ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

印政府援助カット,中国政府航空機押し売り

ネパールは,政治大国印中に挟まれているため,ことあるごとに難しい判断を迫られる。昨年10月発足のオリ政権も,いま印中の間で,どのような立ち位置をとるべきか,難しい選択に直面している。

1.インド:対ネ援助40%カット
印政府が2月29日発表した2016年度予算によれば,対ネ援助は前年度の40%カット,48億ルピーとなっている。オリ首相訪印(2月19-24日)直後だけに,ショッキング。

印ネ各紙記事では,大幅カットの理由は,オリ政権低評価ではなく,ネパール政府の援助事業実施不効率だという。ネパールにおける事業進捗にはADBなどの援助機関も批判的だ。震災復興援助事業ですら,実際の進捗状況は極めて悪い。援助を約束しても実施できないのなら,援助額を減らせということ。

しかし,インディアン・エクスプレス(3月1日)が「オリ首相訪印後,対ネ援助40%カット」といった見出しを付けているように,対ネ援助大幅カットがオリ政権評価と無関係とは思えない。やはりオリ政権への一種の警告と見るべきだろう。

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■印政府HP/印震災救援「トモダチ作戦」

2.中国:航空機押し売り
一方,中国政府からは,オリ首相訪中(20日から)を前に,中国製航空機の購入を迫られている(Himalayan, 3 Mar)。納入先はネパール航空(NAC)。

中国がネパール政府に購入を迫っているのは,MA60(新舟60)1機とY12e(運12e)3機。ところが,これらの中国製航空機は,国際航空機関の認証がなく,またアフターサービスも手薄で,運航・維持費が極めて高い。そのため,NACは購入に強く反対している。

NAC幹部によれば,MA60(58席,2014年4月購入)は月1週間も飛行できず,赤字垂れ流し。また,Y12Eも運航状況は極めて悪い。NACとしては,もはやこれ以上中国製航空機の購入・運用はできない,ということらしい。

これに対し,中国側は,これらの航空機購入はすでに2012年の両国交渉で決めているので,3月20日のオリ首相訪中以前に4機を導入せよ,と要求しているという。ネパール政府は,この中国側の要求を受け入れ,ちかぢか購入決定の予定。(参照:中国製航空機の運航不安

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■新舟60(新華社2014年4月28日)/尖閣接近のY12(防衛省=共同2012-12-22)

3.南の獅子,北の龍
ネパールにとって,中印は,それぞれに対する「カード」として利用できることもあるが,利用しようとすれば,内政干渉やごり押しの危険もそれだけ増大する。やはり,ネパールにとっては,「印中の架け橋」が,実際には,理想である以上に,最も現実的な外交の基本指針となるであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/03/03 @ 17:57

カテゴリー: インド, ネパール, 外交, 中国

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