ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

あつものに懲りて憲法を消す朝日新聞

朝日新聞(2月23日)が,記者会見(2月20日)における皇太子の憲法発言を報道しなかった。池上彰が「新聞ななめ読み」(2月27日)に,「皇太子様の会見発言 憲法への言及 なぜ伝えぬ」というタイトルをつけ,抑制された筆致ながらも,その報道姿勢を厳しく批判している。

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天皇には,周知のように,憲法尊重擁護の義務がある。「第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」

皇太子は,日本国の最高法規(第98条)たる憲法の精神と規定に従い,皇太子としての義務を忠実に果たすため,次のような発言をした(赤字強調引用者)。

[今年は戦後70年の節目の年です。戦争と平和への殿下のお考えをお聞かせください。]
『私は、今年で55歳になりますが、天皇陛下が即位されたのと同じ年になったと思うと、身の引き締まる思いと共に、感慨もひとしおです。私は、常々、過去の天皇が歩んでこられた道と、天皇は日本国、そして国民統合の象徴であるとの日本国憲法の規定に思いを致すよう心掛けけております。・・・・

先の大戦において日本を含む世界の各国で多くの尊い人命が失われ、多くの方々が苦しい、また、大変悲しい思いをされたことを大変痛ましく思います。・・・・亡くなられた方々のことを決して忘れず、多くの犠牲の上に今日の日本が築かれてきたことを心に刻み、戦争の惨禍を再び繰り返すことのないよう過去の歴史に対する認識を深め、平和を愛する心を育んでいくことが大切ではないかと思います。・・・・

私自身、戦後生まれであり、戦争を体験しておりませんが、戦争の記憶が薄れようとしている今日、謙虚に過去を振り返るとともに、戦争を体験した世代から戦争を知らない世代に、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切であると考えています。両陛下からは,愛子も先の大戦について直接お話を聞かせていただいておりますし,私も両陛下から伺ったことや自分自身が知っていることについて愛子に話をしております。

我が国は、戦争の惨禍を経て、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、平和と繁栄を享受しています。戦後70年を迎える本年が、日本の発展の礎を築いた人々の労苦に深く思いを致し、平和の尊さを心に刻み、平和への思いを新たにする機会になればと思っています。・・・・』

ところが,朝日新聞記事(島康彦記者)は,この会見発言から「日本国憲法」を消してしまった。

『皇太子さまは23日、55歳の誕生日を迎え、これに先立ちお住まいの東宮御所で記者会見に臨んだ。

戦後70年を迎えたことについて「戦争の記憶が薄れようとしている」との認識を示し、「謙虚に過去を振り返るとともに、戦争を体験した世代から、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切」と指摘した。また、今年1年を「平和の尊さを心に刻み、平和への思いを新たにする機会になればと思っています」と話した。

天皇陛下が即位した55歳と同年齢になったことには「身の引き締まる思いと共に、感慨もひとしおです」と述べ、常々、過去の天皇が歩んできた道に「思いを致すよう心掛けております」と明かした。』

これが,池上氏の批判した2月23日付東京版朝刊記事。ネット版2015年2月23日05時00分の記事も,そうなっている。ところが,そのわずか1分後の2015年2月23日05時01分の記事は,次のようになっている。

皇太子さまは23日、55歳の誕生日を迎え、これに先立ちお住まいの東宮御所で記者会見に臨んだ。

『戦後70年を迎えたことについて「戦争の記憶が薄れようとしている」との認識を示し、「謙虚に過去を振り返るとともに、戦争を体験した世代から、悲惨な体験や日本がたどった歴史が正しく伝えられていくことが大切」と指摘した。

また、「我が国は、戦争の惨禍を経て、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、平和と繁栄を享受しています」と述べ、今年1年を「平和の尊さを心に刻み、平和への思いを新たにする機会になればと思っています」と話した。

天皇陛下が即位した55歳と同年齢になったことには「身の引き締まる思いと共に、感慨もひとしおです」と述べ、常々、過去の天皇が歩んできた道に「思いを致すよう心掛けております」と明かした。』

1分前には無かった「日本国憲法」が,1分後のこの記事の中には,一カ所ながら,現れている。これは奇っ怪! いったいどうなっているのか?

一読者には,この変更の事情は全く分からないが,池上氏が読んだ東京版朝刊記事には皇太子の憲法への言及が全く記載されていなかったことは確かだ。池上氏が憤慨するのも,もっともである。

このところ,朝日新聞は,全く面白くも,おかしくもない。あつものにこりて,何を扱うにせよ,こわごわ,批判精神のかけらもない。新聞は社会の木鐸ではなかったのか? 

150227b島康彦記者ツイッター

(注)批判:1 物事に検討を加えて、判定・評価すること。「事の適否を―する」「―力を養う」 2 人の言動・仕事などの誤りや欠点を指摘し、正すべきであるとして論じること。「周囲の―を受ける」「政府を―する」(朝日新聞コトバンク=デジタル大辞泉)

[参照]
天皇「愛国心」回答
天皇の憲法遵守発言の「政治的」意味
天皇「愛国心」回答にみる立憲政治

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/02/27 @ 21:57

カテゴリー: 平和, 憲法

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