ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

大統領訪印中止と駐印大使召還

オリ政府が5月6日、バンダリ大統領の訪印中止とDK・ウパダヤ駐印大使の召還を決めた。再び印ネ関係が緊迫化しそうな雲行きだ。

ウパダヤ駐印大使は、コングレス幹部出身であり、スシル・コイララ内閣が2015年4月指名した。各紙報道によれば、ウ大使召還の理由は、政府は否定しているが、次のようなものである。
・オリ内閣打倒に加担
・R・ライ駐ネ大使とマデシュ諸郡訪問を密議
・オリ首相訪印時に非協力的
・大統領訪印中止に反対

ヒンドゥースタン・タイムズ(※1-3)は、より明確に、次のように説明している。最近、コングレスがマオイスト(UCPN-M)に働きかけ、オリ内閣にかえ、プラチャンダを首相とするNC-UCPN連立内閣を樹立することを図ったが、マオイストは5月5日、結局、UMLとの連立継続を選択、倒閣は失敗した。

ヒンドゥースタン・タイムズによれば、この倒閣の動きの背後にインドがいたといわれている。むろん印政府筋はこれを否定し、「国内の混乱の原因を外部に転嫁し非難する」試みだ、と反論している。

また、連立継続のためUMLがマオイストと5月5日に取り交わした合意文書には、人民戦争中の事件につきマオイストを訴追しないという項目があるという。これが事実だとするなら、唐突な倒閣の動きをマオイストがうまく利用し、人民戦争中の行為に対する免責の約束を取り付けたことになる。マオイストにとっては、大きな成果だ。

ヒンドゥースタン・タイムズによれば、インド政府筋は、今回のオリ政権の動きを、タライの反憲法闘争を無視して「ウルトラ・ナショナリズム」を扇動するものとみており、そうしたネパールの国内紛争に引き込まれることを警戒しているという。

今回の唐突な倒閣劇の黒幕がインド政府か否かは、判然としない。が、大統領訪印が中止され、駐印大使が召還されたことは、まぎれもない事実である。ネパール・ナショナリズムが刺激され、対印感情が硬化することは避けられないだろう。

[参照]
※1 “Attempt to topple govt reason for Nepal recalling its envoy to India”, Hindustan Times, May 7.
※2 “Nepal’s sudden change in plans suggests bad blood with India,” Ibid, May 7.
※3 “Nepal cancels president’s visit to India, recalls ambassador,” Ibid, May 6.

©谷川昌幸

Written by Tanigawa

2016/05/08 @ 11:46