ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

カナク・デクシト氏逮捕報道について:CIAA報道官

カナク・マニ・デクシト氏のCIAA(職権乱用調査委員会)による逮捕が大問題になっている。カナク氏は著名なジャーナリスト,人権活動家であり,しかも自ら「ヒマール」や「ネパリタイムズ」など有力紙誌を編集発行している。その彼が逮捕されたので,ヒマール,ネパリタイムズはいうまでもなく,他のメディアも一斉にこの件を大々的に報道し始めた。

1.カナク・デクシト氏の主張
カナク氏側の言い分は,ある意味,単純明快。この逮捕は,民主化運動を弾圧したという理由でCIAA委員長への選任に強く反対されたカルキ委員長の,カナク氏に対する不当な仕返し,ないし私的復讐だ,というものだ。

たしかに,そういうこともあろうが,あまりにも単純明快すぎて,これだけではにわかには信じがたい。カナク氏逮捕には,他にもっと大きな背景ないし複雑な理由がありそうだが,それが何かは今のところよくわからない。

いずれにせよ,ネパールやインドのメディアが,カナク氏やヒマール・メディア側の情報を繰り返し大量に流していることは,事実である。

2.CIAAの主張
これに対し,CIAA側は4月25日,クリシュナ・ハリ・プシュカル報道官名で「カナク・マニ・デクシト氏の逮捕に関するメディア報道について」という声明を発表した。5ページに及ぶ長い声明だが,論理は極めて明快,カナク氏逮捕の理由と経過が,その限りでは,よく理解できる。

CIAAとカナク氏,いずれの言い分が正当なのか? カナク氏側の情報は,すでに膨大な量に及び,いまそのすべてにあたり要約するのは困難なので,以下では,とりあえずCIAA報道官声明の方から紹介することにする。

▼「カナク・マニ・デクシト氏の逮捕に関するメディア報道について」
CIAAは「ネパール憲法」,「CIAA法1991年」および「腐敗防止法1992年」により,公務員および公職関係者の収入を調査する権限を有する。

カナク・デクシト氏は,国家が95%以上を出資するサジャ・ヤタヤタ交通会長であり,それゆえ公職保有者。CIAAにはカナク氏の収入調査管轄権がある。

CIAAは,カナク氏が合法的収入に見合わない財を成しているとの告発をいくつか受けたので,氏の資産状況を調査することにし,氏に資産報告書の用紙を渡し,提出を求めた。

カナク・デクシト氏は,この資産報告書用紙を受け取り,記入し,CIAAに提出した。これは,この時点までは,彼が自分を公職保有者と認め,CIAA調査に協力したことを意味する。

ところが,カナク氏から提出された資産報告書と実際の保有資産とを照合すると,大きな食い違いがあることが判明した。そこで,CIAAは,所定の手続きに則りカナク氏に出頭し説明するように求めたが,氏はこの要請を無視し,出頭しなかった。その後,CIAAは4か月以上にわたって出頭要請を何回も行ってきたが,氏は無視し続けた。

そこで,CIAAは,最終的な7日間期限付きの出頭要請書を送り,これに対し,カナク氏は最終日の7日目に書状をもって回答してきた。その回答は,この件はCIAAの管轄権の範囲外であるので,調査には協力できない,とするものであった。

その結果,他に方法がなくなったので,やむなくCIAAは警察に指示してカナク氏を逮捕し,勾留して調査することになった。氏は逮捕後,健康診断を受け,1夜勾留され,翌日,健康悪化のため,病院に移送された。

カナク氏は,サジャ・ヤタヤタ以外にも,営利事業,出版,NGO,人権活動,メディアなど多くの活動に関与している。氏は,地位のある知識人であり,一般人以上に法を守る義務がある。もし氏が無実だというのなら,CIAAの調査に協力し,起訴されれば,法廷で無実を証明すべきだ。ところが,氏はCIAA調査を拒否し,そのためCIAAは氏を逮捕せざるを得なくなったのである。

このように,CIAAは法の手続きに則り合法的に調査しているにもかかわらず,ある人々はCIAAが復讐のためカナク氏を調査し逮捕した,と非難している。これは全く根拠のない非難だ。「ジャーナリストや人権活動家は憲法や法の上にあるのだろうか?」第四の権力としてのメディアは,治外法権なのか?

しかも,CIAAは,カナク氏をジャーナリストとしてではなく,公職保有者として,調査しているのだ。最高裁も引き続き氏を勾留し,調査することを認める決定を下した[注:特別法廷は10日間の勾留を認めた]。

巨大メディアは,人民と国家への責任を忘れ,CIAAの調査を愚弄している。また,エリートの中には,自由の戦士をかたり,国家資産をむさぼってきた者もいる。彼らは,納税者としての義務を果たしているのか? それは,歴史が裁くことになろう。

CIAAは,法の支配と市民的規範の確立のために努力している責任あるジャーナリズムを深く尊敬し,またそれらのジャーナリズムからは大きな期待をかけられていると確信してもいる。

[参照]Hon’ble Chief Commissioner Lok Man Singh Karki (CIAA HP)
160426d
Mr. Lok Maan Singh Karki is the Chief Commissioner of the Commission for the Investigation of Abuse of Authority (CIAA), Nepal. According to the provision of the Interim Constitution of Nepal, 2007, he has been appointed by the President in the recommendation of the Constitutional Council. Mr. Karki took office on May 8, 2013 for the tenure of six years. ………
He was the Chief Secretary of Government of Nepal from April 2006 to April 2009. Before it, he served as the Secretary of Government of Nepal from April 2001 to April 2006. As the Secretary he worked at the Ministry of Information and Communications, Office of the Prime Minister and Council of Ministers, Ministry of Health, Ministry of Population and Environment and Ministry of Water Resources as well.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/04/26 @ 17:48