ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Archive for 6月 2014

新舟60,鳥と衝突

運行開始したばかりのネパール航空「新舟(MA)60」が鳥と衝突した。6月30日朝,ビラトナガル着陸直前に右エンジンに吸い込まれたらしい。機体は小破したが,ほぼ満席の乗客は全員無事だった。

鳥との衝突は珍しくないし,また機種名が「現代の箱舟(Modern Ark)」だから鳥が救いを求めて飛来したというわけでもあるまい。が,いずれにせよ危険な事故にはちがいなく,何より間が悪い。ネパール航空も中国の航空関係者もヒヤッとしたであろう。大事故にならなくて,よかった。

140630 ■新舟60(NAC-FB)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/06/30 at 20:29

カテゴリー: 経済, 旅行, 中国

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京都の米軍基地(49):YWCAの抗議・要請書

日本YWCAが6月27日,内閣総理大,防衛大臣,外務大臣,駐日米国大使あての抗議・要請書を提出した。
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京都府京丹後市に米軍高性能レーダー「Xバンドレーダー」基地建設工事強行に抗議する要請書
                                          
       日本YWCA  会長 俣野尚子 総幹事 西原美香子 / 2014 年 6月 27 日
 
5 月 27 日、在日米軍と日本政府防衛省は、京都府京丹後市に位置する経ヶ岬 に米軍Xバンドレーダー基地の建設工事を強行しました。・・・・・・

私たちは次のことを強く要請します。
  1.Xバンドレーダー基地建設を即刻、中止すること
  1.京丹後市の基地を撤去し、続いて沖縄やその他の基地の撤去すること
  1.地元住民の人権を侵害する日米地位協定を廃止すること
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■⇒要請書全文,または要請書全文

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/06/29 at 11:04

京都の米軍基地(48):低調な市議会審議と「安心安全」の陥穽

関西初の米軍基地の建設が始まった。歴史的大事件なのに,地元京丹後市の議会審議は,いたって低調。しかも,反対派も含め,議会全体が「安心安全」に取り込まれ,足をすくわれつつある。

「安心安全」は,例外状況の「危機」を中心に据える議論であり,安易に「安心安全」を要求すればするほど,権力の思うつぼ,監視・管理は強化され,「1984年の丹後」が現実のものとなる。増派警官は誰を監視するのか?(下記京都新聞記事参照)

そもそも,経ヶ岬米軍基地にやってくるのは,米日インテリジェンス(情報,諜報)のプロ。そんなものを相手に,善意丸出しで無警戒に「安心安全」を要求すれば,米軍人・軍属ではなく住民自身が,日常生活ばかりか,頭の中まで丸裸にされ,四六時中監視されるのが落ちだ。

相手は,非日常=危機のプロ。日常生活の常識が通用するはずがない。この点については,後日,改めて考えてみたい。

平成26年定例会(6月12日)【47分:クリック再生】
 田中邦生議員(日本共産党)
  米軍レーダー基地配備計画は撤廃せよ
  (1)住民説明会で「安心安全」の確保ができたとは言えない
  (2)米国防省の予算書にある環境影響評価について
  (3)工事計画の詳細を明らかにすべき
  (4)京都府の申し入れ(5/20)について

議員全員協議会(6月16日)【60分:クリック再生】
 3 協議事項
 (1)米軍基地(経ヶ岬通信所)設置に伴う再編交付金の考え方等について

平成26年6月定例会(6月13日)【6分:クリック再生】
 金田琮仁議員(清風クラブ)
  3 市民生活を活かす、環境の整備について
 (1)重大な犯罪が地方でも発生している。峰山駅周辺では、夜間は特に物騒だ。防犯、治安対策として、防犯カメラを設置しては

[補足」議会での 防犯カメラ設置要請は,米軍基地問題とは直接関係はない。しかし,基地設置に伴う「安心安全」強化大合唱の中での防犯カメラ(監視カメラ)設置要請は,治安・公安の観点からは,当然別の意味をも持ちうる,と考えるべきであろう。

【参照】「潮風が香る。山手の棚田が美しい。京丹後市の袖志地区。丹後三文殊の一つ、九品寺を参拝していると、ほどなく警察車両が近づいてきた。「観光ですか」と問われる。九品寺の隣は、米軍基地の建設予定地。5月下旬から工事が始まり、府警が警護を強化しているという。のどかな初夏の集落が揺れる。・・・・」(京都新聞2014年6月25日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/06/28 at 15:31

