ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for 2月 2014

NC=UML連立内閣成立

スシル・コイララ首相が2月25日,新たに18大臣を任命し,内閣の大枠を固めた。
 ▼コングレス党(NC):10名(コイララ派6,デウバ派4)
         首相=スシル・コイララ,副首相=PM・シン
 ▼統一共産党(CPN-UML):10名(オーリ派5,カナル派3,ゴータム派1)
         副首相兼内相=BD・ゴータム  *入閣10名のうち非議員6

第3党のマオイスト(UCPN-M)は,いまのところ入閣せず,野党を選択。今後,国民民主党(RPP),共産党ML派などが入閣するかもしれないが,事実上,コイララ内閣はNC=UML連立といってよいだろう。

この体制で1年以内に新憲法が制定できるか? それは,マオイストとマデシの出方にかかっている。プラチャンダのUCPN-MとバイダのCPN-Mが再統合し,マデシとも連携し,反政府闘争を強化していくと,新憲法の制定は難しくなる。一方,暫定憲法体制7年間で,情勢は大きく変化しており,もはや以前のような実力闘争の再開もまた難しいであろう。いまのところ,いずれ向かうか,まだはっきりしない。

140226a140226b

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/02/26 at 13:49

京都の米軍基地(32):捨て石としての沖縄・グアム・京丹後

京丹後・経ヶ岬へのXバンドレーダー配備が,米軍再編,特に沖縄海兵隊グアム移転と連動していることはいうまでもない。京丹後は,米国の対中「封じ込め」監視戦略の中にガッチリ組み込まれてしまった。

中山市長が,いくらお得意のお念仏,日本「国益」を唱えようが,米国はそんなものは馬耳東風,蚊の鳴声ですらない。丹後の命運は,米軍基地受け入れにより米国の手中に落ちてしまったのだ。

1.中国・北朝鮮監視のためのXバンドレーダー網
米国は,中国・北朝鮮監視のため,東南アジアにXバンドレーダー網を構築する。ウォールストリートジャーナル(2012年8月23日)によると,Xバンドレーダー設置は,車力(既設),京丹後(建設中),そしてフィリピンの予定。きれいにな中国監視網だ。

こうした戦略に基づき,2012年9月17日には,パネッタ国防長官が訪日し,日本側とXバンドレーダー配備について協議した。設置目的は,抵抗の少ない北朝鮮ミサイルからの防衛とされた。

2013年2月には安倍首相が訪米し,日米首脳会談(22日)において重要な合意を交わした。
 ・オバマ大統領の訪日
 ・集団的自衛権の検討
 ・ガイドラインの見直し
 ・米軍再編促進と沖縄負担の軽減
 ・宇宙・サーバー分野での協力
 ・Xバンドレーダーの配備
 「両首脳は,北朝鮮の核・ミサイル活動も踏まえ,弾道ミサイル防衛協力を進め,米軍のTPY-2レーダーを我が国に追加配備する方針で一致した。」(日米首脳会談(概要)

京都の米軍基地は,安倍訪米の手土産の一つだったのだ。以下,事態は次のように展開する。
▼2013年3月4日:ヘーゲル国防長官が,北朝鮮の脅威に対抗するため,グアムに最新鋭迎撃ミサイルシステムを配備すると発表。
▼2013年3月21日:朝鮮人民軍最高司令部,グアム米軍基地は北朝鮮の「精密照準爆撃の射程内にある」と発表(CNN)。
▼2013年12月19日:米上院,在沖海兵隊グアム移転費8600万ドル,Xバンドレーダー京丹後設置費1500万ドル可決。ちなみに,海兵隊グアム移転総経費86億ドル,そのうち日本負担28億ドル。

このように,Xバンドレーダーの京丹後配備は,大きくは米軍の対中戦略の一環であり,より直接的には在沖海兵隊移転先グアム基地の北朝鮮ミサイルからの防衛が主目的である。

