ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for 5月 2014

外国人に席巻される地方観光地

気晴らしに白川郷と立山に行ってきた。北陸道に加え東海北陸道もでき,金沢からレンタカーで白川郷まで1時間少々,白川郷から立山までも同じくらい。超便利! どこも初夏の花々が咲き乱れ,美しかったが,驚いたのは外国人観光客の多さ。

白川郷では,1/2~2/3が外国人。団体や少人数のグループで,次々にやってくる。最も多いのは中国や韓国,次にタイなどの東南アジア,そして欧米系もちらほら。

白川郷では温泉宿に泊まったが,日本人客はごく少数,小さくなって温泉に入り,ご飯を食べた。立山も同じような状況。イヤハヤ,世界は小さくなり,日本の奥地までも「国際化」した。

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 ■白川郷萩町集落/同左・中国人観光客

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 ■相倉集落/同左・農作業

このような地方観光地では,もはや「嫌韓・嫌中」などとバカなことをいっていては生活はできない。アジア諸国からの観光客は,豪快に飲み食いし,気前よく土産物を買ってくれる上得意様。

しかし,軋轢がないかというと,うそになる。生活習慣が異なるので,白川郷でも立山でも,日本人からすれば腹立たしいことが少なくなかった。これは金沢市内の重文茶屋でのことだが,スペイン語圏からの陽気な団体客が,禁止も制止も無視し大はしゃぎ。彼らからすれば,薄汚れた古くさい襖や屏風など,破れようが穴が開こうがどうということはないのだろう。

グローバル化により異文化との接触が日常化すれば,こうした軋轢も日常化するが,これは宿命,もはや逃れられない。とくに中国や韓国は隣国であり,様々な対立やもめ事があるのは当然だ。これからは,それを前提に,紛争をコントロールし共存を図る大人の対応が求められる。

また,そもそも厳密には「中国人」や「韓国人」は存在しない。実在するのは,中国や韓国に住む無限に多様な個々の人々だ。そのような人々と,多重多層の多くの関係をつくり出していく。「美しい国」のアナクロ首相は嫌がるであろうが,国際社会ではむろんのこと,たとえ日本国内であっても,異文化との平和共存は必然であり,そこにしか日本の未来はないであろう。

140530g ■立山

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/30 at 11:52

京都の米軍基地(44):コケにされコケた京丹後市

米軍への「お願いのお願い」を条件に基地受入を決めた京丹後市が,予想通りコケにされ,早くもコケた。

防衛省が基地工事開始を府・市に通告したのが26日昼,翌27日早朝にはもう工事が始まった(TBSニュース「米軍Xバンドレーダー配備、京都・京丹後で着工」)。工事概要の説明はなし。工事受注業者らも市民には不明。(注)

これはヒドイ。わがアパートでは,小さな修理工事や室内改装ですら,何週間も前に通知し工事概要が掲示される。米軍やその下働き防衛省には,その程度の最低限の市民的良識すらないのだ。

各紙報道によれば,27日午前6時半頃から基地用地(米軍専用施設区域)に大型ダンプやショベルカーなど10台以上が順次到着し,整地やフェンス設置工事が始められたそうだ。あれ,京丹後市はどう言っていたっけ? 「工事を行う際には,通勤時間帯・・・・は避け」(「広報きょうたんご」2014年6月)

米軍はむろんのこと防衛省にも,「お願い」や「お願いのお願い」を聞くつもりは毛頭ない。そんなものを真に受けると,虚仮にされ転けること必定。

むろん,優秀な官僚出身市長や市議会選良は,そんなことなど,十二分に承知している。すべて分かった上で,住民を虚仮にし,「国益」という名の「私益」を図ろうとしているのだ。

基地再編交付金は,今年度,5億3千万円(総額30億円程度)。分捕り合戦が始まり,さじ加減の醍醐味が,陣笠にまで,それなりに再配分されるだろう。

 *毎日新聞5月24,26日;京都新聞5月26-27日;赤旗5月28日;読売新聞5月24日
 (注)現在の工事業者は「ミライト・テクノロジーズ・アクティJV」。(株)ミライト・テクノロジーズは住友電工系で,本社は大阪。もう1社は,米軍関係事業を多く手がけている(株)アクティ(本社:岡山市)ではないかと思われる。地元企業の参加はまだ不明。(6月6日追加修正)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/29 at 16:57

京都の米軍基地(43):正直な米軍と不実な日本官僚

日本辺地のちっぽけな自治体が,世界最強米軍にもの申すなど,どだい無理な話であったことが,早くも露見した。米軍当局が,京丹後市など端から無視し,基地建設工事の業者選定(5月2日),着工許可(14日)を済ませていたというのだ。

闘うジャーナリズム京都新聞(5月24日)によれば,京丹後市や京都府は,防衛省に対し,基地着工日を事前に連絡するよう再三申し入れてきたが,防衛省は米軍から何の情報も得ていないそうだ。近畿中部防衛局・福井報道官「本当に米軍から聞いていません」(同上)。

