ルピー札,中国製に
ネパール国立中央銀行(NRB)が,震災復興で大量に必要となっている紙幣の印刷製造を,中国企業に委託し始めた。
NRBは,これまで紙幣製造をインドネシア,フランス,オーストラリアの会社に委託してきた。ところが,このところ製造技術の点でもコストの点でも,中国企業が優勢となってきた。B・カデルNRB執行役員によれば,「品質は,以前他国で印刷したものと同様高品質でありながら,コストは以前の半分以下だ」(新華社,2017年2月14日)。そこで,NRBはルピー紙幣の印刷製造を中国企業に切り替え始めたのである。
中国企業は,これまでネパールの硬貨は受託製造したことがあるが,紙幣については,2016年6月に中国国営CBPM社(中国印钞造币总公司)が100ルピー札を2億1千万枚製造したのが初めてだという。
その後,CBPM社は,競争入札において欧米企業やインドネシア企業に競り勝ち,5ルピー札(2億枚)や1000ルピー札(2億6千万枚)の製造をも受注した。これで,5ルピー札,100ルピー札,1000ルピー札が中国製に切り替わっていく。
このネパール紙幣受託製造について,中国メディアは,誇らしげに,その意義を力説している。
「ネパール中央銀行幹部が最近,中国企業印刷の紙幣はデザイン,色彩,偽造防止の点で改善されている,と称賛した。・・・・CBPM社印刷の色鮮やかな紙幣は,高品質でありながら,低コストである。」(人民日報,2016年6月21日)
「リ・ツェンCBPM事業所長は,こう語った。『わが社は中国製の印刷機,製版プレート,インク,紙,スレッドを使用し,ネパールのルピー紙幣を印刷した。これは,わが社の技術ばかりか総合的な能力をも示すものである』。」(中国ラジオ,2017年1月18日)
中国が,紙幣製造のための高度な製紙技術や印刷技術を持つに至ったことは,よくわかった。だが,それはそれとして,自国の貨幣を他国に製造委託するなどといったことは,日本ではおよそ想像もできないことだ。外国製の自国貨幣を日々使うのは,どのような感じがするのだろう。機会があれば,尋ねてみたい。
*1 “Nepal saves millions by printing banknotes in China,” Xinhua English, 2017-02-14
*2 “1st shipment of Nepal’s 1,000-rupee banknotes delivered from China,” China Radio International’s English Service, 2017-01-18
*3 “Nepalese official hails China-printed banknotes,” People’s Daily, June 21, 2016
*4 “Nepal’s currency notes printed by Chinese company for 1st time,” Xinhua, 2016-06-17
*4 “10 firms get NRB nod to print banknotes,” Kathmandu Post, Apr 12, 2015
谷川昌幸(C)
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