以前にも述べたように,当初日本側は,Xバンドレーダーの対馬か佐賀県内への設置を希望した。しかし,これでは位置的にグアム・ハワイ防衛には適さないので,米側は能登半島か丹後半島を要求した。AFPはじめ多くの通信社が,米政府筋の情報として,「Xバンドレーダー配備地は,グアムやハワイに向かう北朝鮮ミサイルは日本の西部または中部を飛ぶと想定されるので,そこ(京丹後)が選定された」と伝えている。京丹後・経ヶ岬のXバンドレーダーは,グアム・ハワイ米軍基地の防衛を,当面の主目的としている。

これは,米軍にとっては,最も合理的な選択だ。在沖海兵隊が移動し,ますます重要性を増すグアム基地。もし仮に北朝鮮がグアム基地攻撃を試みるなら,真っ先に経ヶ岬Xバンドレーダー基地を攻撃する。この攻撃情報は瞬時にグアム基地に届くであろうから,米軍には迎撃のための幾ばくかの時間的余裕ができる。いかにも米国らしい冷徹な合理的計算。京丹後は米国の弾よけ,捨て石。日本「国益」のためですらない。「米国益」のための滅私奉公なのだ。

というわけで,沖縄海兵隊の移転先(沖縄負担の押しつけ先)にして京丹後の滅私奉公先たるグアム米軍基地を見に行ってきた。

140225a■グアム移転概要(2012年4月「2+2」共同発表)

140225b
 ■グアム基地(宜野湾市「グアム米軍基地視察報告」2007年8月13日)

2.軍事基地用「植民地」としてのグアム
グアムは近い。3時間余で着く。淡路島くらいの小さな島で,人口約17万人。チャモロ人37%,フィリピン系26%,他のアジア系11%,白人7%(2013年)。そのうち,約10%(1万7千人)が米軍関係者。

グアムは,政治的には,米国の「未編入領土(Unincorporated Territory)」。自治政府をもつが,米国大統領の選挙権も米国議会での議決権もない。「準州」などとも呼ばれるが,事実上,植民地である。

産業は,観光約7割,基地関係約3割。失業率12-13%。通貨は米ドル。物価は,地元住民向けスーパーでも非常に高い。公用語は英語とチャモロ語。

島の約1/3が米軍基地。特に平地は米軍が使用している。また,良港は海軍が使用。アメリカは土地収用の権利を持つ。沖縄と比べても,米軍基地負担ははるかに重い。

140225c■グアム紋章

3.自然破壊
グアムに着いて,まず驚いたのは,あまりにもすさまじい自然破壊。南太平洋の珊瑚礁に囲まれた小島であり,本来なら南海の美しい別天地のはずだ。ところが,めぼしい海岸や丘の上は,観光資本により乱開発され,見てくれだけの安普請ホテルや張りぼてリゾート施設が林立している。街中は,いかにもといった土産物店や飲食店ばかり。お人好し某国観光客からぼったくり,稼ぐだけ稼いだら,ハイさようなら,醜い廃虚を残して撤退するつもりだろう。

140225i■乱開発リゾート地(2014-1-30)

4.文化破壊
文化破壊もすさまじい。16世紀半ば,スペインが植民地とし,伝統的チャロモ文化を弾圧し,カトリック布教を強行した。19世紀末,米西戦争で勝利したアメリカがスペインに取って代わった。アメリカは,チャロモ語辞書を焚書にし,チャロモ語使用を処罰をもって禁止した。太平洋戦争が始まると,日本軍の侵略を受け,グアムは「大宮島」と改名され,米軍に奪還されるまで日本軍国支配下に置かれた。

文化は奥深いものであり,よそ者一見客には本当のところはすぐには分からないが,少なくとも見た限りでは,はっきりそれと分かる生活の場における伝統文化は見当たらなかった。

140225h■大砲と十字架(2014-1-29)

5.天皇制国家と横井さんの平凡の悲惨
グアムに行って次に衝撃を受けたのは,横井庄一さんの,あまりにも悲惨な地下壕潜伏生活。横井さんは戦死とされ,靖国神社に祀られたが,実際には,島南部の小川(タロホホ川)上流域に地下壕を掘り,1972年に発見されるまで28年間も隠れ住んでいた。

