ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for 4月 2014

飛行機プレゼント,中国政府

さすが中国,太っ腹で,目の付け所がよい。ピカピカの新品飛行機を,ドォーンと2機,国営「ネパール航空(NAC)」にプレゼントした。プラモデルではない。本物の小型旅客機だ。

1機目は,「新舟60(MA60)」。西安飛機製,58席。4月27日午後,この「中国からのギフト(Ekantipur, 4 Apr)」が着陸すると,トリブバン空港はお祭り騒ぎ,ヒンドゥー教聖者が祝福し,ラッパが高らかに吹き鳴らされ,「新舟」は歓迎アーチ放水で迎えられたそうだ。もう1機の「ギフト」は,「運12e(Y12e)」。ハルビン飛機製,19席。年内には,贈呈される。

といっても,中国に下心がない訳ではない。2機はギフトだが,他の4機(新舟1機,運3機)は,長期低利ローンで売却する契約だ。これは,カナダなど先進諸国が使ってきた常套手段。それを,先進国に取って代わり,中国が使い始めたわけだ。

 140429 ■新華社記事(4月28日)より

このところ,中国の進出は空でもめざましい。

「新舟60」使用国:アフガニスタン,イエメン,インドネシア,ウクライナ,エリトリア,カメルーン,カンボジア,キルギスタン,コンゴ,ザンビア,ジンバブエ,スリランカ,タジキスタン,トンガ,ネパール,ボリビア,ラオス,ミャンマー,ペルー,フィリピン,ブルンジなど
「運12e」使用国:インドネシア,エリトリア,イラン,ウガンダ,カンボジア,キリバス,ケニア,コンゴ,コロンビア,ザンビア,シェイシェル,スリランカ,タンザニア,トンガ,ナンビア,ネパール,バヌアツ,パラグアイ,パキスタン,ペルー,フィジー,マレーシア,ミャンマー,モーリタニア,モンゴル,ラオスなど

ほとんどが途上国。「新舟60」は事故多発で安全性が問題にされているが,おそらく取引条件が先進国製よりも有利なのであろう。また「運12e」は軍用にも便利。そうしたこともあり,途上国で多く利用されているのではないかと思われる。

中国は,おそらく商売半分,政治半分で,途上国を中心に航空機を売り込んでいるのだろう。中国の軍拡はすさまじく,軍用機を先導とした技術革新も進んでいるはず。遠からず,米・欧州による空の寡占は中国航空機産業により突き崩され,日本の空にも中国製航空機が飛び交うことになるだろう。ヒノマル航空機の出番なしか。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/04/29 at 15:09

カテゴリー: 経済, 外交, 旅行, 中国

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京都の米軍基地(40):左右の「ニアミス」

4月20日の「米軍レーダー基地反対集会」では,市民団体・労組等と右翼諸団体との「ニアミス」があったらしい。新聞・ネット情報だけで正確には分からないが,右翼もかなりの街宣車を出し,「左翼」批判を繰り広げていたという。地元の人の多くは,おそらく初体験であり,驚き,恐怖を感じたであろう。

それでも右翼の行動や演説は,このところずいぶんスマートになってきた。20日の「反対集会」への反対街宣でも,米軍駐留には自分たちも反対だなどと語りかけていた。レトリックもうまい。

あと一歩,右翼が上品になり「国粋主義(ナショナリズム)」の原点に立ち戻るなら,庶民の支持を一挙に拡大するにちがいない。安倍首相の指揮する「美しい国」合唱団への参加だ。

市民団体・労組等(右翼のいう「左翼」)にとっては,右翼との「ニアミス」や衝突よりも,むしろ街宣車から「美しい国」の合唱を,美しい歌声で流され,住民の心情的共感をゴッソリと持って行かれる方が致命的であろう。

