ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

改宗勧誘は禁錮5年,刑法改正案

オリ政府が,改宗勧誘処罰を規定する刑法改正案の議会提出を準備している。これに対し,宗教関係者,とくにキリスト教会が激しく反発している。先述のクリスマス公休祭日指定取り消しともあいまって,今後,大きな問題となりそうだ。

1.憲法の宗教関係規定
【1990年憲法】
第4条 王国
(1)ネパールは,・・・・ヒンドゥー教の立憲君主国である。
第19条 宗教に関する権利
(1)・・・・何人も,他人をある宗教から他の宗教に改宗させる権利を有しない。
【2007年暫定憲法】
第4条 ネパール国家
(1)ネパールは,・・・・世俗的な連邦民主共和国である。
第23条 宗教に関する権利
(1)・・・・何人も,他の人をある宗教から他の宗教に改宗させる権利を有しない。他の人の宗教を害するような行為は,なされてはならない。
【2015年憲法】
第4条 ネパール国家
(1)ネパールは,・・・・世俗的な連邦民主共和国である。
原注(स्पष्ताकरण):本条でいう「世俗的」は,古来の宗教と文化の保護ならびに宗教的および文化的自由の保護を意味する。
第26条 宗教的自由への権利
(3)何人も,・・・・他の人をある宗教から他の宗教に改宗させること,または他の人々の宗教を妨害することをしてはならない。そのような行為は法に則り処罰される。

このように,ネパール憲法は,一貫して改宗勧誘の禁止を規定してきた。それは,厳密に解釈すれば,当然,布教の禁止となる。したがって,この改宗勧誘禁止規定は,体制派ヒンドゥー教以外の諸宗教,とくにキリスト教会やマオイスト左派により,繰り返し厳しく批判されてきた。

しかし,いかに批判されようが,改宗勧誘禁止規定は憲法の中に残された。ネパール体制派が,改宗,とくにキリスト教への改宗をいかに強く警戒してきたかが,この憲法規定を見るとよくわかる。

2.刑法改正案の改宗勧誘処罰規定
オリ政権が進めている刑法改正は,この憲法の改宗勧誘禁止規定を根拠にしている。改正案の骨子は次の通り。

【刑法第156条】
(1)何人も,他の人々を改宗させてはならない。他の人々の改宗は,組織的働きかけによってであれ,唆しによってであれ,行われてはならない。
(2)何人も,いかなる形の利益供与に依っても,もしくは依らなくても,または少数者集団もしくは少数者共同体が古来維持してきた宗教や信仰を妨害することによって,他の人をある宗教から他の宗教に改宗させてはならないし,また同様の意図をもって自分たちの宗教や信仰を他の人々に宣べ伝えてはならない。
(3)上記(1)および(2)の罪を犯した者は,5年の禁錮および5万ルピー以下の罰金に処する。
(4) 上記(1)および(2)の罪を犯した外国人は,本条の定める禁錮刑の期間満了後,7日以内に本国に送還されなければならない。
(RAMESH KHATRY, ”Not really secular,” Kathmandu Post 10 Apr; Prakash Khadka, “Anti-conversion law will send Nepal backwards,” UCAN India, 14 Mar)

この刑法改正案が成立し,厳密に適用されることになれば,あらゆる布教活動は事実上できないことになる。このような刑法改正案が,本当に成立するのであろうか?

■ネパール王国国章

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/04/16 @ 14:56

カテゴリー: 宗教, 憲法

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