ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

震災救援の複雑な利害関係(5):米国「支援の手作戦」と日本

アメリカは,「支援の手作戦(Operation Sahayogi Haat)」を展開している。いかにも世界超大国アメリカらしく,総合的で効率的な「作戦」だ。ネパールの被災住民にとって,頼りになる力強い救援「作戦」であることはいうまでもない。

150516d■支援の手作戦(海兵隊ツイッター5月11日)

米国のネパール震災救援(2015-05-14現在,在ネ米大使館FB5月14日)
  米国対ネ援助総額:$27,648,399
  国防省:$8,809,856(4万人の医療品,3か月分ほか)
  USAID外国災害救援:$21,000,000(救援物資17万5千ポンドほか)
  USAID平和のための食糧:$2,500,000(17,500人にビニールシート700巻ほか)

150516c■在ネ米大使館FB(5月14日)

その一方,この「支援の手作戦」も米軍中心の「作戦」であり,ネパールへの米軍の緊急展開や中ネ国境付近での米軍の作戦行動は,当然,軍事的意味を持ちうる。しかしながら,ネパールでは今のところ,オスプレイが風圧で民家を壊すといった苦情があるくらいで,インドの「ともだち作戦」に対するような「作戦」そのものへの表立った批判はない。

米軍「支援の手作戦」が大きな意味を持ちそうなのは,むしろ,米軍の軍用機や人員の主な発進基地となっている日本においてである。

米軍は,沖縄の海兵隊中将を指揮官とする「第505統合任務部隊」を編成し,沖縄や横田の米軍基地から軍用機で救援隊や救援物資をネパールに運んだ。

米軍派遣航空機
 オスプレイ 4機;KC-130J 2機; C17 4機
 UH-1Yヘリ 3機(1機墜落,海兵隊6名,ネ兵2名死亡との報道)

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 ■C-130 Hercules,嘉手納発進(嘉手納空軍基地HP4月29日)/横田発進(在日米軍ツイッター5月7日)

この「支援の手作戦」により,軍が迅速かつ広範な「作戦」展開能力を持つことの有効性が,改めて日本の人々に強く印象づけられた。しかも,「人道支援」「災害派遣」という,誰にも反対しにくい日本人好みの平和的「作戦」によって。積極的(proactive)な平和貢献には,米軍のような積極的な「作戦」展開能力が不可欠だということ(”proactive”は米軍愛用)。

特にオスプレイは,ヘリのような運用に加え,航続距離が長く,速度も速く,大量の人員・物資を輸送できる。災害救援はむろんのこと,尖閣など離島防衛にも有効だ。あるいは,日本の領域を超えた遠方での作戦のことまで考えるなら,なおさら有効性は増すといってよいであろう。

というわけかどうか知らないが,日本政府もオスプレイを17機(3600億円)ばかり購入し,佐賀空港かどこかに配備する計画らしい。

150516b■カトマンズ着オスプレイ(沖縄海兵隊HP5月4日)

大規模災害は,いつ,どこで起こるかわからない。そのための備えは必要不可欠だ。しかし,それを軍にやらせるのは,特に日本にとっては危険だ。軍の場合,どこに派遣されようが,多かれ少なかれ軍事的意図を勘ぐられ,敵視される。

日本は,平和憲法をもつ日本こそは,いついかなる時に,いかなる場所に派遣されようとも,軍事的に警戒されることのない,完全非軍事の有能な,世界で最も信頼される常設救援隊をもつべきであろう。

【参照】野口健ツイッター(5月18日)
「先日、米軍ヘリがネパールで墜落し複数の犠牲者をだしたばかりなのに、米軍オスプレイは救援物資を積み飛び続けている。昨日カトマンズの空港でオスプレイを見ましたが、一緒にいたシェルパ達が涙ぐみながらオスプレイに手を合わせて祈りを捧げていた。」

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/05/16 @ 11:58