新舟60フライトと中国債枠倍増

1.新舟60フライト開始
ネパール航空(NAC)が,中国政府供与「新舟60(Modern Ark 60)」のフライトを開始した(ネパール各紙)。
  フライト:カトマンズ ⇔ ビラトナガル,バドラプル,バイラワ,ダンガディ
  料金:他社の約半額 (カトマンズ-ビラトナガル:3505ルピー)
  パイロット:当初は機長中国人,副機長ネパール人。

いつものドタバタだが,報道通りだとすると,意外に早く営業フライトには入れた。さすが,ネパール。
 [参照]飛行機プレゼント,中国政府飛べない「新舟60」飛行機,パソコンから日用品まで中国製

140627e■MA60(西安飛行機HP)

140627a■ネパール航空

2.中国債枠倍増
一方,ネパール政府と中国政府は,人民元建て中国債の年間購入枠を現行の12億元から2倍の24億元(372億ルピー)に拡大することに合意した。ネパール政府が中国債の購入を始めたのは,昨年から(Himalayan, 25 Jan)。

ネパール政府の外国債購入は,インド国債が1070億ルピー,米国債が143億ルピー。中国国債は新規枠いっぱい購入すれば,インド国債にはまだ及ばないが,米国債より多くなる。中国国債は配当が4%ほどで有利だというのが表向きの理由だが,実際には,おそらくそれだけではあるまい。そのへんの事情はよく分からない。

140627d ■ネパール中央銀行

3.トンガと中国とネパール
ネパールは,上記のように,急速に中国経済圏に引き入れられつつあるが,ここで参考になるのが「トンガ新舟事件」。産経ニュース記事によれば,概要は以下の通り(「札つき『危ない中国製航空機』に追い詰められる『トンガ王国』」2013.8.19 )。

トンガでは,ニュージーランドの航空会社が国内便を運行していたが,2013年,中国の「新舟60」無償供与をきっかけに,中国系新会社「リアルトンガ」が設立され,「新州60」や「運12(Y12)」による国内便運行を始めた。ネパール航空同様,当初はパイロットも技術者も中国支援。リアルトンガHPでは,いまも中国製2機種のパイロットと技術者が募集されている。

140627b140627c■リアルトンガのMA60(同社HP)

このトンガの動きに怒ったのが,ニュージーランド。産経記事によれば,ニュージーランド政府は,トンガでの新舟60利用は危険だと警告し,観光開発援助820万ドルの供与を停止してしまった。

ニュージーランド政府の対トンガ強攻策は,表向きは新舟60の危険性だが,その背景にはトンガへの中国の津波のような急進出があるという。いまではトンガの対外債務の6割以上が中国。インフラの多くも中国援助。人口10万人のトンガに,中国人が数千人住んでいるという(「中国系トンガ人」も含めて数千人か?)。

当然,トンガ有力者と中国側との癒着が進み,様々な腐敗もはびこってくる。産経記事によれば――

「今年[2013年]5月にはオーストラリアのABCラジオが、王族系企業に中国の不透明な金が流れているとの民主化団体の告発を伝えた。また英BBCは7月、雨が降ればあふれて道路脇の家に流れ込む側溝や、冷房や維持費がかかる大仰な建物などを現地の気候や事情に配慮しない援助を報じている。・・・・
 トンガからの報道によると、リアルトンガは8月に入ってから新舟60の運行を開始した。操縦にはトンガ人とともに中国人もあたっているという。国際機関からの認証を得たとしているが、ニュージーランドが警告を発するなかでの運行開始。小さな王国に贈られた「危ない飛行機」はいまや、政治的にも危険な飛行機になってきた。」(同上)

人口超大国中国が,経済的にもアメリカをしのぐ超大国に生長し,世界各地に「進出」するのは必然だとすれば,産経記事の指摘するような問題は他でも大なり小なり起こっていると見てよいであろう。

ネパールは,国境を接するだけに,中国の経済進出への対応はいっそう難しい課題となるであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/06/27 at 13:53

