ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

トランプ「入国禁止令」とネパールのブータン難民

トランプ大統領による難民等入国禁止令(1月27日)は,連邦地裁が執行停止命令を出し(ニューヨーク地裁1月28日,ワシントン地裁2月3日),連邦控訴裁でもその執行停止命令は認められた(2月9日)が,世界各地の難民たちの不安は募るばかりだ。ネパールでも,国内難民キャンプ収容のネパール系ブータン難民たちが,渡米手続きを停止されている。

AFP(Himalayan, 7 Feb)記事によれば,ブータンでは1990年代に入ると,ネパール系住民がネパール語使用を禁止され,ブータン民族衣装着用を強制されるなど,迫害を受け始めた。そのため,彼らはネパールへのがれ,各地の難民キャンプに収容され,定住受入国を探すことになった。

これまで,彼らブータン難民を受け入れてきたのは,米国,ヨーロッパ諸国,オーストラリア,カナダなど。特に米国は最大の受け入れ国であり,2007年以降,9万人以上が渡米した。それでも,ネパールの難民キャンプには,現在もなお,1万人以上のブータン難民が残っているという。

そこに,トランプ大統領の難民受け入れ停止命令に基づく通達が届けられた。「2月3日以降,次の指示があるまで,渡米手続きは中止する。」これにより,あるマガール女性難民は,20年間待ち続け,やっと数日後出発することになっていたのに,突然,中止を告げられた。また,別のタマン女性難民は,在米家族のもとに向け出発する,その前日に,渡米保留の通知を受けた。彼女ら難民の落胆と不安は,想像を絶するものに違いない。

難民問題は難しい。2月11日の朝日新聞によれば,昨年の日本への難民申請1万901人に対し,認定はわずか28人(在留許可97人)。そのうちネパール人は,申請1451人,認定人数は記事では不明。難民受け入れは,日本人自身の問題でもある。

170211■根本かおる著,河出書房新社,2012

*1 “US-bound Bhutanese refugees left in limbo in Nepal,” AFP=Himalayan Times, February 07, 2017
*2 「UNHCRによるブータン難民の第三国定住が10万人超えを記録」国連UNHCR協会
*3 ダルマ・アディカリ「帰国求めるネパール系難民 ブータンの「民族浄化」 桃源郷のもうひとつの顔」『日刊ベリタ』2006年07月09日
*4 「2015年ネパール ブータン難民キャンプ報告」毎日新聞大阪社会事業団

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/02/11 @ 12:22

カテゴリー: 民族, 人権

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