ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

震災救援の複雑な利害関係(1):報道

ネパール地震被害は,死者7652人(5月5日現在)に及び,なお不明者も少なくなく,さらに犠牲者が増えるのではないかと心配されている。

ネパールは内陸国で,陸路も空路も不十分だが,地震発生直後から多くの救援隊が駆けつけ,けんめいの救援活動に当たってきた。国際機関,外国政府,外国地方政府,INGO,NGO,そして様々な団体や個々人。ネパールが世界の人々からいかに愛されているかがよく分かる。

こうした救援活動は必要なものであり求められてもいるが,その一方,そこには技術的・物理的な困難に加え,政治的・社会的困難も,つねに伴う。震災救援の最も基本的な構造は,図式化すれば,次の通り。(個人や小集団の私的直接支援はのぞく。)

   救援活動支援者———-救援実施機関———-被災者
 世界の諸国家(世界世論)—–国連,国際機関————被災国,被災地住民
 国民(国内世論)————国家,地方政府————被災国,被災地住民
 構成員,一般市民————INGO,NGO—————-被災国,被災地住民

救援実施機関は,一方で救援活動支援者の支持・協力を得なければならず,他方で被災国・被災住民の要望に応えなければならない。当たり前といえばその通りだが,実際には,これがなかなか難しい。

ネパールにおいてこの困難に最も当惑しているのが,インド。インドは,ネパールの隣国であり,文化,政治,経済など,あらゆる分野できわめて密接な関係にある。したがって,地震発生後,ただちに救援活動を開始し,陸と空から大量の救援隊と救援物資を送り込み,救援活動を展開してきた。

ところが,そのインドの救援活動が,ネパールのあちこちで激しい非難を浴び始めた。一つは,救援活動の報道姿勢。下図は,その典型で,広く世界に流布されている。

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■ツイッター4月29日(twitter.com/mirsuhail)/同5月4日(GoHomeIndianMedia @phalano’s creation! #NepalEarthquake )

民主主義国インドの連邦政府や州政府は,当然,世論を背景にネパール救援活動をしているのであって報道は必要不可欠だし,インド・メディアも視聴者や読者そしてスポンサーを満足させなければならない。インドの救援活動報道は,複雑な利害関係を背景にして展開されている。ところが,これがネパールの人々の神経を逆撫でする。特に救助空軍ヘリに記者を同乗させていることが,激しい反発を招いているのだ。

同種のことは,インドほどではないまでも,他の救援実施機関についてもみられる。救援でインドと競っている中国は,かなり露骨に,救援活動を報道し,アピールしている。

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■新華社5月4日/同5月7日

150506d ■バブラム・バタライ氏ツイッター(5月3日)

また,米英なども国名や援助機関の名称を入れ援助活動を大きく報道しているし,INGOやNGOも,多くの場合,国家以上に華々しく救援活動を報告したり報道させたりしている。

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■USAID

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■UKAID

150506k■パキスタンの救援物資(Dawn,4 May 2015)

被災状況は,報道されなければ外部に知られず,必要な支援も始まらない。そして支援が始まってからも,活動の報告や報道がなければ,世論や関係者の協力が得られず,継続的な支援はできない。

災害報道は不可欠だが,そこに,関係者の利害や感情が複雑に絡む。難しい。

Cf. “Indian media jingoism was trigger for backlash in Nepal,” The Hindu, 5 May 2015

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/05/07 @ 11:44

カテゴリー: インド, ネパール, 国際協力, 情報 IT

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