もしそうなら,そのような「軍事機密」を京都新聞は,どこから手に入れたのか? 米軍司令部(座間市)広報室からの情報らしいが,もしこれが「軍事機密」なら,京都新聞はそれを「不法に」入手したことになる。記者は,不倫か交通違反か他の何かで別件逮捕され,友人・知人を取り調べられ,生活をメチャクチャにされ,一生を棒に振ることになる。逆に,米軍報道官がペラペラしゃべる程度の情報で,「機密」でも何でもないとするなら,防衛省,京都府,京丹後市は,知っていながら「自己規制」し,市民には知らせなかったことになる。たぶん,これが事実に近いだろう。

日本の官僚機関や官僚主義政治家は,元来,そのようなもの(と想定すべき)だ。特に米軍との関係。そもそも世界最強米軍は治外法権,京丹後市など端から眼中にない。日本政府・防衛省にだって,重要機密は知らせない。それなのに,おめでたいことに,京丹後市長は要望を列挙し米軍にお願いすることを日本政府にお願いし,それを条件に,基地受入を決定した。こんな,お願いのお願いなど,屁の突っ張りにもならない。全くの無駄。

そして,むろん住民説明会もまったく無意味。米軍にとって,軍の機密と都合が万事すべてに優先する。基地着工前から,そのことを米軍は住民にはっきりと思い知らせてくれた。正直な米軍!

米軍は,この意味で正直であり,合理的に行動を予見できるが,まったく信用ならないのが,京丹後市など日本の関係機関。住民の要求を聞くふりをしながら,実際には,米軍への要求など実効性のあることは何もしていないはずだ。日本の優秀な官僚主義的官僚とは,そのようなものだ。

これから始まる基地工事も運び込まれる機器も,おそらく「軍機」。いつ,どこで,どのような工事が行われるかも,いつ,どこを,どのような機器が運ばれるかも,重要なことは市民には知らされない。何が危険か市民には分からない。

まだ着工前だが,それでも準備作業のためか,すでに自衛隊車両の通行が増加している。住民には,日本軍が,何のために軍用車両に一般道を走らせているのか,知らされていない。

すでに丹後には「軍事機密」がウヨウヨ。これまでのように無邪気に写真を撮ったり,おしゃべりしたりすると,いつしょっぴかれるかわからない。丹後半島は危険地域になった。もはや安心して楽しむことのできる観光地ではない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/25 at 08:12

制憲議会選挙2013(38): 指名議席空席の議会は違憲,最高裁

ネパール最高裁は5月12日,B・パスワン議員(ダリット党議長)の令状請求を認め,内閣指名26議席空席の制憲議会は違憲と判決した。要点は次の通り。(参照:指名議席争奪

(1)内閣指名26議席空席のままの制憲議会の活動は,暫定憲法第63条(3)Cの規定に違反し,違憲。
(2)内閣は,権力分有(power-sharing)を口実に指名を先送りしてはならない。判決日(12日)から15日以内に,26議員を指名せよ。
(3)選挙(小選挙区制・比例制)落選者は,指名されてはならない。
(4)国家貢献顕著な独立の人物を選出し指名すること。

この最高裁命令については,「民主法律家協会」集会では,司法の権限を逸脱した行きすぎた「司法積極主義」だ,という批判が多く出された。また,落選大物政治家を抱える政党からは,たとえば「最高裁は制憲議会の管轄内にまで介入した。これはよくない」(ポカレルUML書記長)といった批判も出されている。

たしかに司法積極主義は限度を超えると問題だが,今回の最高裁命令は,指名候補者資格限定の部分には議論の余地があるが,それ以外は妥当である。

選挙投票日は2013年11月19日。すでに半年も経過している。にもかかわらず,指名議席空席のまま,制憲議会は重要事項を次々と審議し,決定してきた。違憲は明白であり,最高裁命令は当然といってよいであろう。(Himalayan, 14,19-20 May)

140522 ■最高裁付近(Google)

谷川昌幸(C)

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2014/05/22 at 10:05

中国,TUに地理研究センター設立

中国科学院(CAS)が,トリブバン大学(TU)と協力し,TU内に「中国・ネパール地理共同研究センター」を設立した。ヒマラヤの南北地域の研究が目的。

ここで注目すべきは,研究センター設立に関する記事のニュアンスが,中国側とネパール側ではかなり異なること。ネパール側記事は中国側原記事の要約ということだろうが,その要約の仕方が微妙だ。下記CAS記事の赤字の部分のニュアンスが,おそらく意識的にカットされている。なかなか興味深い。

▼Chinese Academy of Sciences(2014/05/06)
It[Sino-Nepal Joint Research Center for Geography] aims to train more talents specializing in mountain geography, promote research ability of related fields in Nepal, and make contributions to promoting China’s scientific and technological influence power and science and technology exchange and cooperation between China and Nepal.

Dr. DENG Wei, director of IMHE[Institute of Mountain Hazards and Environment, CAS], felicitated the founding of the Geography Center, and considered it as an important platform for promoting the education quality of Nepal and talents cultivation.

