラク・アフガンで懲りて,PKOに宗旨替えしたのかな?

130401
 ■U.S. Pacific Command Deputy Commander Lt. Gen. Thomas L. Conant lays a wreath with Nepalese officers at Exercise Shanti Prayas-2 at the Birendra Peace Operations Training Center. (米大使館HP)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/03/30 at 23:20

カテゴリー: 平和, 憲法

Tagged with , , ,

祝,ホリエモン仮釈放!

ホリエモン(堀江貴文氏)が,3月27日,仮釈放となった。まずは,めでたい。仮釈放メッセージを見ると,獄中ダイエット成功で,スマートな「超健康体」になられていた。メッセージ内容も,驚くほど謙虚で健康的。本心かなぁ?

130327 ■ホリエモンTwitter

私は,ホリエモンを高く評価し,出所を心待ちにしていた。その筋の方々の出所も顔負けの,ド派手な「出所祝い」となるかと思っていたら,少なくとも今日のところは期待はずれ。しかし,ホリエモンは,こんなモンではないはずだ。脂ギラギラ不健康こそ,氏の魅力。きっと,出所でたちまちリバウンド,賭博バブル経済を手玉にとり,無節操マスコミをこづき回し,世間を楽しませてくれるにちがいない。ホリエモン出所,万歳!

【ホリエモン関連記事】
ホリエモンの自立自尊とメディアの追従卑小
ネパールとホリエモンに学ぶ恐慌時代の生き方
ホリエモンの高貴さ,政財界の卑俗さ
ホリエモン・バブル破裂とネパール的生活再説
ホリエモンの偉さとネパール的生活再々説

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/03/27 at 20:47

スルケットの性労働者,約300人

スルケット「社会意識向上センター」の調査によれば,スルケット郡内には性労働者(売春従事者)が約300人いる。失業と貧困が主な理由だという(Rising Nepal, Mar20, 2013) 。一方,カトマンズの性労働者は3万人ともいわれている。こうした都市部の近現代的「性産業」との関係は,どうなっているのだろう? 

スルケット郡総人口:350,804人(2011年)
性従事者:約300人
   出身:ほとんどがダリット
   女性:164人
   十代:154人
   18歳未満:4人

130326

Written by Tanigawa

2013/03/26 at 11:09

カテゴリー: 社会, 人権

Tagged with , ,

選管委員長と法務総裁と”Regmi Raj”

レグミ暫定内閣は,議会がなく,おまけに議長(首相)は,いわば出向中の最高裁長官だから,こわいものなし。その気になれば,何でもできる。24日には,二つの重要人事を,あっという間に決めた。

(1)選挙管理委員会人事
 ・委員長:Neel Kantha Uprety  前選管委員長代行
 ・委 員:Dolakh Bahadur Gurung 前選管委員
 ・委 員:Ayodhi Prasad Yadav  前選管委員
 ・委 員:Ila Sharma ジャーナリスト,UNDPコンサルタント     
 ・委 員:Rambhakta PB Thakur 前外務省儀典局長,元駐エジプト大使

この5人のうち,3人は前委員長・委員であり,暫定憲法の再任禁止規定(128条3&7)に抵触する恐れがあるが,出向最高裁長官が首相だから,そんなことは何の問題にもならない。スゥーと通してしまった。

130325
Neel Kantha Uprety, Chief Election Commissioner of Nepal
Mr. Neel Kantha Uprety, is the Chief Election Commissioner of Nepal. Mr. Uprety has immensely contributed in accomplishing the challenging task of conducting Constituent Assembly Election in the post conflict environment of Nepal in the year 2008. Neel has been in the electoral field for the last 18 years and has been involved in implementing nine Parliamentary and Local elections in Nepal. For the implementation of Presidential, Parliamentary and Provincial Council Elections in Afghanistan, the United Nations had assigned Mr. Uprety to work as a Senior Election Coordinator in the year 2004 and 2005. Earlier he had worked as a Senior Electoral Advisor to the Election Commission of Nepal. He was the architect of voters’ registration system, which converted the conventional electoral roll preparation system into computer based integrated voters’ database system.(ICPS)

(2)法務総裁人事
法務総裁人事も同じこと。レグミ(Khil Raj Regmi)議長(首相)は,前法務副総裁Drona Raj Regmi氏を,法務総裁に任命した。親族である。

さらにレグミ議長(首相)は,DR.レグミ法務総裁の息子のSR.レグミ氏を首相官邸個人秘書に任命した。ヒマラヤンタイムズは,こう皮肉っている。

  Raj Regmi=Regmi Raj?
  (ラジ・レグミ=レグミ支配・体制・王国?)

