ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

必見! 放医研啓発ビデオ

放射線医学総合研究所(放医研)の啓発ビデオを観た。スゴイ! 全国民,いや全世界人民必見の傑作だ。
 ▼放射線の知識と教養
  放射線の知識と教養 一般向け(6分01秒)
  ぼくはほうしゃせん 児童向け(字幕なし)(2分51秒)
  ぼくはほうしゃせん 児童向け(字幕付き)(2分51秒)

朝日新聞「放医研の啓発ビデオ,内容スカスカ 2890万円返還」(2013年10月23日)によれば,放医研は1時間番組を業者に発注したが納入作品は12分。これを会計検査院に指摘され,放医研は2890万円を文科省に返金したという。もし会計検査院の指摘がなければ,「内容スカスカ」啓発ビデオで血税丸損となっていたであろう。業者丸儲けの方がどうなったかは,不明。

1.産総研「事故防止動画」批判
このトンデモ啓発ビデオのことを知ったのは,実は,今日の日経新聞(ネット版)記事によってである。
 ▼鶴野充茂「100本作って反応なし! お粗末 「子ども事故防止」サイト」日経ビジネス2014年1月10日

日経は,シビアな金儲けが専門だから,中立と良心の一般紙よりも分析が客観的で鋭いときが少なくない。この鶴野氏の記事もその一例。

記事によれば,産業技術総合研究所(産総研)が幼児事故防止動画100本を制作しネット公開したが,「あまりにもお粗末すぎて涙が出」たという。「1本目で唖然とし、2本目で落胆し、3本目でそれ以上見る意味を見いだせなくなったのです。」
 ▼キッズデザインの輪 
たしかに,これはヒドイ。あまりに出来が悪く,いかに子供が心配でも,観る気にはならない。

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 ■産総研動画 家庭内事故事例

2.放医研「啓発ビデオ」批判
そして,これを受け,もう一つの事例として鶴野氏が紹介しているのが,上述の朝日記事「放医研の啓発ビデオ」だ。

「国内のIT現場ははるかに進んでいるのに、啓発する側の意識が遅れすぎていて、まったく活かせていない。・・・・記事のタイトル(放医研の啓発ビデオ,内容スカスカ)も刺激的ですが、中身を見れば、さらに衝撃的です。/ 確かに内容はスカスカ。この動画1つをとって見てみても、動画で言っていることは、「放射線は昔から身の回りにある」「医療などにも使われている」くらいのことしかありません。6分も使った動画にする意味も価値もないのです。」

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 ■放医研ビデオ 一般向け/児童向け

3.日経リアリズム
要するに,放医研啓発ビデオは,あまりにもお粗末で毒にも薬にもならないということ,逆に言えば,国民啓発は多少危険でも薬効のあるものにせよ,ということだ。鶴野氏はこう主張されている。

「啓発で効果の期待できるものとは、興味のある人の理解を深めてもらうものではなくて、興味のない人にも興味を持ってもらい、さらに行動を促すことのできるものです。寝ている子も起こす力が必要なんです。」

これこそ,まさしく日経リアリズム。原発については,日経は反対ではあるまい。鶴野氏ご自身のお立場はよく分からないが,この文脈での発言から見る限り,おそらく原発についても反対ではあるまい。この文脈で「寝た子を起こす」ような魅力的な啓発を主張されるのは,国民を正しく啓蒙すれば,必ずや放射線について,ひいては原発推進への理解が得られるという趣旨であろう。(目的は何であれ,啓発の効果だけを問題にされている可能性もあるにはあるが。)

4.リアリストとの対決
反原発派にとって,最も手強い論敵は,日経のような本物の確信的リアリストである。反原発派は,このような論敵と真正面から対峙する一方,その論敵からすらも批判されている「放医研啓発ビデオ」のたぐいはツイッターやフェイスブックで広く拡散し,もって日本の政官財界の「文化レベル」「知的レベル」を世界に知らしめ,そのような国で原発多数を稼働させることの危険性を世界に訴えかけるべきであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/01/10 @ 18:18

カテゴリー: 情報 IT

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