ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

憲法基本合意,また延期

新憲法の基本合意案作成がまた延期され,2015年1月22日までに新憲法を制定・公布する,というコイララ内閣の公約の実行が微妙となってきた。

現在の議会(第二次制憲議会)は,与党がコングレス党(NC),統一共産党(CPN-UML),共産党ML,国民民主党(RPP)など,野党はマオイスト(UCPN-M)を中心とする22党連合など。議席数は,昨年11月総選挙でマオイストが大敗したため,与党が2/3以上を占めているが,新憲法を議会多数決で採択することは実際には難しい。

人民戦争停戦やそれ以降の多くの文書において,新体制はマオイストを含む諸勢力の「合意(コンセンサス)」に基づき構築するということが,繰り返し確認されている。また,現実問題としても,もし与党が一方的に多数決で新憲法を採択すれば,マオイストなどを再び反政府実力闘争に追いやることになってしまう。「合意」重視の包摂民主主義の理念からしても,また現実政治の観点からも,多数決での新憲法採択は難しいと言わざるをえない。

そこで制憲議会は,新憲法の重要課題を審議し合意を形成するための特別委員会をいくつか設置した。それらのうち最も重要なのは,次の三委員会。
 ・「憲法起草委員会」【議会内】:議長=クリシュナ・プラサド・シタウラ(NC)
 ・「憲法に関する政治的対話と合意形成委員会(CPDCC)」【議会内】:議長=バブラム・バタライ(UCPN-M)
  *Constitutional Political Dialogue and Consensus Committee (CPDCC),またはPDCC
 ・「高次政治委員会(HLPC)」【議会外】:議長=プラチャンダ(UCPN-M)

これら3委員会の相互関係はいま一つよく分からないが,ともあれ新憲法の基本構成に関する合意形成を委ねられたのが,バブラム・バタライが議長のCPDCCだ。

ところが,CPDCCでの議論は紛糾,期限までに合意形成ができず,答申提出が9月中旬,10月8日,そして次は10月16日と,2回にわたって延期された。
【主な対立点】
 ・連邦制
 ・政府形態
 ・司法制度
 ・選挙制度

これらは,いうまでもなく国家構造の基本の基本。それにもかかわらず,合意はいまだ形成されていない。事態はきわめて深刻だ。これに対し,ネバン制憲議会議長は,バブラムCPDCC議長に次のように命令した。 
 (1)10月16日までに,合意を形成し答申せよ。
 (2)もし合意形成が出来なければ,10月17日までに,争点一覧を作成し提出せよ。
現状では,(1)は到底無理であり,(2)となる可能性が大だ。

この情況を見て,与党のNCやUMLは,合意できない部分については,制憲議会本会議において投票で決定せよ,と要求している。これに対し議会少数派の野党22党連合(マオイスト他)は,投票採決には絶対反対,あくまでも諸党合意による憲法制定を要求している。

3回目の期限まであと数日,事態は緊迫している。すでにマオイスト主導の22党連合は,街頭に出て,投票採決阻止闘争を繰り広げている。

この情況に対し,HLPCのプラチャンダ議長(マオイスト)はどう動くのであろうか? ここでまた再び,人民戦争の英雄プラチャンダが鍵を握ることになるかもしれない。注目されるところだ。
 *Ekantipur,10&11 Oct; Republica,10 Oct;

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/10/13 @ 13:50