ネパール評論

ネパール研究会

京都の米軍基地(70):教授事情聴取と活動家逮捕の威嚇効果

1.教授と学生の事情聴取
京丹後で,立命館大学の教授と学生2人が,米軍基地無断侵入容疑で京都府警に事情聴取された。

5月31日付の京都新聞と産経新聞の記事によれば,教授は,学生13人を引率し,平和学習のため経ヶ岬の米軍基地に来ていた。30日午後5時頃,学生が基地の写真を撮ろうとして基地敷地内に入ったらしい。

立命館大学の説明では,敷地境界には「ロープが垂れ下がった状態で張られていたのみ」(産経)だったそうで,学生はそれとは気づかず敷地内に足を踏み入れたようだ。

*京都新聞「『米軍基地に侵入』立命大教授ら聴取 京都府警、学生2人も」ネット版5月31日
*産経新聞「立命大教授ら米軍レーダー基地に無断侵入 『平和学習』の一環で周辺見学中…米軍側通報 京都府警が任意聴取」ネット版5月31日

150607b■空自と米軍の基地(グーグル2013年9月)
 
2.抗議活動家の逮捕
一方,大阪府警は6月4日,米軍基地抗議活動家3人を逮捕した。容疑は,昨年9月28日,抗議活動参加者約40人を,大阪梅田から経ヶ岬米軍基地付近までバスで運び,1人当たり3500円の実費(参加費?)を受け取った道路運送法違反(白バス営業)。

昨年のことなのに,いまなぜ,このタイミングで,しかも逮捕までしたのか,不可解だ。

*京都新聞「白バス容疑で活動家ら逮捕 大阪府警、反基地運動に絡み」ネット版6月4日
*産経新聞「『Xバンドレーダー』抗議活動参加者乗せて“白バス”営業 活動家らを逮捕 大阪府警」ネット版6月4日

150607a■米軍基地測量(グーグル2013年9月)

3.事情聴取と逮捕の威嚇効果
京丹後は,長らく反基地闘争などとは無縁の静かな地域であった。そこの住民の多くにとって,今回の事情聴取と逮捕は,お上に異議を唱えたり,たてついたりすることの恐ろしさを,具体的な形で思い知らされる初めての出来事であったはずだ。

特に恐ろしいのは,教授・学生の事情聴取。立命館大学は,前述のように,米軍基地との境界には「ロープが垂れ下がった状態で張られていたのみ」だったと弁明している。おそらく,これは事実であり,学生も軍事基地との境界とは気づかず,うっかり踏み越えてしまったのだろう。

これが恐ろしい。壁や有刺鉄線で明確に区画されておれば,誰にでも危険の存在は一目瞭然。だか,今回はそうではなかった。だから,そこに行ったのが他の誰であっても,無断侵入,署に連行,事情聴取の可能性はあったわけだ。一般市民にとって,これほど恐ろしいことはない。なにはともあれ,米軍には近づくな! 威嚇効果,絶大だ。

今回は米軍敷地内への無断侵入だったが,この手法は,他にいくらでも応用可能だ。車で行けば,スピード違反や違法駐車(いたるところに監視カメラあり)。民家敷地や田畑などの私有地に足を踏み入れれば,不法侵入。仲間を実費で運べば無許可営業。反対派を取り締まる口実は,いくらでもある。たとえ無理筋で有罪にすることはできなくても,取締側は,なんらかまわないわけだから。

すでにネットでは,教授や学生への激しい非難攻撃が始まっている。日米当局は,バッシングの自然増殖を黙ってみているだけでよい。便利な世の中になったものだ。
 
(補足)グーグルなら,軍事基地内をいくらのぞこうが,処罰されません。グーグルには,個人住宅や通行人ばかりでなく,軍事基地内をもっともっと頻繁かつ高解像度でのぞき,その実態を世界に知らしめることをお願いしたい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/06/07 @ 09:26

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