ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ネパール毛派称賛の目算,モディ首相演説

1.独立記念日演説の雄弁
インドのモディ首相が,8月15日,独立記念日演説をした。さすが神々の超大国,演説は長大で,拾い読みしか出来なかったが,それでもその雄大雄弁には圧倒された。

140820b ■首相演説(官邸HP)

2.大国首相の大国的率直
モディ演説のスゴさは,そのアッケラカンとした率直さに,よく現れている。

まず,自分は主席大臣(Prime Minister)としてではなく,人民の第一の僕(Prime Servant)として話していると語りかけ,人々に本当の「国益」を考え,それぞれが「自分の持ち場で誠実に努力する」ことを訴えかける。「そんなことは知らないよ」「私には関係ないね」といった,広く蔓延している無責任な態度を,国民一人一人が改めなければならない,と。

たとえば,若い娘をもつ親は,強姦(レイプ)を心配し,どこに行く,いつ帰ってくる,着いたらすぐ連絡せよ,などと細々と注意する。ところが,息子については,そんな注意などしはしない。いつ強姦犯になるかもしれないのに,無責任だ。

また,インドでは,男子1000人に対し女子940人しか生まれない。なぜか? 神のせいでは,断じてない! 医者や父母は,生まれるはずの女児を殺すべきではない。あるいは,農民はなぜ自殺するのか? 娘の結婚持参金のための借金が返せないからだ。

さらには,村では,母や姉妹たちは,苦しくても,暗くなるまで用便できない。野外でしか,出来ないからだ。なぜ便所くらい,つくれないのか? 学校でも,女生徒は,便所がないため授業を抜け出さざるをえず,勉強ができない。すべての学校に男女別便所をつくるべきだ。

3.マオイストよ,銃を鋤に!
マオイストになるのも同じこと。無実の人々を殺すマオイストも,人の子だ。親には,息子をテロリストにしてしまった責任がある。マオイストに言いたい。銃ではなく鋤を担え。そうすれば,このインドは血塗られることなく,美しい大地となろう。

140820d140820c ■演説下敷きの国連モニュメント(もとはイザヤ書)

4.ネパール毛派に学べ
「兄弟姉妹たちよ,先日,私はネパールに行った。そこで,私は世界中の人々に向け,こう語った。かつてアショーカ王は戦いの道を選んだが,暴力を目にし,心を入れ替え,仏の道を歩むことにした。ネパールの青年たちも,かつて暴力の道を選んだときがあったが,いまでは,その同じ青年たちが憲法制定を待ち望んでいるのを目にする。いま憲法をつくっているのは,かつて青年たちと行動を共にした人々だ。

また,私はこうも語った。もしネパールが武器から交渉への最善のお手本を示してくれるなら,それは世界中の青年たちを励まし暴力の道の放棄へと導いてくれるだろう,と。

兄弟姉妹たちよ,もし仏陀の国,ネパールが,世界に向けこのようなメッセージを発しているとするなら,なぜ同じことがインドに出来ないのだろうか? われわれは,いまこそ,暴力の道を放棄し,友愛の道をとるべきではないか。」

5.モディ演説の迫力
あまりにも大国的長大さのため,走り読み,飛ばし読みにすぎないが,それでもその迫力には圧倒される。

一国首相たるものが,レッドフォートの晴れがましい独立記念日演説(写真参照)で,強姦(レイプ)や、女児間引きや,結婚持参金自殺や,便所なしの惨めさを告発する!

その一方,モディ首相は,マオイストには高尚にも「銃を鋤に!」と訴えかけ,また経済界に向けては「インドに来て,インドで作れ」,そして世界中で売れ,と繰り返し訴えかける。

見事なコントラストだ。そして,それは,もちろん計算されたものだ。

「兄弟姉妹たちよ,大きなことについて語り,訴えるのは大切なことだが,訴えかけは希望をもたらすものでなければならない。もし希望が実現されないと,社会は落胆と絶望の淵に沈んでしまう。だからこそ,私たち誰にでも実現できる身近なことについて,私は訴えてきたのだ。

兄弟姉妹たちよ,首相がレッドフォートから便所をつくれ,清潔にせよ,と訴えかけるのを聞き,ショックを受けられたにちがいない。私の演説は,物議を醸し,非難されるだろう。が,私には確信がある。私の家は貧しかった。私は貧困を見てきた。貧しい人々も尊敬されるべきだとするなら,それには清潔からこそ始められるべきだからだ。・・・・」

これはレトリックであり,政治家の演説はかくあるべきだ。そこで,ネパール毛派称賛。狙いは何か?

一つは,もちろんインド国内のマオイストら反政府武装闘争派への「ネパール毛派を見習え」という訴え。そして,もう一つは,ネパール和平を称賛することにより,和平過程にお墨付きを与え,まもなく成立するはずの新憲法体制の公然たる後見人となること。

ネパール各紙が,モディ演説に狂喜しているのを見ると,モディ首相の目算どおり,ことは進んでいるようだ。やはり,インドは偉大だ。

140820a ■首相官邸HP

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/08/20 @ 14:48

カテゴリー: インド, マオイスト

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