美的・情緒的には,もともと保守派や右派の方がはるかに洗練されていた。そこにドスも利く右翼が参加し始めたら,市民派・護憲派・左翼などはひとたまりもあるまい。

すでにマスコミは,「美しい国」のセイレ-ンの声に引き寄せられ,合唱を始めた。たとえば,韓国船沈没事故報道。連日,テレビ・新聞が,この悲劇を「一流国家・日本」では起こりえないような,お粗末な「三流国家・韓国」の事故として,繰り返し繰り返し報道している。

たしかに,この客船運航や事故対応には多々問題があったようだが,日本のマスコミは,悲劇から謙虚に学ぶというよりは,むしろそれらを韓国がいかにダメな国家・国民か,日本がいかに優秀な国家・国民かを情緒的に訴えるための格好の話題として利用してきたといわざるをえない。

日本マスコミは,すでに「美しい国」の合唱に参加し始めた。いわゆる護憲派・市民派・左翼は,「美しい国」のセイレーンの声に抵抗しうるだろうか? それとも,岩礁に乗り上げ,沈没してしまうのであろうか?

谷川昌幸(C)

   

Written by Tanigawa

2014/04/28 at 13:03

京都の米軍基地(39):二重の危険にさらされる住民

京都の住民は,米軍Xバンドレーダーの危険に加え,福井原発事故被曝の危険にもさらされている。

これを改めて思い知らされたのが,兵庫県発表(4月24日)の「放射性物質拡散シミュレーションの結果について」。福井原発事故による放射性物資の拡散がこれだけ遠くにまで及ぶとすれば,京丹後市(印)はむろんのこと京都市(印)ですら深刻な被曝の危険にさらされていることになる。

そこで不思議なのは,京丹後市や京都市・京都府が原発廃止に回らないばかりか,原発再稼働の場合の危険性を深刻に受け止め,地域住民避難の準備や訓練を十分にやっているようにも見えないこと。まぁ,さもありなん――京丹後市長や京都府知事には,はるか彼方の「国益」の方が大切なのだから。

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 ■兵庫県シミュレーション

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 ■舞鶴市避難計画/京都市対応計画
 
[参考資料]
・兵庫県「放射性物質拡散シミュレーションの結果について」2014年4月
・「京都市原子力発電所事故対応暫定計画」平成24年4月
・「舞鶴市原子力災害住民避難計画」平成25年3月
福井原発関連記事

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/04/25 at 20:37

最高裁判事に8候補指名,司法会議

DP・シャルマ最高裁長官を長とする司法会議(न्यायपरिषद)は4月22日,暫定憲法第103条に基づき,空席となっていた最高裁判事に,上訴裁判所の所長6人,所長代行2人の計8判事を指名した。議会の審査を経て正式に任命される。

この最高裁判事指名については,弁護士会などがコネ人事だ,無能判事指名だ,などと批判をしている。そうした批判がどこまで妥当かは分からないが,少なくともいまの司法部が高位カースト寡占であることは間違いない。

法は,上部構造の重要部分であり歴史的に上位カーストのものだったからだろうが,いまや包摂民主主義の時代,司法部の民主化も避けられない。

折しもエネルギー省のラダ・ギャワリ大臣が,強姦には死刑を,と要求している。死刑採用の是非は別として,強姦事件を男性判事寡占裁判所で裁くことの不公平さは明白である。

包摂は司法部でこそ促進されなければならない。判事の半数を女性にすれば,女性がらみ事件の裁判も公平になるであろう。

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 ■Diversity in Judiciary by Broad Position Category and Sex / Diversity in Judiciary by Broad Position Categories Caste/Ethnic Groups, in Gender Equality and Social Inclusion Analysis of the Nepali Judiciary (Research Report), May 2013

谷川昌幸(C)



Written by Tanigawa

2014/04/23 at 17:02

カテゴリー: 司法, 人権

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南スーダン陸自交戦寸前,朝日記事の危険な含意

朝日新聞(4月21日)が,南スーダン「UNMISS」派遣陸自隊長・井川賢一1等陸佐の単独インタビューを掲載している。それによれば,井川隊長は,2014年1月5日,派遣(派兵)全隊員に武器・弾薬を携行させ,「各自あるいは部隊の判断で,正当防衛や緊急避難に該当する場合には撃て」と命令している。一応,「正当防衛」か「緊急避難」となっているが,避難民等を交えた混乱状態で戦闘が始まれば,そんなことの判断は事実上不可能だ。まさしく危機一髪,交戦寸前だったわけだ。

