ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

首都で薪販売開始,ネパール政府

ネパール政府が,燃料不足に対処するため,薪の販売を始めるらしい。

森林・土壌保全省が11月10日,「ネパール材木会社(TCN)」に対し,バラ郡,ナワルパラシ郡などの森から燃料用木材を集め,都市部に運び,とりあえずカトマンズとパタンで11月13日から販売を始めるように指示した。トラック215台分だという。

カトマンズやパタンは,今では生活様式は東京や大阪などと大差なく,中心部の人口密度はむしろ日本より高いはずだ。そんな大都市のど真ん中で,市民やレストランが薪で煮炊きする。あるいは,金ぴか高級マンションの窓から,薪ストーブの煙突がのぞき,煙をもくもく吐き出す。超近代的で絵にはなるだろうが,大丈夫かな?

ネパールの家庭燃料は,全国では薪64%,LPG21%(2011年度)だそうだ。地方は,まだまだ薪使用が多い。だから薪調達が不可能というわけではない。

しかし,薪は16ルピー/Kgだそうだ。これは,とんでもない高値ではないか? 森林省は,地域の共有林の枯木や枯枝を集めて都市部へ運び,売れ,と指示しているが,素人が考えても,そんなことで間に合うはずがない。

すぐに始まるであろうのは,地方住民の使うはずの薪を高値で横取りし,都市部住民に売り,儲けること。もう一つは,森林を伐採し,はげ山化,砂漠化に拍車をかけること。

いずれにせよ,石油漬け,ガス依存になってしまった都市生活の危機を代替薪で救うのは,中長期的にはむろんのこと,短期的にも無理である。

また,中国からの石油やガスの輸入も,悪路と冬季に入ることを考えると,あまり期待はできない。やはり,何とか早く,マデシ紛争を解決し,ビルガンジ国境通過を正常化する以外に方法はあるまい。

森林省は「ネパール石油会社」に対し,薪運送トラックへの石油優先供給を要請したそうだ。

[追加] (11月15日)
薪価格: 15ルピー/Kg,1家族110Kgまで(15日報道)。

私自身,高度成長以前の日本の村で,薪を煮炊きや風呂沸かしや暖房に使っていたが,すべて自宅裏の山から採取してきた薪。原料は,造林の際,間引いた木や雑木であり,加工用木材としての価値はほぼゼロ。

ネパールの薪使用は,林業と両立していた日本のそれとは,かなり異なるようだ。報道写真を見ると,カトマンズに運び込まれている薪は,どうみても枯木や枯枝ではない。伐採がいつかはわからないが,薪用に販売されている材木は,建物や家具などに使用可能な立派な大木である。こんな大木を燃やしてしまってよいのか? そんなことをすれば,ネパールの森林がまた減るのではないか? 心が痛む。

そもそもカトマンズの薪価格は高い。煮炊きならまだしも,暖房に使ったら,すぐなくなってしまうだろう。

(参照) Kathmandu Post,6,11,12 & 15 Nov; time.com,11 Nov.

150502b■カカニの森林伐採(谷川,2002)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/11/14 @ 11:13

カテゴリー: 経済

Tagged with , , ,