ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

京都の米軍基地(63):市広報英語化の倒錯と悲哀

京丹後市ホームページに,英語(米語)・中国語・韓国語への自動翻訳サービスが付加されている。いつからか私にはわからないが,「尊い国益への貢献 contribution to holy national interest 」を第一とする京丹後市のこと,ひょっとすると経ヶ岬進駐米軍へのサービスを念頭に置いたものかもしれない。(holy[形容詞]=「神聖な」,「神聖にして侵すべからずと崇められる」。下記京丹後市広報英訳参照)

150108 150108a

それはともあれ,この自動翻訳サービスは噴飯もの,日本人の私には,とんと,そのありがたさがわからない。英語への翻訳文をみると,Xバンドレーダー配備に関する中山市長コメント(2014年12月26日)は,こうなる。上が市利用のクロスランゲージ社のもの,下が無料のグーグル翻訳。(赤字強調=引用者)

【中山市長コメント原文】
米軍経ヶ岬通信所へのTPY-2レーダーの配備について
中山市長のコメント
施設の本格開始に当たり、我が国の平和と安全という尊い国益への貢献を真摯に願うとともに、自治体としては、同時に、様々な面での住民の安全、安心の確保が大前提であるとして、この間、このための準備や対策に国、米軍、京都府、地元住民はじめ関係者の皆さんとともに、万全に取り組んできました。
引き続き、万全な騒音対策、交通安全対策など住民の安全、安心確保のためのあらゆる対策の確実な履行を求めるとともに、その徹底に尽力してまいります。

【京丹後市(クロスランゲージ社)翻訳】
Pass through the United States Armed Forces; about deployment of TPY-2 radar to ka cape communication place
Comment of Mayor Nakayama
Of facilities please be sincere by contribution to holy national interest of peace and security of our country on starting in earnest; and of inhabitants with aspects at the same time various for municipality was perfect with people concerned for preparations and measures for this purpose during this period at country, the United States Armed Forces, Kyoto, the local people beginning, and wrestled saying that security of relief was main premise safely.
We demand perfect anti-noise measures, certain observance of a contract of every measure for safely reliable security of inhabitants including road safety measures sequentially and will make an effort for thorough.

【グーグル翻訳】
For deployment of TPY-2 radar to the US military Kyogamisaki Communication Station
Nakayama mayor of comments
Hit the full-scale start of the facility, as well as sincerely hope to contribute to the precious national interests of peace and security of our country, as local governments, at the same time, residents in the various aspects safety is a secure peace of mind is the basic premise, during this time, country in preparation and measures for this, the US military, Kyoto Prefecture, with your local residents beginning officials, and has been working to perfection.
Continue, thorough noise measures, traffic safety measures of residents such as safety, as well as seek a reliable implementation of all measures for safe secure, we are committed to the thorough.

私には英語の知識はほとんどないが,常識からして,どうも変だ。どっちもどっちのような気がするが,それでも字面からして,タダで誰でも使えるグーグル自動翻訳の方が,見栄えがよろしい。では,どうするか?

京丹後市使用のクロスランゲージ社の指示によれば,京丹後市は,文書を次のような手法で改善する必要がある(要点抜粋,同社HP参照)。

▼日本文の前編集
 文章を短くする,文章を切る,文を簡潔にする,あいまいな表現を避ける。
  ×最近のゲーム機は操作が難しい。→ ○最近のゲーム機の操作は難しい。
  ×私はコーヒーにします。→ ○私にはコーヒーをください。

▼英語の後編集
 原 文:もし私が死んだら、私の母は悲しむでしょう。
 訳 文:My mother will grieve if I die.
 後編集:My mother would grieve If I were to die.
 
 原 文:私が四歳だったときから、私は彼女を知っています。
 訳 文:I know her since I was 4 years old.
 後編集:I have known her since I was 4 years old.

 原 文:返事をお待ちしております。
 訳 文:I wait for an answer.
 後編集:I wait for your answer.

 原 文 そのケーキはそば粉で作られている。
 訳 文 The cake is made with buckwheat flour.
 後編集 The cake is made from buckwheat flour.

これは途方もない指示だ。ウソだと思うなら,前掲の中山市長コメントの「前編集」と「後編集」をやってみていただきたい。そんなことが出来るくらいなら,自動翻訳など使わず,最初から英文を書いた方が,はるかに速く効率的だ。

しかし,それはそれ,文化的・社会的にみて本質的により問題なのは,このような英訳サービスが,「正しい英語」に日本語をあわせようとしている点。正確で正しいのは英語,不正確で間違っているのは日本語!

これは最初の英語授業で習うことだが,英語と日本語は文法構造が異なる。換言すれば,ものの見方,表現の仕方,つまりは精神構造が異なる。どちらが正しいというわけではない。二つの異なるものの見方,つまりは英語文化と日本語文化があるということだ。

それなのに京丹後市使用の自動翻訳マニュアルは,英語に翻訳できるように日本語を書き直せ,と要求している。言葉は文化であり精神であり魂だから,これは日本の文化や精神や魂を改造しアメリカ化せよ,ということに他ならない。

逆ではないか? 日本語が英語に自動翻訳できないのなら,日本語に合うように英語を変えるべきだ。少なくとも日本では,日本の言語や精神や魂が理解できるよう,アメリカ人のものの見方や考え方,つまりはアメリカ人の精神構造を修正すべきだ。いや,より正確に言うなら,アメリカ人の精神構造を多文化化し,日本文化を英語でも正しく理解し表現できるように教育すべきなのだ。日本語が曖昧なのではない。英語が貧弱であり,日本語の豊穣を盛りきれないのだ。

しかしながら,このような問題意識は「尊い国益への貢献」を第一とする人々には,ない。それどころか,米兵をみたら英語で話しかけ,看板やメニューは英語に変えようと躍起になっている。いずれそのうち,子供らが「ギブミー・チョコレート」と米軍ジープに駆け寄ることだろう。Xバンドレーダーで,いったい何を守るつもりなのだろう?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/01/08 @ 19:24