コネ人事は日本でもどこでもあるが,特にネパールの「アフノマンチェ(身内優遇)」は有名。しかし,例外状況において国家危機管理を委任された者が,アフノマンチェを疑われるようなことをやったら,おしまいだ。

(3)本物のプロフェッショナルを
ネパールで優先すべきは,やはり「近代化」であって「現代化」ではないのではないか。Beruf(天職)に奉仕するプロフェッショナルな本物のテクノクラート,本物のエリートなくして,ネパールの安定・発展は難しいであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/03/25 at 10:48

4大政党管理下の選挙管理内閣

レグミ暫定内閣議長が,3月18日,8大臣を追加指名し,組閣は完了した。内閣議長(首相)は最高裁長官,10大臣は全員が元官僚。政治家を完全に排除した,珍奇な政府である。

レグミ議長は,これからこの暫定内閣を率い,行政一般に加え,選管委員長をはじめとする主要機関人事,暫定憲法の選挙関連条文改正などの重要な任務を遂行していくことになる。

この暫定内閣は,形式的には「テクノクラート支配」,実質的には4大政党による「4党独裁」である。4党が牛耳る「高レベル政治委員会」の議長は,マオイストのプラチャンダ議長。プラチャンダ議長がレグミ議長を操ることになりかねない。

いずれにせよ,ここにはもはや民主主義の残り香すらない。Big Four(4大政党)支配か,あるいは官僚が頑張ればテクノクラート支配となる。政治破綻寸前の国家危機管理内閣とはいえ,非民主的な談合政治となることは避けられないだろう。

●レグミ暫定選挙管理内閣名簿(2013年3月23日現在)

130323
 ■今度こそ,この美しい予定調和が実現するのだろうか? (選管HPより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/03/23 at 18:04

ミス・ネパール: コーラ帝国主義の完勝

ネパールのミス好きは,世界に冠たるもの。ミス,ミスだらけといってよいが,それらの中でも最も有名な,ミス中のミスは,おそらくTHT(The Hidden Treasure)主催の「ミスネパール」であろう。(ミスコンについては下欄タグ「ミスコン」クリック)

そのミスネパール最終審査が,この3月20日,権威ある「ネパール学芸会館」において華々しく開催され,美事,イシャニ・シュレスタさんが「2013年度ミスネパール」の栄冠を獲得された。もちろん,それにつづく「ミスネパール地球2013」も「ミスネパール国際」も,そして他の諸々の「ミス○○」も,みな文句なしに美しい。

130322 ■ミスネパール表彰式(THT-HPより)

今年のミスネパール・コンテストは,ファンタがメーン・スポンサー。コカコーラ社は,他にも「コカコーラ・フットボールカップ」など,多くのイベントを協賛している。大攻勢といってもよい。むろんコカコーラは営利目的の私企業であり宣伝活動をするのは当然だが,それにしても,最近は少々度が過ぎるのではないか。特に露骨な「女」の利用は,あまりにも品がない。

いまや,時代は激変した。マオイストは,かつて人民の友たりし頃,コーラを帝国主義の先兵とみなし,ネパール事業所を攻撃した。ところが,少し優勢になるとコーラ帝国主義批判は沙汰やみとなり,いまではコーラ片手にミスコンを観ていても,性搾取者とも帝国主義者とも非難される恐れはなくなった。マオイストも,コーラを飲んで,スカッと爽やかになったのだろうか?

「ファンタTHTミスネパール2013」は,コーラ帝国主義完勝の象徴といってもよいだろう。

130322a ■ファンタに飲まれる3美女(THT-HPより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/03/22 at 14:10