ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

中国・SAARC・ネパール

1.汪副総理の博覧会挨拶
このところ中国は,先述のように,SAARC(南アジア地域協力連合)との関係強化に積極的だ。先日の「中国-南亜博覧会」(6月5-10日,昆明)でも,王副総理は開会挨拶でこう述べたという(southasianmedia, 7 Jun,2014)。

 ・「中国と近隣諸国との協力関係はヒマラヤのように高い。交易と開発の分野での協力は拡大している。」
 ・「南アジア途上国との貿易の95%を関税ゼロとしたい。」
 ・中国政府は,南アジア投資を年48%の割合で増額することとした。これにより,この地域は大いに発展するだろう。
 ・投資は,インフラ,エネルギー,情報通信を中心に,「建設・運営/公私協力」の方式による。交通網は,特に「中国―パキスタン経済回廊」や「中国―バングラデッシュ―ミャンマー経済回廊」を整備する。

140610b
*SAARC加盟国:インド,パキスタン,バングラデシュ,スリランカ,ネパール,ブータン,モルディブ,アフガニスタン(2007-)
*SAARCオブザーバー国:中国,日本,韓国,米国,EU,イラン,モーリシャス(2007-),オーストラリア(2008-),ミャンマー(2008-)

2.コイララ首相の対ネ投資要請
この博覧会開会式において,コイララ首相は,「一つの中国」支持を述べたうえで,ネパールへの積極的投資や,科学技術支援を要請した。

140610d 140610c
■タパSAARC事務局長/「中国,SAARC貿易拡大協力をインドに要請」(SAARC・HPより)

3.バングラデッシュ首相の「BCIM経済回廊」アピール
また,バングラデッシュのシェイク・ハシナ首相は,「バングラデッシュ―中国―インド―ミャンマー経済回廊」整備に賛成し,「2013年コルカタ―昆明カーラリー(BCIMカーラリー)」の大成功を引き合いに出し,特に道路・鉄道網拡充の重要性を訴えた。(BCIM=バングラデッシュ,中国,インド,ミャンマー)

このカーラリーについては,人民日報米国版(6月4日)も取り上げ,これは南回りシルクロードの復興といってよく,もしこれが発展すれば,それは南アジアの経済発展に大きく寄与するとコメントした。

140610a ■BCIMカーラリー(China Daily USA, 4 Jun, 2014)

4.中印接近とネパール
中国とインドは,相互に魅力的な隣国大市場だ。インドにとって,すでに中国は最大の輸入国(11.1%)であり,輸出先としては米,UAEにつぐ第3位(5.0%)の国となっている。中国側からすると,インドはまだ輸出2.3%,輸入1.0%と少ないが,見方を変えれば,それだけ伸びしろが大きいということになる。中印接近は,経済的に自然であり,必然といってもよいだろう。

ここで難しいのが,ネパール。前回も述べたように,中印は接近しつつもライバル。ネパールが中国に接近しすぎると,酷い制裁を受ける。かつて,ビレンドラ国王は,中国に接近しすぎたため,インドの介入を招き,30年に及ぶパンチャヤト体制は崩壊してしまった。また,これはどこまで事実かはっきりしないが,ギャネンドラ国王も,中国のSAARCオブザーバー参加を応援しすぎたため,インドに見放されて失脚,共和制になってしまったという(Telegraph, 9 Jun, 2014閲覧)。

今回の「中国-南亜博覧会」において,コイララ首相は,第18回SAARCサミットのカトマンズ開催(11月14日)支援を中国に依頼し,中国は積極的支援を約束した。これをSAARC盟主のインドがどう見るか。

カトマンズにあるSAARC本部の近くでは,ケバケバしい中華街が形成され,日々膨張している。空には「新舟60」が飛び交い,街中いたるところで中国企業が道路やビルを建設している。新設ダムや発電所も中国製,日用雑貨ももちろん中国製。さて,インドはどうするか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/06/11 @ 12:58

カテゴリー: インド, 経済, 中国

Tagged with ,