ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

青蔵鉄道:シガツェ10月開通,ネパール延伸へ

1.新華社の報道
中国は青蔵鉄道の建設を進め,2006年7月,上海-ラサ間(1956km)を開通させた。さらにラサから先,シガツェまでの延伸が,この10月までに完成し,営業を開始するという(新華社3月6日)。

ラサ-シガツェ間は253km,高所で難工事であったはずなのに,2010年着工からわずか4年で完成,中国の強い意思と,圧倒的な底力を見せつけた。ラサ-シガツェ間の列車は120km/hで運行され,2時間で着く。

シガツェは,パンチェン・ラマが住むタシルンポ寺があり,チベット仏教の聖地の一つ。そこに青蔵鉄道が乗り入れる。新華社記事によれば,タシルンポ寺のあるラマ僧はこう語っている。「信心深いチベット人すべての願いは,ラサとシガツェの仏様に礼拝することだ。この鉄道は,その巡礼の旅を安全で快適なものにしてくれる。」

中国は,すでにラサ博物館に次ぐ規模の「シガツェ博物館」を開館(2010年6月)し,また「シガツェ平和空港」も開港(2010年10月)している。さらにそれらに加え,青蔵鉄道が10月までに完成する。新華社記事は,チベットの発展に寄与するとして,それらを高く評価している。

140307b ■A=ラサ,B=シガツェ,C=カトマンズ(Google)

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■上海-チベット鉄道/タシルンポ寺(中国チベット鉄道旅行HP)

2.インド・メディアの報道
この青蔵鉄道延伸は,インドでも主要メディアが大きく報道した。むろん,新華社とは対照的に,中国進出への警戒が記事の基調となっている。

「中国は,シッキムのインド国境近くのシガツェまでチベット鉄道路線を延伸したが,これは,兵員と武器を遠隔ヒマラヤ地域で容易に移動させる戦略的能力を,中国軍に与えることになるであろう。」(The Times of India, 6 Mar)

「中国新華社ニュースは,上海-チベット鉄道がチベット・シガツェのパンチェン・ラマの本拠に達することを,その政治的意義を力説しつつ,報道した。」(The Times of India, 6 Mar)

「中国は,チベットで交通インフラの拡充を進めてきたが,これは,中国軍の国境への移動を容易とし,北京を戦略的に有利にするものではないかという懸念が,インドでは高まっている。」(The Times of India, 6 Mar)

「鉄道延伸発表は,中国政府支援の第11代パンチェン・ラマたるギェンツェン・ノルブが全人代開会式に出席しているとき,行われた。・・・・ノルブの選出には疑義が出された。・・・・ダライ・ラマが承認し選出された[先代の]ゲンドゥン・チューキ・ニマは,選出後,行方不明となった。中国政府が拘束しているとみられている。」(The Hindu, 6 Mar)

「中国は,鉄道をシガツェからネパール国境まで延伸する予定。さらに中国側は,建設費を援助し鉄道をネパール国内にまで延伸しようと考えているが,これまでのところ,カトマンズ[ネパール政府]は,インドに配慮し,中国提案には慎重な態度をとっている。」(The Hindu, 6 Mar)

このようにインド側は中国の鉄路南下を警戒しているのだが,しかし,インド側はインド側で鉄路を南方からネパール国内に着々と伸ばしている。インドからすれば,それとこれは話が別らしい。というのも,インドはネパールを勢力圏内と考えており,そこへの中国の進出は侵出であり,インドの脅威に他ならないと感じているからである。
 ▼中国は軍事援助,インドは鉄道建設
 ▼青蔵鉄道のルンビニ延伸計画

3.ヤムイモは生き残れるか
ネパールは,建国以来,「二巨石間のヤムイモ(Yam between Two Boulders)」と呼ばれてきた。印中二大国に挟まれ,それを宿命として引き受け,生存を図らざるをえない。

一方におけるグローバル化と他方における中国超大国化。この地政学的激変の中,ネパールは二つの巨石に押しつぶされ,磨り潰されて吸収されてしまうことなく,一つの独立国家として生き残ることが出来るのであろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/03/07 @ 17:58