ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

国土改造ブームのネパール

カトマンズでも地方でも,土木工事。道路拡幅,下水道敷設,河川改修などなど。正式憲法なんかなくても,ネパールは,活気に満ちている。世界最高水準の憲法があっても,老化衰退落日の日本とは好対照だ。

ネパールの国土大改造に突破口を開いたのは,マオイストだ。支配有産階級の既得権益など一顧だにせず,被差別カースト・少数民族の解放を進める一方,まずは道路建設に着手した。

お手本は,マオイストの博士バブラム・バタライ幹部(党・政府要職歴任*)。地元ゴルカに立派な高規格道路を建設したかと思えば,カトマンズでは居住者の訴えに一切耳を貸すことなく,文字通り蛮勇をふるって,情け容赦なく家やビルを破壊し,道路を造っていった。このマオイストの革命的国土改造政策は,第二次制憲議会選挙で大勝したNCとUMLの現政権もチャッカリいただき,さらにそれに拍車をかけている。
 * 「博士(Dr)」は,ネパールでは権威中の権威。首相在職中(2011-13)でも,呼びかけは「博士」。「博士」であり,しかる後に首相であったマオイスト。ほほえましい。

ネパールの道路建設は,革命的に乱暴だが,それはそれなりに優先順位を付け,合理的に工事を進めていることがよく分かる。路側を掘削して大きな段差が出来ても,舗道上に深い穴が出来てもそのまま。が,大丈夫,車も歩行者も,その程度のことは十分予測して通行する。車が転落し仰向けになっても,歩行者が穴に落ち足を骨折しても,自己責任,注意不足にすぎない。

あるいは,たとえば何回か取り上げたカランキ交差点。環状道路と市内からタンコットへ向かう道路が直交する大交差点だが,信号機は撤去され交通警官手信号,ときにはそれすらなく運転手の自主判断で通行する。超ローテク人力交差点。そして,その上に架かるのは,必要最低限ギリギリの,革命的に安普請の貧相な陸橋。こんなトンデモナイ交差点は,日本は絶対に造りはしない。しかし,現実には,これが交差点として十分に機能しているのだ。

むろん,この国土改造のネパール方式は,先進諸国には受け入れられないだろう。個人の権利は尊重しなければならないし,伝統や文化,環境や景観も尊重しなければならない。そして,何よりも,先進諸国では,人々が国家を信用し政府に依存して生きているからである。

▼道路工事
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 ■マイティデビ/同左

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 ■マッラホテル付近/ダーラン(スンサリ)の道路拡幅・下水道工事

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 ■環状道路(ドビガード付近)のネパール式=中国式拡幅工事/同左

▼住民の抵抗
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 ■2階以上死守/歩道新設のため撤去されたと思われる1階の壁(マイティガル)

▼整備された道路
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 ■ビラトナガル~ドゥハビ~ダンクタ道路/バラトプル~イラム道路。高所の峠でも,道路も送電線もよく整備されている。付近は茶畑。

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 ■超近代的都市道路(ビシュリバザール付近)。片側4車線+歩道+太陽光LED照明

カランキ交差点(2012年)
 
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谷川昌幸(C)