これが筆舌に尽くしがたいほど悲惨なのは,万事すべてが平凡であって,どこを見ても劇的・英雄的ではないこと。横井さんの地下壕付近は,遠望で見る限り,うっそうたるジャングルではない。小高い山や丘に灌木や草が生え,小川が流れているだけ。近くには村もある。ごくごくありふれた平凡な土地。

人跡未踏のジャングルなら,あるいは深山幽谷や絶海の孤島なら,それだけで劇的,英雄的たりうる。ところが,タロホホ川付近は,ごくありふれた土地。そんな平々凡々たる土地に,横井さんは28年間も地下壕で隠れ住んでいた。

お国のため,神国「国益」のために戦った兵士をこのような惨めな生活に追い込む天皇制国家,日本軍国主義のあまりの非情,残酷さ。横井さんは,平凡に徹したからこそ,28年間も隠れ住むことができた。その意味で,つまり平凡に徹しえたという意味で横井さんは非凡であったが,それは非人間的非凡を強いた日本軍国主義の免責にも,ましてやその顕彰にも利用されるべきでは,断じてない。

横井さんの地下壕生活それ自体は平凡であり,したがって観光資源になるはずもないが,なんと驚くなかれ横井さんの地下壕から少し離れたところのテーマパーク(タロホホの滝)に「横井洞穴(Yokoi Cave)」がつくられ,観光名所となっている。むろんニセモノだが,そのあまりの安易,軽薄に涙せざるをえなかった。

しかも,横井さんの28年間の隠れ家地下壕生活については,その非人間的平凡さへの強制をこそ直視すべきなのに,それをせず,国家のために戦い抜いた英雄としての利用があちこちに見られる。商売目的であれ政治目的であれ,そのような横井さんの利用は,彼の人間としての尊厳を根底から否定するものといわざるをえない。

140225g140225e140225f
 ■「横井洞穴」付近(Google)/「横井洞穴」/同左説明版(2014-1-30)

6.住民監視の米軍基地
そして,最後に,米軍基地の不気味さ。島内一周観光バスは,「横井洞穴」から北部の「南太平洋戦没慰霊記念公園」に向かう。

この「公園」近くは,広大な米軍基地だが,バスはむろん公道を走り,樹林帯の向こうの基地はまったく見えない。近くには巨大スーパーや様々な事業所もあり,多くの車が走っている。一見,ごく普通の街。その風景を見ながら,女性ガイドさんが恐ろしい体験を話してくれた。

もう何年も前のことだそうだが,ガイドさんがその付近を通ったとき,何気なく写真を撮ったら,米兵がすっ飛んできて,あっという間にカメラを取り上げられ,取り調べを受けたのだそうだ。ガイドさんによると,その付近には,信号機の横など,あちこちに監視カメラがあり,常時監視されているのだという。それを聞き,周辺を見回したが,「撮影禁止」とか「監視カメラ作動中」といった標識は,どこにも見当たらなかった。おそらく住民にとっては常識であり,自己規制が習い性となっているのだろう。

「見られないで見る」,これこそ監視の極意であり常道。巨大な基地の島グアムでは,常時監視されていると考えた方がよいだろう。グアム入管では,両手の指紋を入念に,徹底的に採取される。監視カメラと顔識別装置などにパスポート情報,指紋などを組み合わせれば,島内での人々の動きはすべて把握できる。スッポンポンで街を歩き回っているようなもの。

140225d■アンダーセン基地とリゾート地(左下)(Google)

7.京丹後も監視社会に
経ヶ岬に米軍基地ができたら,京丹後もグアムのような監視社会にされてしまうだろう。経ヶ岬は丹後半島の先端にある。ここに通ずる道路は,国道1本のみ。東と西の道路のどこかに監視カメラを設置すれば,通行人の監視は容易。監視カメラで撮影したナンバープレートや顔写真を,文字読み取り機や顔識別装置で分析し他の個人情報と自動照合すれば,その人物が何者か瞬時に識別できる。

