ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

マイナリ副首相「タライ併合」発言に,インド激怒

1.印大使館プレスリリース
CP・マイナリ副首相兼女性・子供・社会福祉大臣(ネパール共産党マルクス・レーニン派)の発言に,インドが激怒,在ネ印大使館が非難声明を発表した。

インド大使館プレスリリース(2015年11月8日, 印大使館HP)[要旨]
当大使館は,CP・マイナリ副首相が2015年11月7日,カトマンズの記者クラブで行ったインドに関する発言につき,強く非難する。副首相発言は,根拠のない悪意に満ちたものであり,ネパールが直面している真の問題から目を逸らさせるものである。

インドの願いは,ネパールの平和,安定,繁栄のみ。インドは,ネパールの内政問題が政治的対話と和解により解決されることを願っている。そのためのあらゆる努力を,インドは支援する。

2.マイナリ副首相のインド非難発言
インドをこれほど怒らせたのは,カトマンズ記者クラブでのマイナリ副首相の11月7日の発言。「カトマンズポスト」(11月7日)が伝えた。

インドの狙いは封鎖によるタライ併合:マイナリ副首相(Kathmandu Post, 7 Nov)[要旨]
CP・マイナリ副首相は,インドによる非公式封鎖はネパールを解体しインド領に併合するための第一歩だ,と主張した。

マイナリ副首相は,タライ地方分割に関するRK・ヤダブ前研究分析局(RAW)局長の主張について,インドは釈明していない,と語った。インデラ・ガンディー首相のときRAW局長だったヤダブは,その著書において,インドはタライ地方の分離を計画していた,と述べている。インドは,封鎖によりその計画をいま実行しつつある,とマイナリ副首相は主張した。

マイナリ副首相はまた,マデッシュ州要求には,どのような犠牲を払おうが応じられない,と語った。要求されているカイラリ,カンチャンプル,スンサリ,モラン,ジャパの諸郡は,マデシュ州には含めない,と彼は語った。

このカトマンズポスト記事は,マイナリ副首相発言の直接引用ではないが,他紙も報道しており,ほぼこの趣旨の発言があったのだろう。

インド国境沿いのタライ・マデッシュ地方の分割・インド併合は,巷ではしばしば議論されているが,副首相が記者会見で述べたとなると,インドとしては見過ごすわけにはいかなかったに違いない。

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 ■マイナリ副首相とタライ分割6州案(同氏FB,2013年10月14日)

3.プラチャンダ議長の反印プロパガンダ
オリ政権は,前回も述べたように,反印ナショナリストと見られている。オリ首相は,「もしインドがネパールを支配しようとするなら,われわれは戦う覚悟をすべきだ」などと発言しているし,またオリ政権を生み出し支えているUCPNのプラチャンダ議長も,「非公式封鎖」には立ち上がる用意ができていると述べている。

このうち,特にプラチャンダ議長は,マオイスト人民戦争を勝利に導いた勇敢な英雄であり,あけっぴろげの庶民受けする雄弁家でもあり,影響力が強い。その彼が,「ニルマル・ラマ記念アカデミー」総会(11月8日)において,次のように述べている。

「ネパールの人々は,飢えに苦しめられ,交通手段を奪われ,燃料ガスもない。医薬供給がなく,死ななければならない。すべて,ネパールが自ら憲法を制定公布したからなのか? 隣国は,これに対し,どのような態度をとっているのか? この非人道的な国境封鎖の背後には,どのような理由があるのか?」

 130603■習主席とプラチャンダ議長(新華社)

4.反印プロパガンダの甘えは許されるか?
ネパールには,以前から強い反印感情があり,激しいインド非難もことあるごとに繰り返されてきた。いわば,慣れっこ。

しかし,ネパールの情況は,ネパールの民主化と中国の接近により,以前とは大きく変化してきた。これまでのように,内政に問題があれば,インドを悪者に仕立て不満を外に逸らす,あるいは保護国の悪口を言いつつ保護国に依存する,といった甘えの手法は,もはや通用しなくなりつつあるのではないだろうか? このことについては,次回,検討してみることにする。

 151027■S.H. Shrestha, Nepal in Maps, 2005, p.99

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/11/09 @ 18:22