ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

キリスト教とネパール政治(4)

3.キリスト教会と2017年連邦・州ダブル選挙
(1)キリスト教の急拡大[前掲]
(2)布教の法的規制
キリスト教のこの急拡大に対し,ヒンドゥー教多数派や彼らをバックとする政治諸勢力は危機感を募らせ,法令による布教規制ないし改宗禁止に向かわせた。(報道,特にキリスト教系メディアは「改宗禁止」を多用するが,内容的には「布教規制」の方が妥当であろう。)憲法の布教規制規定について,ロルフ・ジージャーズ(Open Doors’ World Watch Research)は,こう述べている。

「ネパールは2008年に世俗国家になり,クリスチャンの自由は大きく拡大した。キリスト教は繁栄し急成長,2008~2017年で3倍になった。これがヒンドゥー急進派を怒らせ,彼らをして宗教の自由の制限への復帰を繰り返し要求させることになった。その最大の成果の一つが,2015年9月の憲法への[改宗を犯罪とする]第26条の組み込みであった。」(*4)

この憲法の改宗禁止(布教規制)規定と米英による改正要求については,すでに紹介したので参照されたい。
 ・「宗教の自由」とキリスト教:ネパール憲法の改宗勧誘禁止規定について 2017-09-20
 ・改宗の自由の憲法保障,米大使館が働きかけ 2016-08-12
 ・改憲勧奨:英国大使のクリスマスプレゼント 2014-12-16
 ・宗教問題への「不介入」独大使館 2014-12-20

布教(改宗)に関する刑法規定の方は,2007年暫定憲法の下で準備され,2014年10月15日に,それを含む改正刑法案が議会に提出されていた。

その改正刑法案を,デウバ内閣が地方選挙後の8月9日立法議会(制憲議会)において可決,これにバンダリ大統領が10月16日署名し,こうして布教(改宗)を重罰をもって処罰する改正刑法が成立した。

この間,憲法が「2007年暫定憲法」から現行「2015年憲法」に変わったので刑法改正案も修正されているかもしれないが,いまのところ詳細は不明。ただし,2007年暫定憲法成立後,世論が揺り戻し,布教(改宗)に関する規定も2015年憲法の方が厳しくなっているので,改正刑法案が修正されているとすれば,おそらく原案より規制強化されているものと思われる。改正刑法の布教(改宗)規制規定については,以下参照。
 ・改宗投獄5年のおそれ,改正刑法 2017-09-12
 ・改宗勧誘,宗教感情棄損を禁止する改正刑法成立 2017-10-31

▼キリスト教迫害指数2018 (Open Doors)
 
 ■迫害調査100か国中,北朝鮮が最悪,ネパールは25番目。

*4 “Nepal PM ‘commits to adress’ Christian concerns ahead of election,” World Watch Monitor Nepal, 8 Nov 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/04/04 @ 15:23

カテゴリー: 宗教, 憲法, 政治, 人権

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