ネパール評論

ネパール研究会

平静に見えるオーストリア

6月末~7月初旬,ウィーンやザルツブルクなどを見てきたが,少なくとも外から見る限りオーストリアは平静であった。

オーストリアでは,5月に大統領選挙があり,リベラル系無所属(「緑の党」元党首)のアレクサンダー・デア・ベレン候補が,僅差で,極右「自由党」のノベルト・ホーファー候補に勝利した。不在者投票分でのギリギリ逆転勝利,文字通りの辛勝であった。

ところが,この開票結果に自由党が異議を唱え,憲法裁判所に選挙無効を訴えた。憲法裁判所は,この訴えを受理し,審理の結果,7月1日,不在者投票開票方法などが違法だったとして選挙無効の判決を下した。再選挙は,9~10月の予定。

このオーストリア大統領選挙は,全世界,特に欧州で,成り行きが注目されてきた。自由党は極右ナショナリスト政党。難民・移民受け入れに反対し,EU離脱を訴え,とくに男性,ブルーカラー労働者,農村部に支持を拡大してきた。その自由党が勝利すれば大変なことになる。注目され,心配されるのは当然だ。

こうした状況だから,オーストリアはいま騒然としているだろうと思っていたら,実際には,街も村も表面的には何事もないかのように平静。人々はコンサートに出かけ,高原や湖畔では早やバカンスを楽しんでいた。

これは,まったくもって不思議,不可解。バカンス明けの再選挙はいったいどうなるのだろう?

▼議会議場(上院/下院)
160720l 160722a

▼落書き(ハイドンハウス付近)
160722c

[参照]
*「オーストリア大統領選、やり直し 極右の伸び焦点」日経,2016/7/1
*稲木せつ子「オーストリアの大統領選は「史上初」だらけだ 憲法裁判所が選挙のやり直しを命令」東洋経済オンライン,2016年07月06日
*「オーストリア大統領選で違法行為、憲法裁がやり直し命令」朝日新聞,2016年7月1日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/07/22 @ 04:54