 140421a140421b ■UNMISS派遣陸自(防衛省HP)

この事態について,朝日は,例のごとく,ヌエ的態度に終始している。見出しは次の通り。
 [1面]陸自PKO隊長 射撃許可/南スーダン,銃撃戦迫り/1月,発砲に至らず
 [2面]PKO変化,日本板挟み/国連,武器使用を容認/安倍政権 基準見直し検討
     記者はこう見た 法改正か撤退か国民的議論を
 [7面]井川陸自隊長 一問一答「隊員死なせられない,最低限の自衛の必要,考えた」

一見,中立のようだが,朝日が,武器使用容認に傾いていることは、記事全体をみれば,そのニュアンスでわかる。たとえば,特ダネインタビューをとった三浦記者は,「記者はこう見た」において,こう書いている――

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 施設内で暮らす避難民は約3万人。守るのはルワンダなどの部隊だ。装備や隊員たちの熟練度は見るからに自衛隊の方が上回つている。それでも,自衛隊員たちは避難民を守るための武器使用が許されない。もし自衛隊がいながら,すぐそばで避難民の虐殺が起きた場合,国際世論は「仕方ない」と見なすだろうか。・・・・
 事実上の内戦状態にある南スーダンで,自衛隊はこれまで通りの構えで国際社会から期待された任務を遂行できるのか。現地を取材した私の考えでは選択肢は二つしかない。憲法解釈の見直しやPKO協力法などの改正によって派遣部隊に避難民を守るための武器使用を認めるか,現地が内戦状態にあることを認め,「停戦」を前提とする現行法を順守して南スーダンから撤退するかのどちらかだ。(朝日新聞4月21日)
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井川記者は,「国民的議論を」と逃げているが,ここでは一言も,自衛隊の海外派遣(派兵)それ自体が違憲であることには触れていない。それもそのはず,朝日新聞は,そのような原則的な立場をきれいさっぱり放棄してしまい,いまでは「地球貢献国家」を社是としているからだ。

「地球貢献」のために自衛隊(軍隊)を派遣せよとラッパを吹いておきながら,イザとなったら,「国民的議論を」とは,あまりにもおめでたい。朝日記事からは,国連が武器使用を容認したのだから,法改正し自衛隊も武器使用できるようにせよ,という願望が透けて見えてくる。

つまり,こういうことだ。安倍首相の目玉政策,「積極的平和貢献(Proactive Contribution to Peace)」を最も効果的に支援しているのは,産経でも読売でもなく,朝日だということ。朝日が,お上品に,「美しい国」の「積極的平和貢献」への道の露払いをし,準備万端整ったところで,それ行けドンドン,けばけばしいアナクロ復古調軍楽隊が行進するわけだ。

はなばなしいのはプカプカ,ドンドンだが,所詮それはそれだけのもの。常識も良識もある国民多数は,それだけでは浮かれ,ついて行ったりはしない。ところが,朝日が,もっともらしい理由をつけ,判断留保しているように見せつつ,お上品に,ジリジリと立ち位置を後退させていくと,国民の多くは,それが「いまの良識」かと思い,朝日とともに後退し,そのうち「日本を取り戻し」軍国主義に復古することもアナクロとは見えなくなってしまう。

対韓中ヘイトスピーチと同様,復古軍国主義も,同調を始めたら,これほど爽快なことはあるまい。朝日は,そのための露払いをしているように見えてしかたない。思い違いならよいが,もしそうでないなら,朝日の責任は重大といわざるをえない。

