ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

制憲議会選挙2013(30):制憲議会議員選挙令2070年

制憲議会選挙は,「制憲議会議員選挙令2070年」に則り実施された。先述のように,ネパールの現在の最高意思決定機関は,事実上,「高等政治委員会(HLPC)」なので,この選挙も,HLPCの監督の下に,レグミ選挙管理内閣が実施したといってもよいだろう。

1.「11項目合意」とHLPCの設置
旧議会の4大勢力,マオイスト,コングレス党,統一共産党,統一マデシ戦線は2013年3月13日,「11項目合意」を締結し,(1)選挙管理内閣の構成,権能,および任期,(2)高等政治委員会(HLPC)の構成と権能,(3)制憲議会の議員定数と任期,などを取り決めた。いずれも立法,行政,司法の根本に関わる規定であり,見方によれば,暫定憲法よりも上位の,事実上の暫定国家根本法といってもよいだろう。

この「合意」により,HLPCには「政府を支援する」広範な権限が付与され,制憲議会選挙もHLPCが指導する選挙管理内閣により実施されることになった。HLPCの初代委員長は旧制憲議会の最大政党であったマオイストのプラチャンダ議長(2013年3月16日より1か月)。

2.「11項目合意」における制憲議会選挙実施要領
「11項目合意」は,制憲議会選挙について,以下のように取り決めた。
(1)制憲議会選挙は,2013年6月21日までに実施する。もしそれまでに実施できない場合は,選挙実施を12月15日まで延期することができる。
(2)制憲議会議員定数:491(小選挙区制240,比例制240,内閣指名11)。議会は,すべての社会諸集団(女性,ダリット,被抑圧カースト/共同体,先住民族,後進集団,マデシ,農民,労働者)の比例代表となるようにする。
(3)制憲議会は,憲法制定完了まで,立法議会の権能を持つ。
(4)投票権は18歳以上のネパール国民。
(5)この合意に基づき,選挙管理委員会は,選挙を準備し実施する。

3.「制憲議会議員選挙令」の制定と改正
高等政治委員会(HLPC)の指導する選挙管理内閣の下で制憲議会選挙が実施されることが決まると,NK・ウプレティ選挙管理委員長は「制憲議会議員選挙令(案)」を作成し,政府に提出した。

この選管案は,基本的には「11項目合意」に沿ったものだが,それに加え(1)比例制においては得票率1%以下の政党には議席を配分しない,(2)立候補者の資産公開,の2項目も追加されていた。

このうち,比例制得票率1%以下切り捨ては,コングレスや統一共産党は賛成したが,他党は小政党軽視だとして激しく反発した。また,もう一つの立候補者の資産公開も,なぜか(?!)不評。

結局,3月の「11項目合意」で約束された6月選挙実施は不可能となり,政府は6月19日,上記2項目を削除した「制憲議会議員選挙令」を制定し,11月19日を選挙実施日と発表した。これに合わせて暫定憲法も改正された(改正後の法文未確認)。

しかし,その後もHLPCの指導するレグミ内閣の下での選挙への反発は強く,8月15日には連邦民主戦線(ウペンドラ・ヤダブ議長)の要求に譲歩し,HLPCは比例制(PR)議席を増員し335とすることを認めた。さらに9月6になると,HLPCは今度は連邦社会党(アショク・ライ議長)の要求に譲歩し,内閣指名を26に増員し,議席総定数を以前とまったく同じの601議席に戻すことにした。いずれも,マデシや他の少数派諸集団への譲歩。包摂参加が大義名分だが,交渉過程,特に議席配分については,まったくもって不透明といわざるをえない。

こうして9月17日,レグミ選管内閣は,HLPCの決定に基づき,暫定憲法と「制憲議会議員選挙令」を改正し,11月19日に選挙を実施することを正式に決定したのである(改正後のいずれの法文も未確認)。

4.制憲議会議員選挙令2070年
制憲議会選挙は,この議員定数601に戻した「暫定憲法」と「制憲議会議員選挙令2070年」に則り実施されたはずだが,いずれも日本ではまだ入手困難である。憲法も含め,あまりにも改変が頻繁なため,最高裁や選管,あるいは弁護士会なども,最新の法令のHP掲載が間に合わないらしい。

そこで,以下では,選管と弁護士会が掲載している6月19日制定の「制憲議会議員選挙令2070年」を使用し,その規定の特質をみていくことにする。9月17日の改正は,議員定数の変更だけと思われるので,他の部分については,改正前のものを使用しても問題はないであろう。(もし定数以外の変更があれば,後日,訂正する。)

●संबिधन सभा सदस्य निर्वाचन अध्यादेश, २०७० (Election Commission HP)
●Ordinance on Election of Members of Constituent Assembly 2070 (Nepal Law Society, June 25, 2013)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/01/15 @ 23:05

カテゴリー: 選挙, 憲法, 民主主義

Tagged with , ,