▼Nepalnews.com(2014/05/14)
The center, jointly built by IMHE and TU, will carry out geographical research of mountain hazards, mountain ecology and environment monitoring of the southern and northern slopes of the Himalayas. The collaboration aims to promote science and technology exchange between China and Nepal.

Dr. Deng Wei, director of IMHE, hailed the founding of the geography center as an important platform for enhancing the quality of scientific education in Nepal.

140520

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/20 at 10:56

カテゴリー: 教育, 中国

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韓国の対ネ投資と援助

韓国の自動車関連会社Global Auto Techとネパールの会社LTC(Lekali Trading Concern) P.Ltdが,5月17日,ソウルにおいて,ネパールにトラック製造工場を建設する協定に調印した。詳細は不明だが,実現すると,ネパール初の本格的な自動車製造工場となる。また,韓国の別の会社が,ネパールにモノレールを建設する計画もあるらしい。

一方,こうした投資案件と併行して,韓国は援助にも熱心だ。5月19日には,駐ネ韓国大使が,ネパール国民健康促進事業に4億6千万ルピーの援助をする覚え書きに署名した。

このところ,韓国も,中国に負けず劣らず,元気だ。( Republica, 18-19 May)

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■来韓ネパール人(Macroeconomic Snapshot of Nepal,December 2013)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/19 at 20:21

カテゴリー: 経済

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インド総選挙とネパールと中国

インド総選挙(開票5月16日)で,BJP(人民党)が282議席を獲得し大勝した。インド会議派(INC)は44議席にとどまり,惨敗。

140518a■印総選挙結果(http://www.cnbc.com/id/101678624)

この隣国の総選挙の経過を,ネパールの大手メディア(英語)はほとんど報道してこなかった。開票によりBJPの大勝が判明しても,メディアの扱いはそれほど大きくはない。少し詳しい記事は,AFPや新華社など外国通信社の配信を使って済ませている。まるで,遠い外国の出来事の一つのような,淡泊な扱いだ。

確実視されているBJPモディ政権成立についても,ネパール側の報道は,少ない。各紙は,コイララ首相がモディ氏との協力について語ったとか,パンディ外相が印ネ関係は変わらないだろうと語ったとか,短く伝えるだけ。また,元駐印大使で知印派のLR・バラ―ル氏やBB・タパ氏も,対ネ政策の基本に変化はないだろう,と簡潔に語るにとどめている。大喜びしそうなカマル・タパ氏ですら,これを王政復古のチャンスに利用するそぶりは,今のところまったく見せていない。どの勢力も,「シカト」とまではいわないまでも,そのように見える態度だ。

140518b ■カナルUML議長(UML HP)

これと対照的なのが,中国に関すること。印総選挙のさなか,統一共産党(CPN-UML)のカナル議長が訪中した。20名の大訪中団で,5月6-16日の10日間。この様子は,インドのことなどまったく眼中にないかのように,各紙とも遠慮なく,大胆に報道した。(ほぼ同時期のバブラム・バタライUCPN-M幹部の訪中については,「軽い日本,重い中国」参照)

報道によれば,カナル議長は,李源潮副主席との1時間以上に及ぶ会談において,「一つの中国」を確認した上で,ラサ―シガツェ鉄道のカトマンズ延伸を強く要請した。そして,テレグラフ記事(5月18日)によれば,カナル議長は,こうもいったという。

「中国の鉄道がカトマンズまで延伸されれば,ネパールはこれまでの内陸封鎖(landlocked status)の束縛から解放されるであろう。」

さらにまた,カナル議長によれば李副主席がこういった,とテレグラフは書いている。

「中国は,ネパールの内政に干渉はしないが,しかし,もしネパールの主権が外国勢力により脅かされるようなことがあれば,中国はネパールの側に立つであろう。」

この前か後か分からないが,李副主席は「中国は,ネ印関係の強化を願っている」とも語ったそうだから,李副主席の発言の意図は必ずしもはっきりしないし,またこれはカナル議長からの又聞きだから,この通りの発言があったのかもはっきりしない。

しかし,そうした留保をした上で,もしテレグラフ記事が大筋では間違いないとするなら,カナル議長やテレグラフ,あるいは同趣旨の記事を書いた他紙は,ずいぶん大胆だといってよいだろう。これは,インド総選挙にたいする「シカト」のような態度とは大きく異なる。

インドに対しては,ネパールには,何をしても大丈夫だという,子供のような依存と甘えがまだあるのではないか? しかし,たとえそうだとしても,最近は少々やり過ぎではないか。チベット鉄道延伸にせよ,中国援助のダムや南北道路や国際空港の建設にせよ,慎重に進めないと,BJP中心の強力モディ政権が成立するインドが,堪忍袋の緒を切り,ネパールへの直接介入に踏み切る恐れは十分にある。そして,それを,もし中国が座視しないとするなら・・・・。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/18 at 21:05