カテゴリー: 経済, 中国

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制憲議会選挙(39):補欠選挙

制憲議会補欠選挙が,6月22日,実施された。重複立候補などによる欠員を補充するため。結果は以下の通り。

カトマンズ 第2区
  D.クインケル NC 18200
  KG.シュレスタ UML 13421
  L.ポカレル UCPN-M 4604
  N.シンカダ RPP-N 3724
チトワン 第4区
  RK.ギミレ NC 20318
  D.ラワル UML 17272
  K.タマン UCPN-M 7855
  S.ルーワリ CPN-ML 940
バルディヤ 第1区
  SP.ダカール UML 16996
  S.ビスタ NC 11335
  BP.タルー UCPN-M 11031
  GP.タルー MJF 1596
カイラリ 第6区
  P.オージャ NC 14784
  M.パタック UML 11959
  R.バンダリ RPP-N 4367
  L.チョウダリ MJF 3586

コングレス圧勝。対照的に,マオイスト(UCPN-M)は退勢著しい。今後,マオイストは,どの方向に向かうのか? 幹部が既得権益保守に回りますます体制内化していくか? それとも,支持回復のため急進派のバイダ派(CPN-M)と合流し反体制・急進化していくか? いまのところ,いずれとも見極めがたい。

140625 ■村での選挙啓発(選管HP)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/06/25 at 19:55

カテゴリー: マオイスト, 選挙, 憲法, 政党

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新憲法起草の争点:財産権

新憲法で財産権をどう規定するかをめぐって,諸政党が対立している。一つは,私有財産に上限を設定するか否か。もう一つは,土地収用を補償なしとするか否か。

1.財産権の規定例
財産権については,当然ながら,資本主義憲法と社会主義憲法とでは,大きく異なる。

日本国憲法第29条:「財産権は,これを侵してはならない。」「私有財産は,正当な補償の下に,公共のために用いることができる。」
米国憲法修正第5条:「正当な補償なく,私有する財産を公共の用のために徴収されない。」
独基本法第14条:「所有権及び相続権は,これを保障する。」「公用収用は,・・・・補償の方法及び程度を規定する法律の根拠に基づいてのみ,これを行うことが許される。」
仏人権宣言第17条:「所有権は不可侵かつ神聖な権利であり,・・・・事前の正当な保障の条件の下でなければ,その権利を奪われてはならない。」
中国憲法第6条:「生産手段の社会主義公有制」/第9条:「自然資源は,すべて国家所有」/第10条:「都市の土地は国家所有に属する。」それ以外の「土地は,集団所有に属する。」/第11条:「法が定める範囲内の個人経済,私的経済等の非公有制経済は,社会主義市場経済の重要な組成部分である。」/第13条:「市民の合法的私有財産は,侵すことはできない。」私有財産の収用または徴用には「補償を与えることができる。」(『世界憲法集』岩波文庫)

2.マオイスト:上限超過土地の無償収用
マオイスト(UCPN-M)は,私有財産,とくに土地所有の上限規制を要求し,上限超過土地は補償なしで没収することを強硬に主張している。また,労農党(NWPP)も「土地を耕作者に」をスローガンに,土地所有の上限規制を要求している。

Agni Sapkota:「土地は自然資源であり,誰にも土地は創り出せないから,土地は国家のものとすべきだ。」(Himalayan, 12 Jun)
Haribol Gajurel:「上限以上の所有土地の没収には,補償は不要だ。」(Ekantipur, 11 Jun) 「土地は自然のものであり,国家のものでも個人のものでもない。土地没収で本来なら誰にも損害は出ないはずだ。なぜ補償が必要なのか。」(Republica, 15 Jun)

マオイストの議論の核心は,土地所有の上限を定め,上限超過土地は無償で収用,つまり没収すべきだという主張にある。これは,結党以来,マオイストの最重要政策であり,人民戦争のスローガンでもあった。

3.NC,UML,RPP:財産権保障と収用補償
コングレス党(NC),統一共産党(UML),国民民主党(RPP-N)は,私有財産保障の程度については意見が分かれているが,少なくともマオイストの上限超過土地の無償収用には絶対反対である。

コングレス
Gopal Man Shrestha:財産所有権は基本権の一つだ。正当に取得された財産に所有上限を設けるべきではない(Ekantipur, 11 Jun)。
Ramesh Lekhak:財産上限規制は,基本的人権の原理に反する。土地収用には補償をすべきだ(Himalayan, 10 Jun)。
Dhanraj Gurung:「財産取得は自由であり奨励されるべきだ。その上で,累進課税を採用し効果的に適用すればよい。」(Republica, 15 Jun)

