ネパール評論

ネパール研究会

腐敗「ゼロ・トレランス」を首相約束,復興国際会議

ネパール復興国際会議が6月25日に開催され,参加諸国・諸機関が約30億ドルの復興援助を約束した(集計方法により援助約束額は異なる)。

援助約束(億ドル):印10,中4.6,日2.6,米1.3,EU1.12,ノルウェー0.13,アジア開発銀行6,世界銀行5 (*3)

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 ■国際援助とコイララ首相(Nepali Times, 25 Jun)/援助額(Republica,26 Jun)

しかし,これらの巨額援助の約束は,無条件ではない。ネパールにおける汚職の蔓延は周知の事実であり,したがって援助側は,今回も,援助実施における透明性説明責任の確保を強く要求した(*1)。

そこでコイララ首相も,国際会議あいさつにおいて,「わが政府は腐敗に対しゼロ・トレランス(絶対不寛容)で対処することを約束します」と明言せざるをえなかった(*4)。しかし,この約束ほど,ネパールにおいて守るのが難しい約束はないといっても過言ではあるまい。

Mahanand Timalsina
「ネパールにおける外国援助の効果に関する最近の研究によれば,援助金の多くが――いくつかの推計では90%もが――間接経費と天井知らずの国際コンサルタント料に割り振られている。」(*1)
Kunda Dixit
「この1か月あまりの間にも,援助物資の多くが妨害されたり特定政党地盤に送られたりしているし,そればかりか売り飛ばされてしまったものさえある。」(*3)

150627d■届かない援助 by Subhas Rai(Kunda Dixit FB 2015-06-26)

このように,ネパールにおける事業実施の透明性や説明責任の確保は,ネパール人自身が認めているように容易ではないが,しかし,それでも被災者救援が切実に必要とされていることは紛れもない事実である。世界社会には,その構成員たるネパールの復興を最大限支援する道義的義務がある。

では,復興支援の条件である腐敗「ゼロ・トレランス」は,どうすれば実行できるようになるのか? 

むろん,一気呵成とは行かない。迂遠と見えるかもしれないが,やはり基本は国家ガバナンスの確立以外にあるまい。すなわち,正式憲法を制定し,正統な安定した中央政府を樹立する一方,地方選挙を実施し,援助現場たる地方の自治体を再建すること,これである。

[参照]
(*1)Mahanand Timalsina,”PROMISES TO KEEP,”Republica,26 Jun 2015
(*2)”Over $3 billion for Nepal,” Nepali Times,June 25, 2015
(*3)”Donors Pledge Billions to Help Rebuild Earthquake-hit Nepal,” Nepal National,26 June 2015
(*4)”PM Koirala’s inaugural speech, Foreign Minister’s welcome speech, FinMin’s theme address at donors’ conference,” Himalayan,June 25, 2015
(*5)ネパール復興に関する国際会議 城内副大臣ステートメント「ネパールのより良い復興に向けて」平成27年6月26日 http://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sw/np/page22_002081.html

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/06/27 @ 23:54

カテゴリー: 行政, 国際協力, 憲法

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