ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

元国王,元内相らの戦時人権侵害,告発

人民戦争期の被害者による加害者告発が続いている。いま注目を集めているのが,ドランバ虐殺(ハチャカンダ)事件。

1.ドランバ虐殺
2003年8月17日,ラメチャプ郡ドランバ村の教師宅でマオイスト30人余が地域委員会を開いていた。このころ,休戦が成立し,ダン郡では和平交渉中であった。そのためマオイスト側は警戒を緩めていた(非武装だったともいわれている)。

そこを,ラム・マニ・ポカレル隊長率いる治安部隊(王国軍と警察)が急襲,会議中の民家を包囲し,その場で2人(1人?)を射殺,女性4人を含む20人(19人?)を捕らえた。捕らえられた20人は,ダンダガテリに連行され,そこで全員が後ろ手で縛られたまま,至近距離から射殺された。いわゆる「ドランバ・ハチャカンダ」だ。

160616b■ドランバ村

2.TRCへの告発
この事件の被害者家族は,犠牲者一人当たり12万5千ルピーの補償金を受け取っているが,それ以上の保障はなく,また虐殺事件責任者の処罰も行われていない。そこで,これを不当として,4家族が「真実和解委員会(TRC)」に責任者を告発し,また他の家族も地方平和委員会を通して告発する準備を進めている。さらに「拉致不明者調査委員会(CIEDP)」への告発も予定されている。

告発されたか告発されることになっているのは,ドランバ・ハチャカンダ事件に責任があるとされる次の人々(肩書は事件当時のもの)。
 ・ギャネンドラ国王
 ・カマル・タパ内相
 ・AR・シャルマ内務省事務局長
 ・PJ・タパ軍総監
 ・SB・タパ警察総監
 ・ラム・マニ・ポカレル王国軍少佐(Major)
 ・チュダマニ・バシュヤル ラメチャプ郡事務所長
 ・RP・シュレスタ副警視
 ・その他,事件関係者

160616c■TRC

3.問題解決の難しさ 
こうした告発は,告発される側にとっては脅威であり,そのため告発関係者を脅したり,告発期間を短縮し幕引きを図ろうと画策したりしている。人民戦争期の加害者と被害者は,政府とマオイストの双方におり,しかも特に加害者には有力者が少なくないため,問題解決は複雑かつ難しいものになっている。

[参照]
*1 DEWAN RAI, “Transitional justice: Plaint against former king, DPM Thapa,” Kathmandu Post, Jun 10, 2016
*2 “Doramba victims move TRC against ex-king, security officials,” Republica, 09 Jun 2016
*3 “Conflict victims call for protection,” Kathmandu Post, Jun 9, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/06/16 @ 17:56