UML
Bharat Mohan Adhikari:財産取得に上限を設けるべきではない。効果的に課税をすればよい。(Himalayan, 10 Jun)
Kasi Nath Adhikari:土地所有に上限を設け,上限超過土地には加算課税をすればよい(Ekantipur, 12 Jun)。

RPP-N
Kamal Thapa:「新憲法は,財産所有権を国民に保障すべきだ。政府は土地収用には補償をすべきだ。」(Ekantipur, 10 Jun)

140624 ■科学的土地改革高等委員会報告書

4.累進課税と公平な徴税
制憲議会選挙では,NC,UML, RPP-Nが大勝し,マオイストは惨敗したので,上限超過土地の無償収用ないし没収を新憲法に規定することは,困難であろう。

しかし,大土地農地所有と土地なし農民の問題の解決は避けては通れないし,また近年の経済発展による農地以外の財産格差も限度を超えている。

この問題について,マオイストのように,財産所有に上限を定め,超過分は無償没収とするのは,あまりにも強権的であり,実行困難であろう。現実的なのは,やはり保有財産や相続財産に累進課税をかけ,ある程度時間をかけ財産格差を縮小していく方法であろう。

といっても,累進課税による格差縮小も,グローバル新自由主義体制の中に組み込まれてしまった今のネパールには,実際には容易なことではないかもしれない。また,そもそも財産や所得がどこまで正確に把握され,課税徴収されているかも,はなはだ疑問である。前途多難といわざるをえない。

▼富裕国ほど低い法人税(IMFツイッターより)
140625a

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/06/24 at 15:42

京都の米軍基地(47):関連事業・交付金の抗いがたい魅力

1.森本インター
経ヶ岬米軍基地へのアクセス・インターとなる鳥取豊岡宮津自動車道「森本インター」の工事が,着々と進んでいる。2016年完成予定で,この12月とされるXバンドレーダー搬入には間に合わないが,開通後は,このインターが米軍により頻繁に利用されることになるだろう。

「森本インター~経ヶ岬」は,丹後半島の奥地,小集落が散在するだけで,昼間でも人通りは少ない。ましてや日没後ともなると,森閑,人っ子1人見当たらないところも少なくない。米軍マル秘作戦には絶好の立地だが,地元住民にとっては,治外法権に近い米軍人・軍属の往来は薄気味悪く,不安は募るばかりだろう。

140621c ■事業箇所(「道路事業事前評価審査表」)

2.土建の魅力
この宮津自動車道のうち,いま工事中の野田川大宮道路は,全長4.3km,事業主体は京都府で工事期間は2005~2016年。わずか4.3kmだが,大きな橋とトンネルのため,総事業費160億円の大事業だ。といっても,事業の重要部分は,大林組,宮地エンジニアリングなど,地域外の大手・中堅企業が受注している。

しかし,それでも地元企業にも,幾分かは工事が回される。「森本インター」の場合は,下図のように,「マルキ・山崎組JV」。 「最高落札金額168,602,040円」と報道されているので,もしこれが両社JVの落札金額だとすると,全体の1%程度となる。わずかだが,うるおう。

土建を中心とする公共事業は,地方経済にとって魅力的であり,欠かせないものだ。

140621a140621b140621d
 ■森本インター工事(2014-6-17)

3.米軍再配備交付金
米軍基地受入と直接関係するのが,「米軍再編交付金」。京丹後市には,今年度6億1300万円(前年度繰り越し分7900万円)が,交付される。10年間で30億円程度の見込み。福祉,防災,教育などに当てられるという。

府事業としては,「上野平バイパス」が19億円,「丹後町三宅~弥栄町久地」が9億5千万円。府の6月補正予算には,基地関連道路整備に1億5千万円が計上された。7割は防衛省負担という。

こうした直接的・間接的に米軍基地と絡む事業の拡大は,地元経済にとっては抗いがたい魅力だ。米軍基地受入派も,Xバンドレーダーが日本の安全に寄与し「国益」に叶うなどとは,本心では信じてはいまい。また,米軍は,たとえ「鬼畜米英」ではなくとも,やはり武器を持つ外国の軍隊であり,恐ろしいであろう。が,背に腹は代えられない。過疎地・丹後は,今日,食わなければならないのだ。

その今日食うための口実として,明日の「国益」ほど,便利で使い勝手のよいものはない。名誉と実益が,ともに手に入る。一挙両得。過疎地・丹後にとって,こんなよい話しはまたとはないのであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/06/21 at 11:30