むろん,よそ者(stranger)や要注意人物を割り出すには,付近住民すべての情報が必要だから,住民の個人情報は,ことごとく収集され,日々,更新されると考えるべきだろう。というよりもむしろ,そのような作業はすでに着手されていると覚悟すべきかもしれない。

8.「国益」呪文の危険性
グアムの米軍は,グアム住民を守るため,広大な土地や良港を占拠し駐留しているわけではない。軍事基地さえなければ,北朝鮮がグアムを攻撃目標にすることは絶対にない。これは自明の理。同様に,沖縄米軍が,沖縄の人々を守るために,沖縄に駐留しているわけでもない。これも自明の理。とすれば,当然,経ヶ岬に進駐する米軍が,京丹後の人々を守ることを目的としていないことも,自明の理。

中山市長の「国益」は,この自明の理を住民に見せないための呪文にすぎない。それは,イワシの頭と大差ない代物だが,いったんかかってしまうと,一巻の終わり。京丹後がはるか彼方のワシントンや東京の捨て石となり滅私奉公するのが,京丹後の当然の義務であり誇りである,と感じられるようになってしまう。

振り込め詐欺より悪質だ。「国益」の呪文には,いくら巧妙にはやし立てられようとも,いっさい耳を貸さないのが賢明だ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/02/25 at 21:03

中国は軍事援助,インドは鉄道建設

中印が,ネパールに対し,援助合戦を繰り広げている。

1.中国の軍事援助
2月21日,中国人民解放軍の王冠中(Wan Guanzhong)副総参謀長が,コイララ首相,SBJ・ラナ国軍総参謀長を訪問し,中ネ軍事協力の拡大で合意した。すでに援助が決まっていた国軍向け野戦病院2セット(8億2千万ルピー)は,まもなくカトマンズに到着する。今回,中国側は,来年度の軍事援助(国軍支援)として5億ルピーを提示した。
140222a ■王副総参謀長(military.people.com.cn)

2.インドの鉄道建設援助
一方,インドは2月21日,大使館が印ネ鉄道建設協力の進捗を発表した。発表によれば,インド大使館員と,ネパール建設交通省事務局長,Ircon International(印建設会社)代表とが会合を持ち,印ネ鉄道の建設促進について協議した。それによれば,
 (1)ジョグバニ-ビラトナガル
   進捗状況:インド側68%完成,ネパール側20%完成
 (2)ジェイナガル-バルディバス
   進捗状況:軌道敷,駅舎,鉄橋などの建設中。
今後,ネパール側が鉄道用地の取得を進め,これをIrcon Internationalに引き渡すよう努力することになった。

140222b ■Ircon International

140222c140222d
 ■ジョグバニ-ビラトナガル/ジェイナガル-バルディバス(Google)

中印二大国の援助合戦激化で,ネパール政治の舵取りは,これから先,ますます難しくなりそうだ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/02/22 at 20:15

カテゴリー: インド, 軍事, 中国

Tagged with , ,

制憲議会選挙2013(37):指名議席争奪

制憲議会議長と首相が選出されたので,いま最大の課題となっているのは,先述の大臣ポストの配分と,最後に残った内閣指名26議席の選考。

このうち26議席の配分方法は,外から見ていると,なにがなにやら,まったく分からない。新聞報道では,どうやら各党ボスのコネ選考らしく,その筋目当てに各種圧力団体が猛然と圧力をかけているそうだ。

大義名分は,もちろん包摂参加。1月初め時点での社会集団別議席配分は,次の通り(Republica, 4 Jan)。

          第一次制憲議会第二次制憲議会
女性・・・・・・・・・・・・ 197 / 172
障害者・・・・・・・・・・  3 /   0
性的少数派・・・・・・  1 /   0
ダリット・・・・・・・・・・   50 / 40
ジャナジャーティ・・  218 / 183