[参照]
スーダン派兵で権益確保:朝日社説の含意
スーダン銃弾供与問題と露払い朝日新聞
朝日社説の陸自スーダン派兵論(再掲)
良心的兵役拒否国家から地球貢献国家へ:朝日の変節
自称「右翼軍国主義者」の「積極的平和主義」:安倍首相の国連演説
自衛艦をソマリア沖に派遣せよ,朝日社説

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/04/21 at 19:07

京都の米軍基地(38):駐留米軍を守る日本国警察

Xバンドレーダー基地建設反対! 4・20現地集会」(宇川農業会館4月20日午後)を,IWJ-Kyoto1の実況中継で見た(下記は中継画像)。参加者は約400人。

集会での発言は,いずれも正論であり,もっともだが,「内側の人々」(地元住民)にとっては,そうした反対論はいわば「外側の人々」(よそ者)の外からの声であり,それが地元住民の心を内から揺さぶり,強い共感を呼び起こすのは,実際には,かなり難しいであろう。
 [参照]丸山眞男「現代における人間と政治」1961年

これとは対照的に,警察の大量動員,厳戒体制は,一見すぐそれと分かるものであり,地元の人々にリアルな圧倒的な威圧感,恐怖感を与えることに成功したにちがいない。駐留米軍を守るためであれば,日本政府は暴力装置たる「警察」の動員を躊躇しない。お上にたてつくと,警察に睨まれる,お上には抵抗できない,と。「Xバンドレーダー体制」の片鱗が,早くも見え始めたといってよいであろう。

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 ■集会後,デモ行進開始(久僧)/空自基地・米軍用地前

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 ■袖志入口,後方は経ヶ岬/袖志村内

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/04/20 at 19:28

京都の米軍基地(37):丸裸の監視社会

グーグル写真を見てビックリ,また一段と精細になった。こんなものが見られるなら,わざわざ丹後の秘境に行くまでもない。論より証拠――

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 ■空自分屯基地入り口/米軍用地/空自レーダー

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 ■尾和の国道沿い民家/同左,拡大/尾和村内バス停/右壁面,拡大

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 ■袖志の商店と民家/同左,民家前拡大/久僧:共産党・自衛隊・自民党共生ポスター

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 ■中浜民家/同左,拡大/袖志を無断撮影中のグーグル車

これらは,はるかに鮮明なグーグル画像を,素人が無料映像ソフトで縮小したもの。それでも,十分に判別できる。一応,人の顔や文字にはボカシを入れているが,申し訳程度,アリバイつくりにすぎず,誰が,どこで,何をしていたか,丸見え。丸裸に近いといってよい。

たとえば,袖志の女性や中浜の男性。あるいは,尾和の国道178号線沿い民家やバス停付近の民家,久僧の共産党・自衛隊・自民党共生ポスター掲示など。ポスターは見てもらうためだからよいとしても,自宅敷地内の無防備女性や男性を一方的に無断撮影し――その意味では盗撮し――世界にばらまき,永久保存・利用を可能とし,それでもって金儲けをしている。こんなことを,本当に,してもよいのだろうか?

しかし,それはそれとして,いま確認すべきは,一私企業ですら,ここまで自在にプライバシーを暴き,保存・利用できるということ。とすれば,米軍やCIAなど,あるいは自衛隊や公安機関などは,その何倍も強力な住民調査・監視技術を持ち,おそらくすでに何らかの形で利用していると想定せざるをえないであろう。

地元住民や京丹後に出入りするよそ者は,すべてどこかでチェックされ,経歴を照合され,分類・保存され,ひょっとするとケイタイ・スマホ情報も傍受され,監視されている可能性がある。まだどう利用されているかは分からないが,すでに山間部の峠などに,監視カメラがいくつか,さりげなく設置されている。

監視社会の恐ろしさは,実際には自分は監視されていなくても,監視されているかもしれないと思わされるところにある。丹後は,間違いなく万人監視の「Xバンドレーダー体制」に向かうであろう。

 ▼京都の米軍基地(13):「Xバンドレーダー体制」の危険性

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/04/16 at 12:04