ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

中国の広報戦略と戦略なき小国日本

毎日新聞「隣人:日中韓 孤立する日本/7 報道支配、中国外にも」(4月10日)は,刺激的な警世的記事だ。中国政府が,国策として,6千億円(2009年頃)の巨費を投入し,世界世論形成に努力しているというのだ。李長春・政治局常務委員(宣伝担当)は2008年1月,中国中央テレビ(CCTV)で,こう演説した。

「外国語チャンネルの開設を加速し、我々の映像、声をさらに世界各地に波及させよ。国内外の重大事件の報道で、世論の主導権を勝ち取れ」(毎日4月10日)

毎日記事は,オーストラリア,アメリカ,ケニアの事例を,「そこまでやるのか!」とビックリ仰天するほど興味深い実話も交え,紹介している。いかにも中国的で,稚拙とも,乱暴とも言えるが,そこは大国,小さなことは気にしていないようだ。要は,世界世論の米欧支配を打破し,中国の声を広めることが目標なのだ。

ネパールでの「China Daily(中国日報)」宣伝も,この中国政府の世界広報戦略の一環とみるべきであろう。すでに幾度か紹介したが,「ネパリタイムズ」の「中国日報+ランタン無料進呈」キャンペーンは,その率直さに,見るたびにほほえまされるが,戦略的には的確に的を射ている。無料進呈LEDランタンで「中国日報」を読めば,最先端の光により大いに啓蒙(lighten up)されるというわけだ。小さなことを気にせず,大国的な大らかさで,時間をかけ,目的を達成することを目指している。

131214a ■中国のネパール啓蒙作戦(ネパリタイムズ2013年12月13-19日号)

これに対し日本は,ひがみっぽい小国根性丸出し。国土25倍,人口11倍の超大国・中国に対し,経済規模など日本の国力が相対的に低下するのは,必然であり自然なことだ。その宿命を見据えた上で,日本は,量的にではなく質的に,自国の価値を高め,小粒でもピリリと辛い小国としての存在意義を世界に向け発信し,世界社会において「名誉ある地位」(憲法前文)を占める努力をすべきだ。

それなのに,相対的小国化の宿命を直視する勇気を持たず,隣国の発展に嫉妬し,ひがみ,内弁慶になり,「日本を取り戻す」などと空威張りをする。本気で日本を取り戻せば,よくて極東の貧困後進国,悪くすると軍国全体主義国に逆戻りするだけではないか。

今日の「ネパリタイムズ」にも,「China Daily」の宣伝はでている。そこをクリックすると,中国日報ホームページが表示される。その最上段には,ちゃんと,日本批判記事が出ている。日本には,「日本を取り戻す」ためのアナクロ竹槍戦術はあっても,このような大きな世界戦略はない。
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 ■ネパリタイムズ広告⇒China Dailyトップ(4月10日)

140410c ■日本向け広告。戦略的な中印首相握手写真掲載(4月10日)。

中国のネパール進出とアメリカ国益

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/04/10 @ 18:36

カテゴリー: 外交, 情報 IT, 中国

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