女性団体は,女性議員は前回は憲法規定通り1/3だったのに,今回は規定数に達していないとして,指名議席の半分(13)を女性とせよ,と要求している。

障害者団体や性的少数派は,議席ゼロとなったので,自分たちに優先的に議席を割当よ,と要求している。包摂参加は憲法原則なので,彼らの主張にはもっともな根拠があるわけだ。

このようなクォータ制(比例割当)は,諸集団の公平な政治・社会参加の推進には顕著な即効的効果を持つ。たとえば,女性議員33%は,おそらくアジアNo.1であり,日本など足下にも及ばない。性的少数派も,議会に代表を出したこともあって,「第三の性」を公認させ,次は「同性婚」の早急な法制化を要求している。

民主主義制度でも法制度でも,日本はアジアの先進国というのは,もはや何の根拠もない幻想にすぎない。21世紀の民主主義と人権の観点からは,日本はアジアの後進国である。

が,それは認めるとしても,クォータ制的包摂参加に別の問題があることもまた事実である。いうまでもなく,アイデンティティ政治の危険性であり,あるいは少数派の中の少数派の権利の問題などである。そもそも,「制憲議会選挙令」で認められている複数アイデンティティ(複数社会集団帰属)の問題は,今回の選挙において,いったいどのように扱われたのだろう? わけが分からない。

それはともかく,ネパール政治は,大いなる実験政治。そこから日本が学ぶべきことは,少なくない。もはや民主化支援・人権支援など,おこがましい。
140221c140221b
■「ミスター&ミス第三の性2010」/デモ行進(Blue Diamond Society

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/02/21 at 11:31

制憲議会,ネバン議長選出

制憲議会は2月18日,統一共産党(CPN-UML)議員のスバシ・チャンドラ・ネバン(सुवास चन्द्र नेम्बाङ्ग)を議長に選出した。第1次制憲議会でも議長であったので,間にSB・タパ暫定議長を挟むが,事実上,再選。

議長選では,NC=UML「7項目合意」で首相ポストの見返りとして議長ポストをUMLに約束したコングレス党(NC)が賛成し,他党は,批判しつつも対立候補は立てなかった。無投票当選。

これは,一見,NC=UML連立政権の成立のように見えるが,実際には,まだ何とも言えない。なぜなら,UMLは,NCが制憲議会議長だけでなく副首相と内務大臣もUMLに渡すと約束したとして,その実行を迫っているからだ。NCはそのような約束はなく,内相は絶対に渡さないといっており,どう決着するか,まだわからない。

ネバン議長は1953年生まれ。リンブー民族出身。弁護士。イラム2区選出UML議員。代議院議員,代議院議長,第1次制憲議会議長など歴任。

140219
 ■超巨大議会(CA-HP)。陣笠にはオペラグラス必須。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/02/19 at 15:10

カテゴリー: 選挙, 議会, 憲法

Tagged with , ,

因襲の衣服とミスコン

ネパールは,いまやジェンダー解放超先進国,日本など足下にも及ばない。ミスコンでは女性が,政治では「第三の性」が,はばかることなく自由と権利を謳歌している。

1.ミスネパール2014
ネパールは,これまで幾度か紹介してきたように,ミスコン大国。今年も,にぎにぎしく「ミスネパール2014」が開催される。わがホンダも,ベスト・ポジションに広告を出している。主要スポンサーの一つだろう。

140218

2.因襲の衣服とミスコン
ミスコンでは,多かれ少なかれ,衣服を脱ぐ。ミスネパールも例外ではなく,ネットにはミスネパールの裸同然のビキニ姿があふれている。たとえミスコン本番ではそれほど露骨ではなくても,選ばれた「ミス」には裸が期待され,その期待に多くの「ミス」がこたえているのだろう。

衣服は,たしかに因襲的拘束の象徴であり,それを脱ぎ捨て自然に帰るのは,女の解放である。原始,女は裸であった。古くさい因襲は,そこにはない。

3.脱がせるミスコン
しかし,どうも胡散臭い。ミスコンの目的は,建前としては,たとえば「諸々の因襲から女性を解放し,若い女性の潜在能力を引き出し,彼女らの未来を切り開くこと」とされている(The Hidden Treasure 会長挨拶)。

