ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

中国の「シルクロード経済圏」,ネパールも参加

ネパール政府は,中国が提唱する「シルクロード経済圏(経済ベルト)」への参加を決め,北京において12月16日,合意書に調印した。これは,ネパールにとって,経済的のみならず政治的にも,大きな意味を持つ決定である(k)。 
141224b ■接近するネ中(k)

中国の習近平主席は,最近,「新シルクロード」構想を中央アジア・南アジア・欧州に向け,さかんにアピールしている。
  (1)海の新シルクロード=中国~南アジア~アフリカ~欧州
  (2)陸の新シルクロード=中国~中央アジア~欧州
この「新シルクロード」に,鉄道,道路,港湾,空港,通信・送電網,パイプライン等のインフラを整備し,「シルクロード経済圏」を形成しようという,いかにも中国らしい壮大な大計画だ。(h,i,j)

141224c ■新シルクロード構想(i)

すでに重慶~デュイスブルク(独)間は「渝新欧鉄道(Yuxinou Railway)」で結ばれ直通列車が月3回ほど運行されているし,この11月には400億ドルの「シルクロード基金」も発足させている。中国はやる気満々,この調子では,いずれすべての道は中国へ通ずということになりそうだ。

141224a ■渝新欧鉄道(AsiaBiz,2013-03-13)

ネパールが中国との間で合意したのは,この「新シルクロード」構想のネパールに関わる部分についてだ。12月16日調印の合意書の詳細は不明だが,旧シルクロードは「ラサ~カトマンズ~パトナ」とされているそうだから,この部分の開発による「経済圏(経済ベルト)」形成が,当面の具体的な目標となるだろう。すでに鉄道も道路もネパール国境近くまで延伸されているので,着手されれば,開発にそれほど時間はかかるまい。
 [参照]青蔵鉄道:シガツェ10月開通,ネパール延伸へ  ラサ-カトマンズ,道路も鉄道も  中国の周辺外交

中国とネパールの経済関係は,この数年,飛躍的に緊密化し拡大している。対ネパール直接投資は,すでに昨年から中国がインドをぬき最大となっている。貿易全体ではまだインドが最大の相手国だが,中国の伸びは目覚ましい。(a,b,e)
  ネパール貿易に占める印の割合:60%(2006)→ 53%(2013)
  ネパール貿易に占める中の割合: 3%(2006)→ 31%82013)
  ネパールの対中輸出(2014年7月中旬~11月中旬):対前年比81.9%増
  ネパールの対印輸出(2014年7月中旬~11月中旬):対前年比4.9%減
これを見ても,中国がネパールを「新シルクロード」に参加させたのも,もっともだといえよう。

しかし,その一方,この「新シルクロード」は,インドを刺激せざるをえない。ブルームバーグ(a)も,こう指摘している。
「インドと中国に挟まれたネパールでは、これまでインドが強い影響力を持っていた。4500万ドル(約53億円)が投じられるカトマンズを囲む環状道路の整備計画は、そうしたインドの存在感に対する挑戦の一つだ。」

鉄道と高規格道路のカトマンズ延伸は,ネパールの地政学的な立ち位置を激変させずにはいないだろう。(g)

[参照資料]
(a)「中国、インド独占のネパール市場への食い込み狙う-投資急増」ブルームバーグ,2014/12/15
(b)「中国、ネパール市場へ攻勢 インド抜き投資額最大、貿易急増」ブルームバーグ=Sankeibiz,2014-12-18
(c)遠藤誉「いま、ドイツと北京を直通列車が走っている 中国とEUつなぐ、習金平の新シルクロード構想」日経ビジネス,2014-4-10
(d)「『渝新欧鉄道』国際聯運の路線が全線開通」重慶市人民政府,2011-04-14
(e)”Export To China Up 81.9 Pc In Four Months,” Republica, 2014-12-18
(f)”Wang to speak in Kathmandu on China’s foreign policy,” Kathmandu Post,2014-12-21
(g)「日本紙:中国はアジア新秩序を構築 日越印連携も阻止できない」チャイナネット,2014-11-23
(h)「習主席の新シルクロード構想、「経済の起爆剤」期待も海に領有権、陸にイスラムの難題」サンケイ,2014-9-17
(i)「中国の「シルクロード構想」、周辺地域への影響力を強める狙い」ロイター,2014-11-11
(j)「中国の外交、「西進」という選択肢」チャイナネット,2014-09-14
(k)”Nepal-China IETC Meeting Reviews Bilateral Trade,” Republica,2014-12-20

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/24 @ 14:25