ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ツイートでカナダ人逮捕,国外退去処分

ネパール入管と警察が5月2日,ネパール政府に批判的なネット発言をしたカナダ人を逮捕・勾留し,翌3日,国外退去処分にした。

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1.政府批判ネット発言
逮捕されたのは,カナダ人のロバート・ペンナー氏(37歳)。2012年から,労働ビザを取得してラリトプルのスプラウト・テクノロジー社(香港のクラウド・ファクトリー社子会社)でIT技術者として働いていた。

ペンナー氏は,ツイッターやフェイスブックに,ネパールの政治や憲法に関する意見を,しばしば投稿していた。各紙報道によれば,最近は,マデシ闘争に関心を持ち,新憲法はマデシ,とくにマデシ女性に差別的だとして新憲法を批判し,また政府の対マデシ政策を人権抑圧と非難してきた。さらに,カナク・デクシト氏逮捕についても,さかんに発言していた。

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2.ネット言論監視とペンナー氏逮捕
バス・ギミレ入管職員によれば,「このペンナーの行動を,警察は長期間にわたり監視していた」(*3)。また,ネパール政府にも,ペンナーは政治活動をしている,入管法違反だ,といった告発が,この4月から多数寄せられていた(*2)。

それらの情報に基づき,入管は捜査を進め,5月2日警察に指示し,ペンナー氏を逮捕させた。K.ネウパネ入管局長はこう説明している――

「彼のこの数週間のツイートを分析した結果,入管法違反と判断した。彼のツイートは,人々をマデシ闘争へと扇動するものであり違憲である」(*2)。
「彼は,IT企業で働くことを理由にビザを取得したにもかかわらず,調査の結果,国民統一を害する恐れのある挑発的発言をしていることが判明した。・・・・外国人には,そのような行為は認められない」(*4)。

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3.弁護側の反論
これに対し,ペンナーの弁護士ディペンドラ・ジャーは,「ネパールの政治を話題にしたという理由で,外国人が恣意的に逮捕勾留され,国外退去処分にされるのは,これが初めてだ」と批判している(*2)。

また,ブロガーのムケシュ・ジャーはこう述べている。「ネパール人民の現状を世界に知らせようとする人々への脅しだ。ペンナーは,ネパールを破壊するために,ここにいるわけではない。彼の批判は,きわめて建設的だ。」カナク・デクシトのような著名人も,ペンナーのような外国人も,政府は例外扱いはしないという警告。「次はだれか? それが問題だ」(*3)。

4.2015年憲法における言論制限
ここで見落としてはならないのは,現行2015年憲法が,以前の憲法以上に,言論表現の自由を厳しく規制しているという事実。

「第17条(2)(a)意見表現の自由」の但し書きにより禁止されうる言論。
 ・ネパールの国民性,主権,および独立を害するような言論
 ・様々なカースト,民族,宗教および社会集団の調和的関係を害するような言論
 ・人種差別をあおる言論
 ・公序良俗に反する言論

但し書きには,ほかにも禁止される行為として,スパイ行為,ネパールの安全を損なうような外国機関への協力,州間の調和的関係を害する行為,共同体間の憎悪をあおる行為などが挙げられており,それらに関する言論も規制されるとみるべきだろう。

この憲法規定を前提とするなら,ネウパネ入管局長の上述の発言は,当然といえる。ネット言論も,外国人によるものを含め,規制対象になりうると考えざるをえないだろう。

5.在ネ外国人への警告
今回のロバート・ペンナー氏の逮捕・国外退去処分は,ムケシュ・ジャー氏の言うように,在ネ外国人に対する「警告」となるだろう。ネパールのことについてツイッターやフェイスブックで発言しただけで,逮捕勾留され,国外退去処分となるかもしれない。いや,それより重い処罰もありうる,ということ。

これまで,とくに人民戦争勃発以降,外国人がネパール内政にしばしば無遠慮に介入し,言いたい放題,まるで宗主国のようにふるまってきた。内政干渉そのもの。今回の事件は,そのような外国人に対するネパール・ナショナリストの反発の一つであろう。

このところネパールにおいてもナショナリズム感情が高まってきており,こうした事件も予測されないことはなかったが,いずれにせよ,在ネ外国人にとってはたいへん気になる動きであることは確かである。

[参照資料]
*1 BHADRA SHARMA, “Nepal Expels Canadian for Sowing ‘Discord’ on Twitter,” New York Times, MAY 3, 2016
*2 Anup Kaphle, “Nepal Expels Canadian for Sowing ‘Discord’ on Twitter,” Buzz Feed News, May 3, 2016
*3 Stephen Groves, “Canadian Robert Penner told to leave Nepal for tweets causing ‘social discord’,” CBC News, May 03
*4 “Pro-Madhesi Canadian citizen arrested in Nepal for provocative tweets,” Hindustan Times, May 02, 2016
*5 “Canadian man asked to leave Nepal after criticising government on Twitter,” BBC, 2016-05-04
*6 The Committee to Protect Journalists, “CPJ concerned by climate for free expression in Nepal,” The Committee to Protect Journalists, May 3, 2016
*7 TU THANH HA, “Canadian arrested in Nepal over tweets criticizing human rights,” The Globe and Mail, May 02, 2016
*8 Anil Giri, “Canadian arrested in Nepal over Twitter posts,” Business Standard, May 2, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/05/04 @ 20:14

カテゴリー: 情報 IT, 憲法, 民主主義, 人権

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