たしかに,十重二十重に着せられた因襲の衣服を脱ぐのだから,ミスコンは女の解放にはちがいないが,もし「脱ぐ」のではなく「脱がせる」のであれば,どこかいやらしく,ヒワイだ。

4.女性搾取の近代化
ミスコンは,いかに建前がご立派でも,ヒワイを隠しきれないのは,それが女性搾取の近代化に他ならないからだ。女性搾取の手段が経済外強制から経済的強制に替わっただけ。ミスコンで女の品定めをしているのは,結局,男たちである。女の「美しさ」は,経済的強者たる勝ち組男たちのもつ女性評価基準にすぎない。

5.ミスコンの「不都合な真実」
このミスコンの「不都合な真実」は,ネパールでは,初期マオイストが,はっきり見抜いていた。だから彼らは,女性解放のためミスコン粉砕を叫び,ミスコンを開かせなかった。初期マオイストは,純粋であった。

ところが,いまでは伝統社会の側も「革命」の側も,ミスコン反対の声をあげようとはしない。ネパールは,いまやミスコン天国。因襲の衣服が厚ければ厚いほど,男にとっては,脱がせがいがあろうというものだ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/02/18 at 17:23

京都の米軍基地(31):MBS「見えない基地」再放送を

毎日放送(MBS)「見えない基地~京丹後・米軍レーダー計画を追う」(2014年1月19日放送)を録画で見た。関係者や地域社会への細心の配慮をしつつも,問題の本質に多角的観点から肉迫していく。本格的ドキュメンタリーの傑作といってよいだろう。

番組の制作意図と概略は,MBSホームページ「取材ディレクターより」に簡潔に述べられているので,ご覧いただきたい。なお,MBSにはラジオ番組「どこへ行く自衛隊」(2013-11-10)もある。

140216 140213d
 ■MBS「見えない基地」/MBS「どこへ行く自衛隊」

1.地域分断
このドキュメンタリは,それ自体,決して難解なものではないが,扱われている主題は,複雑で重苦しく,難しい。

過疎の村,京丹後市宇川に,昨年早春,突然,米軍Xバンドレーダー基地建設が告げられる。そして,地元住民に対しては,説明らしい説明をせぬまま,一方的に,強引に基地建設計画が進められていく。

その過程で,衝撃的であったのは,やはり地域社会の分断である。原発とまったく同じ構造。権力による脅しや,カネによる直接的・間接的懐柔で,たちまち地域社会は分断され,隣近所はおろか家族ですらいがみ合い争う。過疎とはいえ,美しく平和であった地域社会が,猜疑と憎悪の底なし沼に引きずり込まれつつある。

もはや丹後は元へは戻れまい。表立っては怒るに怒れない忍従,救われようもない重苦しさと悲哀。

2.「国益」優先の市長
ところが,驚くべきことに,地元・京丹後市の中山市長は,当初から一貫して,地元住民ではなく,はるか海の向こうのアメリカや山の彼方の東京(政府・防衛省)に,目を向けてきた。いかにも総務庁-内閣府出身,上意下達の官僚主義的役人根性が抜けないらしい。

MBSは,むろん,この中山市長の卑屈な役人根性を見逃しはしない。番組では,中山市長が「住民益」「市民益」ではなく,「国益」を引き合いに出す場面を,いやらしいまでにリアルに描写している。

「国益」とは,要するに「お国のために」「滅私奉公」ということ。憲法第92条「地方自治の本旨」を無視し,地元の住民・市民ではなく国家権力の側に立つ中山市長! MBSは,そんな無様な,卑屈な場面を撮りたくはなかったにちがいない。しかし,そこはドキュメンタリーのMBS,心を鬼にし,涙を呑んで,カメラを回した。MBSの覚悟,プロ根性が偲ばれる迫真の画面からは,保身のため住民を売り渡した中山市長の虚勢とオドオドした内心が透けて見て取れる。

