ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

カルキCIAA委員長,瀬戸際(4)

3.議会の弾劾裁判
(1)弾劾動議提出
議会では,カルキCIAA委員長に対する弾劾動議が受理され,弾劾裁判が始まった。弾劾(महाभियोग)につき,憲法はこう定めている(要旨)。

第101条(2) 憲法設置機関[CIAAなど]の長または構成員に対する弾劾動議は,代議院の全議員の四分の一以上の多数をもって提出できる。提出された弾劾動議は両院[代議院(下院)と国務院(上院)]の全議員の三分の二の多数をもって可決され,弾劾決議された者は解任される。
(3)&(4) 11委員から構成される弾劾委員会を代議院に設置する。
(6)弾劾手続きの開始をもって,弾劾裁判を受ける者の職務は停止される。 

この憲法規定に従い,代議院議員157人(UML107+マオイスト50)が2016年10月19日,カルキ委員長弾劾動議を議会に提出し,受理された。これにより,カルキ委員長による職務執行はただちに停止され,翌20日,最年長のディープ・バスニャット委員が委員長代行に選任された。

議会には,11委員から構成される弾劾委員会が設置された。委員の過半数はUMLとマオイスト。議会における弾劾動議審議は,45日間が予定されている。

(2)弾劾動議の先行き
カルキ委員長弾劾動議について,提案者のUMLとマオイストは当然賛成の立場だが,最大政党のコングレスはまだ賛否いずれとも決めかねている。

そもそもカルキのCIAA委員長任命は,制憲議会が解散し,最高裁のレグミ長官が暫定内閣首相であった2013年5月に強行された。任期は6年。

当時,このカルキ任命には多くの反対があったが,主要政党たるコングレス,UML,マオイスト,マデシ戦線はすべて賛成した,あるいは少なくとも表立った反対はしなかった。しかも,議会は解散していたから,この人事については議会における審議も承認も,当然,なかったことになる。

こうした場合,いつものことながらインドの圧力(陰謀)がささやかれる。インド陰謀説によれば,インドがネパールの内政混乱に付けこみ,レグミ最高裁長官の暫定首相就任とカルキのCIAA委員長任命をセットでネパールに押し付け,そして今また,カルキ委員長が最高裁再審と議会弾劾で窮地に陥ると,在ネ大使館やRAWあるいは印ネパール学の権威M教授などを動員して,インド国益のためにカルキ委員長を守ろうとしているとされる。真偽のほどは,むろん分からないが,これまでのカルキ委員長によるあまりにも強引な権限行使を見ると,あるいはそのような裏もあるのかな,という疑念をぬぐい切れない。

いずれにせよ,議会におけるカルキ委員長弾劾が,かなり難しいことに変わりはない。弾劾動議可決には議会の三分の二,397議員の賛成票が必要だ。マデシ系,RPP,RPP-Nは反対だし,NCは割れている。結局,NCが弾劾の成否を決めることになるだろう。

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*1 “Karki’s impeachment process,” Nepali Times, October 20th, 2016
*2 “Dr KC welcomes impeachment motion against CIAA chief Karki,” Kathmandu Post, Oct 20, 2016
*3 TIKA R PRADHAN, “Impeachment axe falls on Lokman Singh Karki, CIAA chief faces automatic suspension after 157 UML, Maoist MPs register proposal,” Kathmandu Post, Oct 20, 2016
*4 Akhilesh Tripathi. “Forces that led to Lokman’s downfall,” Republica, October 20, 2016
*5 “Deuba hints at backing impeachment,” Republica, October 21, 2016
*6 “REVEALED: Nepal’s beleaguered anti-corruption chief’s three-pronged strategy to stay in power,” OnlineKhabar, October 25th, 2016
*7 “Impeach Lokman motion: With his Guru SD Muni in tow, Amresh Singh warns Nepal PM Prachanda not to seek enmity with India,” OnlineKhabar, October 27th, 2016
*8 “Karki can’t dodge punishment if he is guilty: Mahat,” Kathmandu Post, Oct 28, 2016
*9 Yubaraj Ghimire, “Simly put: Why Nepal’s anti-graft chief Lokman Singh Karki faces the axe,” Indian Express, October 28, 2016
*10 “Impeachment motion against chief of constitutional body a bad precedent: PM Dahal; Says the outcome will be positive,” Kathmandu Post, Oct 28, 2016
*11 “Karki preparing to challenge impeachment motion,” Republica, November 7, 2016
*12 Kul Chandra Gautam, “Impeachment and impunity,” Republica, November 9, 2016
*13 “Karki impeachment debate to resume Friday,” The Himalayan Times, November 09, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/11/12 @ 19:40

カテゴリー: インド, 行政, 議会, 憲法

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