140216b ■MBS取材にこたえる中山市長

3.車力基地の実情
番組では,Xバンドレーダー基地ができたらどうなるかを見るため,つがる市の車力基地を取材している。この部分を見ると,防衛省や,その下請け・中山市長の説明がいかに無責任かが,よくわかる。

車力米軍基地は軍事機密,ピリピリした厳戒態勢下にある。こんなものに不用意に近づいたり写真でも撮ろうものなら,しょっ引かれたり,下手をするとテロリストかスパイとみなされ,射殺されるかもしれない。相手は「治外法権」の米軍。何をされるか分からない。

また,米軍関係者の犯罪や交通事故も少なくない。さらに,補助金漬けについては,余計なコメントはつけず,淡々と事実だけを描いているが,それだけにかえって,考えさせられ胸にこたえる。

4.「見えない基地」の再放送を
この番組「見えない基地」は,同局の「映像’14」シリーズの一つだ。「映像’14」は関西地域放送番組だが,レベルの高いドキュメンタリーで知られている。「見えない基地」も秀作。

しかし,残念なことに,この番組は日曜日の深夜(24:50~25:50)に放送された。見逃した人も少なくなかろう。実に,惜しい。何とかならないか。

手っ取り早いのは,録画番組をネットで公開するという手。たとえばーー
 ▼LunaticEclipseYokosu「見えない基地」YouTube
しかし,これは海賊版ではないか? もしそうだとすると,権利を守るための闘いが権利侵害を犯すことになってしまう。

やはり,一番望ましいのは,制作した毎日放送自身が,もう少し見やすい時間に再放送したり,ネットで公開することだ。有料でもよい。これほど優れたドキュメンタリーなら,料金を払ってもみたいと思う人も少なくないはず。ぜひ検討していただきたい。

5.特定秘密保護法の恐怖
蛇足ながら最後に一言,特定秘密保護法との関係について。周知のように,特定秘密保護法はすでに成立し,年内には施行される。

この特定秘密保護法が施行されると,おそらくMBS「見えない基地」のような番組は制作できないであろう。あるいは,それどころか,地元民や観光客がうっかり写真を撮っても,「おい,こら!」と,しょっ引かれる恐れがある。そんなことはない,と政府やその出先機関の市長は反論するかもしれないが,危ないと思わせるだけでも,威嚇効果は十分なのだ。

MBS「見えない基地」の描く車力米軍Xハンドレーダー基地。厳戒態勢にあり,触れば祟り必定の「タブー」そのものだ。そんな恐ろしいものが,車力とは異なり丹後では一般道路・住宅地・観光名所のすぐ側にできる。名所・穴文殊からだと,子供が石を投げても当たる距離だろう。

Xバンドレーダーについては,電磁波や騒音が主に問題にされてきたが,政府にとってはこれは想定内。議論がここに集中するのをみて,政府はほくそ笑んでいたにちがいない。

Xバンドレーダー基地の最大の危険性は,軍事機密,特定秘密にある。見せないで見るXバンドレーダー。ブラックホールのように,近づくものを片っ端から吸い取り破滅させる。そんなものが住宅地の目の前,観光名所のど真ん中にできる。

番組「見えない基地」の最初と最後は,経ヶ岬展望台からの分屯基地遠望であった。この展望台は,以前,私が分屯基地監視の名所として推薦したところだ。しかし,Xバンドレーダーが設置されたら,このような撮影はできなくなるだろう。たとえ,撮影禁止の立て札が立てられなくても,撮影には公安や警察やその他諸々の監視をつねに意識せざるをえない。何となく不気味だから自主規制,となるにちがいない。

あるいは,それどころか国道沿いの民家の庭先や二階からカメラを向けても,危ない。「軍事機密」「特定秘密」が写る可能性があるからだ。

こうして,京丹後は「Xバンドレーダー体制」に組み替えられていく。

140216a shariki tango ■米軍基地の位置関係:車力/経ヶ岬(京都民報

谷川昌幸(C)